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Prologue
短いです
「先輩!」
今年の四月に入学した彼女を窓から見ていた。
耳に響いた彼女の声はとても魅力的なもので、心を奪われてしまいそうになる。女の子、ってああいう子のことを言うんだろうな、と漠然と思った。
桜が舞う。窓を開けているからか、風が心地いい。私の好きな季節だ。
彼女は駆け寄り、話しかけた。
話しかけられた男の方を私はよく知っている。
楽しそうな笑い声がやたらと耳に響いた。
自然なボディタッチも、柔らかな笑顔も、二階と校庭という距離を感じさせないものだった。
沙織と並んで窓から見下ろした光景は仲よく話をする男女の光景だった。
思わず、見とれてしまうようなもので。それはドラマのワンシーンと言われても納得してしまいそうになった。
「いいの? さおり」
横にいる沙織に言う。反応がないのは想定済みだ。
沙織は何かを言うわけでもなく、ただ、窓の外を切なそうに眺めていた。