ブフーの刃 ― 第十二話:Y○HV解体審問
■ 【場所】神の玉座《LOGOS》
それは“場所”ですらない。
ただ、「意味」「存在」「秩序」「愛」「恐怖」などの概念そのものが凝縮した点。
それがY○HV。
“神”ではなく、世界の定義そのもの。
だがいま、その中心に、二人の人間が立っている。
■ Y○HV、問いかける
Y○HV『人間よ。なぜ、我を切り分ける?』
潤が答える。
潤:「切らなきゃ、お前が“世界の意味を支配してる”ってままだからな。
俺は、それを“俺の胃袋”に塗り替える」
綾音が答える。
綾音:「私は“意味を独占する神”に異議を申し立てに来たのよ。
すべての存在が、平等に“意味を持つ”権利を得るために。
あなたの“構造そのもの”を、司法解剖する」
Y○HV『ならば、“我が身体”を示そう。』
■ 神の身体、展開
そこに現れたのは、言語でできた肉体だった。
肝臓:愛と憎しみの語源
心臓:死と希望の循環式
胃袋:欲望の文法
脳:存在論の演算装置
それぞれに対応する巨大な肉塊が、**神の「意味の器官」**として具現化する。
■ 解体審問、開始
潤は「胃袋」を狙う。
綾音は「脳」を狙う。
■ 潤 vs 欲望の胃袋
Y○HVの胃は、全人類の欲望を格納する器官だった。
食欲、性欲、支配欲、母性、破壊衝動――
あらゆる“動機”がぐちゃぐちゃの臓物のように混ざり合っている。
潤:「ははっ……ここが一番うまそうだな。
全部、**“俺が喰ってきた人間たちの原動力”だ。
つまり、ここを喰えば“人間の自由”を取り戻せる」
ザクリ――!!
潤の包丁が、Y○HVの胃袋を切り裂くと、**“未定義の欲望”**が解き放たれた。
■ 綾音 vs 存在論の脳
綾音はY○HVの「言語でできた脳」に包丁を突き立てる。
そこにはあらゆる命名と定義、存在の区別が記されていた。
善と悪
男と女
人間と神
罪と義
綾音:「あなたが定義したから、人は分断された。
“神の言葉”が、世界を切り分けたなら――
私が“包丁”で、再定義してあげるわ!!」
ロキの幻影で“言語の構造”を崩し、
オーディンの知識で“再構築”し、
ゼウスの雷で“古き神経”を焼き切る。
■ 神の崩壊:意味の死
Y○HVの身体が、意味の断末魔を上げて崩れていく。
『言葉が死ぬ。倫理が揺らぐ。存在が分からなくなる。
……貴様ら、“神なき世界”に耐えられるか?』
潤:「ああ、そもそも俺たちは、
神に見捨てられた場所から這い上がってきたんだよ」
綾音:「私たちは、“神が定義しなかった正義”を生きるの。
それが“人間の意味”なんでしょ?」
■ 包丁、最後の一撃
潤と綾音、二本の包丁が重なり、**Y○HVの核心=“言語の心臓”**を真っ二つに断ち切る。
言語が崩壊し、沈黙が支配する中、
ただ一音――
ぐぅぅぅぅぅ……
胃袋が、満足げに鳴った。
■ エピローグ:意味なき世界の夜明け
崩壊した神の玉座。
残されたのは、誰にも名前のつけられていない“白い地平”。
潤は立っていた。
綾音も立っていた。
潤:「なぁ。これから何が正しいか、わかんねぇけどさ」
綾音:「……でも、“誰かが決めた神”より、自分の正義を選ぶわ」
包丁を地面に突き刺し、二人は歩き出す。
意味なき世界。だが、自由な世界。