第4話:「冷戦の歪み」
*1968年:新たな改変の兆候
タイムトンネルの管制室で、トニーとダグは最新の歴史解析データを確認していた。ソビエトの月面着陸は阻止されたものの、歴史の流れは依然として歪んでいた。
「新たな異常が発生しています。」
技術主任のジェリーが映し出したデータには、キューバ危機に関する重大な異変が示されていた。
「キューバ危機が起こらず、ソビエトとアメリカの緊張が極端に緩和されています。その結果、1964年にはキューバがソ連の正式な同盟国として編入され、アメリカの影響が中南米で急激に縮小している。」
「歴史が改変された……!」
トニーはすぐさま分析を進めた。
「もしキューバ危機が回避されたとすれば、それが世界の軍事バランスをどう変えるのか……」
ダグが資料をめくりながら答える。
「恐らく、アメリカが軍事的な抑止力を失い、ソ連が優位に立ち続ける。つまり、冷戦のバランスが大きく変わったということだ。」
「1962年に飛び、キューバ危機の行方を調べるしかない。」
二人はすぐさまタイムトンネルを作動させた。
*1962年:キューバ危機の異変
目の前に広がるのは、ハバナの港。青く輝く海に囲まれた都市には、通常よりも多くのソビエト艦船が停泊していた。
「これは……?」
トニーは双眼鏡を覗き、停泊する軍艦の一隻を確認した。
「ミサイル艦がいない?」
「核ミサイルの積み込みが行われていない……。つまり、キューバ危機が発生しなかったのか?」
二人は慎重に街へと潜入し、情報を集めることにした。地元の新聞を入手し、キューバの最新情勢を確認する。
「これを見てくれ。」
ダグが指差した記事には、**「1962年、ソ連とアメリカが歴史的和平交渉を成功」**と書かれていた。
「ケネディ政権がソ連と交渉し、ミサイル危機を回避した……? いや、何かがおかしい。」
トニーは眉をひそめた。
「和平交渉が成功したというよりも、ソ連の要求がそのまま通ったように見える。これじゃあ、アメリカが一方的に譲歩したことになる。」
「つまり、時間改変派の介入があった可能性が高い……。」
*真相を探る
二人はキューバ政府関係者の動きを追い、異変の原因を突き止めるため、秘密裏に情報を収集した。やがて、ある名前が浮かび上がる。
「アレクセイ・セルゲイエフ……?」
「ソ連の外交官だが、彼の記録が未来のデータベースには存在しない。」
「つまり……時間改変派の工作員か。」
二人はセルゲイエフが滞在する高級ホテルに潜入し、彼の行動を監視することにした。
ホテルのスイートルームでは、セルゲイエフがキューバ政府高官と極秘会談を開いていた。
「アメリカに交渉の余地を与えるな。我々は歴史を変えるのだ。」
「やはり彼が改変派の中心人物か……。」
トニーとダグは会話を録音し、証拠を掴んだ。しかし、次の瞬間、警備兵が部屋に突入してきた。
「見つかった!」
二人は逃走を図るが、銃撃が始まる。激しい追跡の中、ダグが叫ぶ。
「タイムトンネルを作動させるんだ!」
トニーは懐から時間調整デバイスを取り出し、素早く座標を入力する。
「行くぞ!」
光に包まれ、二人は消えた。
*1968年:改変の修正
管制室に戻ったトニーとダグは、すぐに最新のデータを確認した。
「……キューバ危機が発生している。」
「アメリカとソ連は核戦争寸前まで行ったが、史実通り交渉が成立し、核ミサイルは撤去された。」
トニーは深く息をついた。
「これでバランスは戻った……。」
しかし、ダグは険しい表情を浮かべる。
「それでも、時間改変派はまだ動いている。我々は彼らの真の目的を突き止めなければならない。」
管制室のスクリーンに、新たな異常が浮かび上がる。
「次のターゲットは……1943年、ナチス・ドイツ?」
トニーとダグは顔を見合わせ、新たな戦いへと向かう決意を固めた。
(第5話へ続く)
今度はキューバ危機です。こういったことは、起こらない方が平和なのですが。ソ連側としては、ケネディを試したつもりなのでしょう。