第1話 植物が繋ぐ色彩のリレー
日本の自然は四季が織りなす色彩に溢れています。
春、生命が目を覚ます時期
赤や白の梅の花が迫る春の訪れを知らせます。
鳥のさえずりが徐々に勢いを増しその楽しさを歌い出すと
やがて我こそがメインキャストとばかりに桜の花が咲き乱れます。
こうして暖かい西と低地から
桜前線があるいは東へ、あるいは下から上へ進み始めるのです。
そうして春の主役が一瞬の輝きを残して姿を消すと
代わりに薄緑色の新緑が芽吹きます。
やはらかな日差しを浴びて輝き
雨に濡れて曇天雲の地表にほのかに灯るのです。
徐々に雨の日が多くなる頃
街路樹の根元近くや庭先やそこかしこの物影に
青や紫の愛らしい太陽の花が咲きます。
太陽を恋しく思う私達に紫陽花が控えめに微笑むのです。
この花の風変りなのは花に見えるのが《《がく》》で
そのがくに目立たず花が咲く事です。
そして晴れた日より雨の日の方が美しく見える事です。
夏、照りつける陽の光を遮るためか
葉は色素を増し濃緑になります。
色彩は一時落ち着きを見せ、
西から東、低地から高地への色彩のリレーが折り返すのです。
秋、東の方と山の上から赤と黄色の色が点る。
きっと寒さが厳しくなるのを前に暖色で心を奮い立たせるためでしょう。
やがて色彩のリレーは紅葉前線となって、
東から西へ、そして高地から低地へ移動を始めます。
西から始まって東に至り、折り返して東から西に戻り
下から始まって上に至り、折り返して上から下に戻る。
こうして季節は廻り飽くことなく続くのです。
日本の四季が織りなす色彩の美しさよ。