プロローグ
二千年前――。
栄華を誇った科学文明〈アストレリウム〉は、突如として歴史から姿を消した。
その理由を知る者は、もはや誰ひとりとしていない。
二千年後。
やがて文明の灰燼の上に、息を吹き返した人類が新たな文明〈アルセリア〉を築いた。
この世界を導いたのは、異世界から現れたとされる七人の“転生者”。
彼らは魔王を討ち、人々を救ったと英雄譚に語られ、やがて人々から〈七聖〉と呼ばれる存在へと昇華していった。
数百年の時を経て再び現れた七聖によって制定された《転生者特権法》はこう告げる。
――「転生者の命令は絶対」
突如発布されたその告知は万人に課され、従わぬ者には死が与えられた。
そして今。
最後まで転生者たちの支配を拒み続けたレグノル王国は、ついに陥落した。
白銀の城は黒炎に呑まれ、誇り高き王都は瓦礫と化す。
レグノル最後の王女――セリナ=リュミエール・レグノルは、忠臣を失いながらも、ひとり峡谷の奥へと逃げる。
だが七聖の一人、黒の魔女ジュリア・マクミルランの魔法が大地を砕き、彼女の足場を崩した。
雪と土砂に飲まれ、暗闇の底へと落ちる姫。
……そして。
苔むした鋼鉄の床、奇妙な記号が刻まれた扉。
そのさらに奥、透明なカプセルの中で眠る――一人の少年。
崩れた地下の奥で、彼女と彼は出会う。
二千年前、科学文明末期に病に倒れ、冷凍保存された“旧き時代の人間”。
その目覚めは、封印された科学の残響を呼び覚まし、
魔法が支配する世界に、失われた時代の記憶が息を吹き返す“再起動”の火を灯す。
――これは、文明と文明が交錯し、再び運命が動き出す物語。
初めての投稿で恥ずかしい限りですが、アオトとセリナがどのように
変わっていくかを書いていきたいと考えています。
今後もよろしくお願い申し上げます。




