第8話:「時間の乱流」
*1968年:新たな改変の兆候
タイムトンネルの管制室で、トニーとダグは新たな歴史改変の発生を確認していた。
「次の改変は……1914年、サラエボ?」
ジェリーが解析結果を映し出す。
「記録によれば、第一次世界大戦の発端となるフランツ・フェルディナント大公の暗殺が発生していません。その結果、戦争が回避され、世界の政治構造が大きく変わっています。」
「戦争が起こらないのは一見良いことのように思えるが、これは危険な歪みだ。」
ダグが言う。
「もし第一次世界大戦が起こらなければ、世界は完全に別の歴史を辿る。ナチスの台頭すら回避される可能性があるが、その代わりに、別の勢力が台頭することになる……。」
「時間改変派の新たな計画か……。」
トニーは息をついた。
「1914年に向かおう。」
二人はタイムトンネルを起動し、サラエボへと飛んだ。
*1914年:サラエボの異変
トニーとダグは、サラエボの市街地に到着した。
「ここが暗殺が起こるはずの日……だが、街は妙に落ち着いているな。」
ダグが周囲を見渡す。
「歴史通りなら、この通りでガブリロ・プリンツィプが大公の車を待ち伏せしているはずだ。」
しかし、フェルディナント大公の車列はゆっくりと通過し、暗殺は起こらなかった。
「これが歴史改変の結果か……!」
二人は暗殺計画の変更の原因を探るため、裏で何が起こっているのかを調査することにした。
*陰謀の証拠
調査を進めるうちに、彼らはある不審な情報を掴んだ。
「ここ数週間、ある外国の工作員が暗殺グループと接触し、計画を変更するよう説得していたらしい。」
トニーは眉をひそめた。
「時間改変派の介入か?」
やがて、二人はその工作員の名を突き止めた。
「エミール・ランツ……この時代に記録がない人物だ。」
「時間改変派の工作員に間違いないな。」
二人はランツの潜伏場所を突き止め、彼を追跡することにした。
*歴史を元に戻せ
ランツの潜伏先に踏み込んだ二人は、彼を問い詰めた。
「お前は誰だ? なぜ歴史を変えた?」
ランツは余裕の笑みを浮かべた。
「君たちは何も分かっていない。第一次世界大戦を防ぐことで、人類はより進化した道を歩むことができるのだ。」
「それはお前たちが勝手に決めることじゃない!」
ダグが言い放つ。
「歴史には流れがある。もしこの戦争がなければ、世界の均衡が崩れ、別の戦争がより長期化する可能性もある。」
トニーは続ける。
「それに、お前たちの技術はどこから来た? クロノ・マスターが関与しているのか?」
ランツは微笑を崩さずに答えた。
「お前たちは遅すぎた。我々はすでに歴史を書き換えたのだ。」
その瞬間、彼は煙幕を放ち、姿を消した。
「しまった!」
トニーとダグはランツを追ったが、すでに姿をくらませていた。
*フェルディナント大公の運命
ランツを逃したものの、二人にはまだやるべきことがあった。
「まだ間に合う……!」
トニーとダグは、フェルディナント大公の動向を探り、暗殺計画を元通りに修正するため動いた。
「ガブリロ・プリンツィプが再び暗殺の決意を固めるよう誘導するんだ。」
慎重に動きながら、彼らは歴史の流れを本来の状態に戻すための準備を進めた。
そして、運命の瞬間が訪れた。
大公の車が通りを進み、歴史の通り、プリンツィプはついに引き金を引いた——。
銃声が響き渡り、フェルディナント大公が倒れる。
第一次世界大戦の火種は、元通りに灯った。
*1968年:修正された歴史
トニーとダグはタイムトンネルへ帰還した。
「歴史は元に戻った。」
ジェリーが確認する。
「第一次世界大戦は史実通りに勃発し、未来の流れは安定しています。」
トニーは深く息をついた。
「だが、時間改変派はまだ動いている。」
ダグがうなずく。
「奴らは戦争を止めることで、人類の進化を操ろうとしていた……次は何を狙う?」
管制室のスクリーンに、新たな異変が映し出される。
「次の改変地点は……2045年?」
「未来だと……!?」
二人は顔を見合わせ、歴史改変派の次なる企みを阻止するため、新たな戦いへ向かった。
(第9話へ続く)