第7話:「クロノ・マスターの陰謀」
*1968年:新たな歴史改変
タイムトンネルの管制室で、トニーとダグは新たな歴史改変の兆候を確認していた。
「次の改変地点は……1890年代のフランス?」
ジェリーが解析データを映し出す。
「この時代のフランスで産業革命の技術が急速に進み、歴史上ありえない発明がいくつも登場しています。まるで、20世紀初頭の技術が30年以上早く現れたかのようです。」
トニーは画面を見つめながら言った。
「未来の技術が流れ込んでいる……時間改変派の仕業に違いない。」
ダグがうなずく。
「クロノ・マスターが関与している可能性が高いな。行こう。」
二人はタイムトンネルを起動し、19世紀のフランスへと向かった。
1890年代:パリの異変
光に包まれたトニーとダグが目を開けると、そこは華やかなパリ万博の会場だった。
「これは……1890年代のパリか。」
ダグが周囲を見渡す。
「だが、おかしいな……この時代には存在しないはずの電気自動車が走っている。」
「そして、あの蒸気機関の効率が異常に高い。未来技術の影響だ。」
二人は情報を集めるために、最新技術の展示ブースへと向かった。そこで目にしたのは、信じられないほど精巧な機械装置や、ありえないほど早期に開発された無線通信技術だった。
「電球はともかく、真空管がある」
「これを見ろ……」
トニーが指差したのは、**「クロノ・エネルギー機関」**という表示のある機械だった。
「クロノ・マスターの関与が確実になったな。」
二人は技術の出所を探るため、展示会の主催者であるアルベール・デュボワというフランスの発明家に接触することにした。
「アルベール・デュボワ......発明家としては無名だな」
*秘密の工房
デュボワの工房を訪れた二人は、そこに部品を作る謎の装置を見つけ(3Dプリンターの高度版)
彼の発明の裏に時間改変派の影があることを突き止める。
「あなたの技術は、この時代のものではない。誰から手に入れた?」
トニーが問い詰めると、デュボワは動揺しながら答えた。
「……私には後援者がいる。その方が、私に未来の技術を提供してくださったのだ。」
「その後援者とは……クロノ・マスターか?」
ダグの問いに、デュボワは目を伏せた。
「彼は、時間の秩序を正すと言っていた。」
「それは違う。」
トニーは鋭く言った。
「クロノ・マスターは歴史を改変し、新たな支配体制を作ろうとしているだけだ。」
その瞬間、工房の奥から声が響いた。
「その通りだ。だが、私はただの支配者ではない。」
影の中から、クロノ・マスターが姿を現した。
*クロノ・マスターの提案
「やはり、お前か……!」
ダグが身構える。
クロノ・マスターは冷静に微笑みながら言った。
「君たちはまだ理解していない。我々は単に歴史を改変しているのではない。進化させているのだ。」
「進化だと?」
トニーが鋭い目つきで睨む。
「1890年代に未来技術をもたらせば、20世紀の戦争は回避され、科学が一気に進歩する。人類はより早く繁栄し、無駄な争いを避けられる。」
「だが、その代償に歴史は根本から変わる。」
ダグが反論する。
「お前は、選ばれた者だけが未来を決定するべきだと言っているのか?」
クロノ・マスターは静かに頷いた。
「世界は混乱と戦争に満ちている。歴史を修正し、新たな黄金時代を築くことこそが、我々の使命なのだ。」
「そんなことはさせない!」
トニーとダグは武器を構えた。
*未来技術の破壊
クロノ・マスターの命令で、彼の部下たちが襲いかかる。
激しい戦闘の中、二人はデュボワに向かって叫んだ。
「君の発明は、この時代のものではない! すぐに全て破壊するんだ!」
デュボワは一瞬ためらったが、やがて決意したように頷いた。
「わかった……!」
彼はスイッチを押し、研究所のエネルギー装置を暴走させる。
「やめろ!」
クロノ・マスターは叫ぶが、すでに遅かった。装置が爆発し、工房全体が崩壊を始める。
「急げ!」
トニーとダグはデュボワを連れて脱出し、クロノ・マスターは瓦礫の中に消えた。
*1968年:修正された歴史
「未来技術の流入は阻止された。」
ジェリーが報告する。
「歴史は正常な流れに戻り、産業革命は本来のペースで進行しています。」
トニーは肩をなでおろした。
「クロノ・マスターは……?」
「爆発で行方不明になったが、死亡は確認されていない。」
ダグが警戒する。
「やつはまだどこかで生きている。そして、次の改変を仕掛けてくるだろう。」
スクリーンに新たな異変が映し出される。
「次の改変地点は……1914年、サラエボ。」
「第一次世界大戦の発端か……。」
トニーとダグは顔を見合わせ、再び時間の戦いに挑む覚悟を決めた。
(第8話へ続く)
無名の発明家が、一躍パリ博覧会の寵児に。もちろんこの博覧会には、江戸幕府や薩摩藩も出展していますね。