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リブート・オブ・アーク  作者: 和幸雄大
第1部:滅びの姫と眠りし少年
2/7

第1話:目覚めし者と滅びの記録

改稿しました。

  雪が舞っていた。

 灰色の空を背景に、白い結晶が風に流され、荒れた山岳地帯の崖を覆い尽くす。


 その断崖を、ひとりの少女が必死に駆けていた。

 銀色の長髪を振り乱し、薄く血に濡れたローブをはためかせながら。


 彼女の名は――セリナ=リュミエール・レグノル。

 かつて白銀の城を戴く王国の王女にして、今や滅亡した王家の最後の継承者だった。


「……エリーナ、カイ……」


 荒い息の合間に、従者たちの名を震える唇で呼ぶ。

 忠誠を誓った者たちは、最後の戦で彼女を逃がすために倒れた。

 戻る道はない。

 誇り高き王都レグノルは、〈七聖〉のひとり――《黒の魔女》ジュリア・マクミルラン によって蹂躙 され、灰に帰したのだから。


 背後から迫る追撃の気配に、心臓がいやでも跳ねる。

 黒き魔女の魔法が放った一撃は、すでに山の地形すら崩壊させていた。


 次の瞬間。


 ――轟音。


 大地が裂け、崖が崩れ落ちる。

 足元の岩盤が砕け、セリナの身体は虚空へと投げ出された。


 雪と土砂が絡み合い、視界が白と黒に混じっていく。

 落下の衝撃で意識が遠のいていくなか、彼女は最後にかすかな祈りを口にした。


 ――まだ、私は……死ねない。



 暗闇の底で、彼女はふたたび目を覚ました。

 息は荒く、体中が痛みに悲鳴を上げている。


 だが――そこは崖下の岩場ではなかった。


 見慣れぬ光景が、ぼんやりと視界に広がっていた。


 錆びた鋼鉄の柱が林立し、苔に覆われた金属の床が続く。

 壁には奇妙な記号が刻まれた扉が並び、まるで異質な迷宮に迷い込んだかのようだった。


「ここは……いったい……」


 掠れた声でそう呟いたとき。


 奥の薄暗い部屋に、透明な装置がひとつ鎮座しているのが目に入った。

 内部には、眠るように横たわる一人の少年。


 雪のように白い肌。

 右腕には、淡く光を宿す機械の義手。


 その姿はあまりにも現実離れしていて、セリナは思わず息を呑む。


 震える指先が、無意識に装置へ伸びた。


 ――ピッ。


『認証信号受理。蘇生プロセスを開始します』


 低い機械音と共に蒸気が噴き出し、赤い警告灯が点滅する。

 透明なカプセルが静かに開かれ、中の少年がゆっくりとまぶたを上げた。


 ――灰色の瞳。


 その冷ややかな光に、セリナは思わず心臓を締め付けられる。

 だがその瞳には、同時に確かに“生”を求める熱が宿っていた。


「……ここは……どこだ……?」


 弱々しい声。

 だが、その響きは確かに生きていた。


 この瞬間――二千年の眠りが破られ、世界は再び動き出す。


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