第12話:「最後の戦い」
*1955年:ソ連の秘密研究施設
トニーとダグは、ソ連の極秘研究施設の暗闇に身を潜めていた。彼らの目の前では、セルゲイ・コロリョフ——後にクロノ・マスターとなる男——が時間制御技術の実験を進めていた。
「これが……クロノ・マスターの誕生の瞬間か。」
トニーは息をのむ。
「もしここで彼を止めなければ、未来はまた歪められる。」
ダグは慎重に周囲を確認しながら頷いた。
「しかし、コロリョフはソ連の宇宙開発の父だ。彼を排除すれば、歴史は大きく変わる。」
トニーは決断を迫られた。
「彼を殺すわけにはいかない。だが、時間制御技術を完成させる前に止める必要がある。」
*潜入と交渉
二人は警備をすり抜け、研究施設の中枢へと潜入した。そこでは、コロリョフが巨大な時間装置を操作しながら研究員たちに指示を出していた。
「時間の流れを制御できれば、我々は戦争を未然に防ぎ、ソ連の未来を確実なものにできる!」
トニーとダグはコロリョフの前に姿を現し、彼に向かって呼びかけた。
「セルゲイ・コロリョフ!」
彼は驚き、鋭い視線を向けた。
「君たちは何者だ? どうやってここに入った?」
トニーは一歩踏み出し、真剣な表情で語りかけた。
「私たちは未来から来た。あなたが時間を操れば、世界は破滅する。」
「馬鹿な……時間を操ることで、より良い未来を作れるのだ。」
コロリョフは冷静に反論する。
「いいや、そうじゃない。」
ダグが静かに語る。
「あなたの計画は、いずれ暴走し、やがてあなた自身が『クロノ・マスター』となり、時間そのものを支配しようとする。」
コロリョフの顔色が変わった。
「クロノ・マスター……?」
「そうだ。あなたは未来で、自らの理想を追求するあまり、人類を支配しようとした。そして、それが時間戦争を引き起こした。」
コロリョフはしばらく沈黙した。
「私は……そんなことはしない。」
トニーは厳しい表情で言う。
「あなたはそう思っているだろう。しかし、時間の力はあまりにも強大だ。あなたがそれを手にした瞬間、すべてが変わってしまう。」
「……」
コロリョフはゆっくりと装置を見つめた。
「ならば……私がこの技術を放棄すれば、未来は変わるのか?」
ダグは頷いた。
「時間制御技術がこの場で消滅すれば、クロノ・マスターは存在しなくなる。」
コロリョフは目を閉じ、しばらく沈思した。そして、意を決したように研究員たちに命じた。
「装置を破壊しろ。」
*未来の修正
コロリョフの命令により、時間装置は完全に破壊された。
「これで……未来は?」
トニーは無線でジェリーに連絡を取った。
「ジェリー、確認してくれ。未来はどうなった?」
管制室のモニターが明滅し、ジェリーの声が聞こえた。
「クロノ・マスターの痕跡は完全に消滅。時間戦争の影響もなくなっています!」
ダグは深く息をついた。
「成功した……。」
コロリョフは二人を見つめ、静かに言った。
「私は、この技術を歴史の闇に葬る。しかし、君たちが未来を守るために戦ったことは忘れない。」
トニーは頷いた。
「あなたは、人類の未来を作る存在だ。その役割を全うしてくれ。」
コロリョフは微笑み、二人を見送った。
*1968年:時の守護者たち
タイムトンネルに戻ったトニーとダグは、管制室のスクリーンを見つめていた。
「歴史は修正された。クロノ・マスターは存在しない。」
ジェリーが安堵の声を上げる。
「すべてが元に戻りました。もう時間の歪みはありません。」
トニーは微笑み、ダグと固い握手を交わした。
「これで、俺たちの使命も終わりか……?」
ダグが静かに言う。
「いや、時間の流れが続く限り、新たな危機は訪れる。」
トニーはスクリーンを見上げながら答えた。
「だが、俺たちは時間の守護者だ。未来を守るために戦い続ける。」
スクリーンには、穏やかな時間の流れが映し出されていた。
「行こう、ダグ。また新たな時の旅が始まる。」
(エピローグへ続く)