プロローグ
二千年の眠りと、始まりの火
二千年前――。
栄華を誇った科学文明〈アストレリウム〉は、突如として歴史から姿を消した。
その理由は、もはや誰ひとりとして知らない。
やがて文明の灰燼の上に、新たな文明〈アルセリア〉が築かれた。
この世界を導いたのは、異世界から現れた七人の“転生者”。
彼らは魔王を討ち、人々を救ったと語られ、やがて〈七聖〉と呼ばれる英雄へと昇華していった。
だが、時を経て再び現れた七聖によって制定された《転生者特権法》はこう告げる。
――「転生者の命令は絶対」
突如発布されたその告知は万人に課され、従わぬ者には死が与えられた。
そして今。
最後まで転生者たちの支配を拒み続けたレグノル王国は、ついに陥落した。
白銀の城は黒炎に呑まれ、誇り高き王都は瓦礫と化した。
レグノル最後の王女――セリナ=リュミエール・レグノルは、忠臣を失いながらも、ひとり峡谷の奥へ と逃げる。
だが七聖の魔法が大地を砕き、彼女の足場を崩した。
雪と土砂に飲まれ、暗闇の底へと落ちる姫。
……そして。
崩れた地下の奥で、彼女は出会う。
苔むした鋼鉄の床、奇妙な記号が刻まれた扉。
そのさらに奥、透明なカプセルの中で眠る――一人の少年と。
白い肌、機械の義手。
無機質な装置の中に安らぐその姿は、まるで“時”から取り残されたかのようだった。
セリナが震える指先で装置に触れた瞬間、低い電子音が響く。
『認証信号受理――蘇生プロセスを開始します』
蒸気が吹き出し、赤い警告灯が点滅する。
閉ざされていたカプセルが静かに開き、中から少年がゆっくりとまぶたを上げた。
――灰色の瞳。
その瞳は、彼女を見据えた。
機械のように冷たく、同時に何かを渇望する光を宿して。
《未知の生体反応を確認/適合率:高》
セリナには見えないデータが、少年の視界に走る。
「……ここは……どこだ……?」
掠れた声。だが確かに生きている声だった。
アオト=ミナセ。
二千年前、科学文明末期に病に倒れ、冷凍保存された“旧き時代の遺民”。
その目覚めは、封印された科学の残響を呼び覚まし、魔法が支配する世界に“再起動”の火を灯す。
――これは、文明と文明が交錯し、再び運命が動き出す王国戦記。
初めての投稿で恥ずかしい限りですが、アオトとセリナがどのように
変わっていくかを書いていきたいと考えています。
2025.08.24
全体を練り直し再アップしています。
今後もよろしくお願い申し上げます。