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ブフーの刃 ― 第三話:警視正の脳は塩味で

霞が関、警察庁庁舎11階――


“ブフーの通り魔”笠松潤が、電撃を無効化して蘇った。


電撃拘束を無効化するためにあらかじめ食していたのは、ニホンウナギ。

麻痺を弾く性質を模倣する“水生生物スキル”で、彼は不可能を可能にした。


「脳みそって……蒸して塩振るのが一番美味いんだよな、警視正?」


ブフーの包丁が鈍く光り、潤は氷室に突進する。


しかし――


「間合い、甘いな」


ドガッ!!!


氷室の正拳突きが潤の顎を砕く。

ただのエリートではない。彼は若い頃に武道五段を取得しており、現場でも“現役”として鍛え続けていた。


「喰われた仲間の仇だ……その包丁、地面に叩きつけてやる!」


「くっ……なめるな……! 俺はまだ、“警備員の肉”が残ってるんだよ……!」


「警備員の肉を食べた。“硬直反応”をキャンセル」


身体を逸らし、地面でバウンドするように立ち上がる潤。

そして、彼の目の奥に、狂気ではなく“快楽”が浮かぶ。


「怖いか? お前の“職歴”と“スキル”……全部、俺の胃に入るんだよ。ブフーの包丁は、社会構造を消化する刃なんだよ……!!」


■ 反撃:包丁 vs.思考の刃

氷室は冷静だった。


「理解している。君はこの包丁の力で“社会階層”を逆転しようとしている。だが、私はもうひとつ調べていた」


そう言って氷室が投げたのは、小瓶に詰められた白い粉。


「……なんだ? 調味料か?」


「違う。ヒト由来タンパク質を分解する特性を持った人工消化酵素だ」


潤が一瞬で察した。


「……それ、ブフーの包丁の……“消化強化機能”を……無効化する気か!?」


「そうだ。君の“能力取得”は、胃腸での処理と脳神経への伝達が肝。そこを破壊すればただの食人鬼だ」


潤は叫ぶ。


「貴様ァァァァアアア!!!」


■ 落下、そして……

刃と拳が再び激突する。

執務室の窓ガラスが砕け、2人はそのまま外へ――11階から落下。


「氷室ォオオ!! お前の肉は俺が――」


「――私の肉は、毒入りだ」


直前、氷室が口にしていたのは、シアン化合物を染み込ませたガムだった。


「……貴様……っ、わざと……!」


落下の寸前、潤は氷室の肩に噛みつき、“肉片”を飲み込む。

そして2人は、黒い影のように夜の道路へと沈んだ。


■ 地上――肉と血のあとに

落下の衝撃で、潤は骨を何本も折った。

それでも――まだ生きていた。


しかし、喉の奥から吐き出したのは、泡立つ血と肉の塊。


「……毒、かよ……それでも……それでも、“少し”は吸収したぞ……氷室……」


最後の言葉を残し、彼の視界は闇に包まれた。


■ エピローグ

――数日後。


「……氷室警視正、殉職です。ですが、ブフーの通り魔・笠松潤は瀕死。収容先の病院で、昏睡状態にあります」


会議室で、警察幹部が報告を終えると、一人の女が静かに頷いた。


彼女の名は、氷室綾音ひむろ あやね。氷室の姪であり、現職の公安警部補。


「ブフーの包丁は、まだ終わってない。私が潤を“解体”する」

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