再婚
まぁちゃんと俺は籍を入れた。
やっと俺たちは夫婦になれた。
長い回り道だった。
まぁちゃんの体調が良く、癌が不思議なことに少し小さくなっていた。
最新の治療の効果だろうということだった。
「先生、夫婦だけで暮らしたいんですが……
無理でしょうか?」
「奥様のお気持ちは?」
「私も主……主人と主人の家で暮らしたいです。
主人に食べて欲しい食事を作りたいです。」
「そうですか。ご自宅でも過ごせますよ。
看護師の訪問は受けてくださいね。
勿論、医師の訪問も……。」
「はい!」
先生の前で二人で見つめ合って微笑んでいたらしい。
息子と娘から後で聞いた。
退院し、俺の家に住みことになった。
俺はアパートからエレベーターがあるマンションに引っ越していた。
まぁちゃんを迎えるために、二人の新居だ。
まぁちゃんが退院する前に、子ども達が友達たちと病棟のスタッフの皆さん迄巻き込んで計画を立てていた。
そんなサプライズがあるとは露知らず、俺は病棟のまぁちゃんの部屋に向かった。
病棟の部屋には子ども達が居て、まぁちゃんの姿は無かった。
「あれっ? まぁちゃんは?」
「お父さん、この服に着替えて!」
「なんで?」
「なんで、でもっ!」
「さぁ、お継父さん。こっち、こっち。」
「おい! どうしたんだ?」
「いいから、行けよ。」
「なんなんだよ。」
俺はタキシードに着替えさせられた。
「なんで……?」
「これから、結婚式を執り行うんだよ。」
「えっ?」
「お前たち夫婦の可愛い息子と娘が……子供たちが計画したんだ。
俺たち友達は乗っただけだよ。
早く、着替えろ。
それから……まぁちゃんもウェディングドレスだからな。」
「……まぁちゃんの髪、俺が整えたい。」
「そういうと思ったよ。」
「だから、ベールを着けずに待って貰ってる。」
「……ありがとう。」
俺は涙が出て、長男がそっとハンカチを渡してくれた。
「……ありがとう。」
「お礼を言うのは俺たちですよ。なぁ!」
「うん。お母さん、幸せそうなんです。本当に幸せそうで……。」
「そうか……良かった。」
「さぁ、早く!」
「ありがとうな。」
「お継父さん、泣いちゃダメですよ。」
「そうそう、泣くのは新婦の仕事です。」
「分かった。我慢する。」
そう言って部屋を出て連れて行かれた部屋に……ウェディングドレス姿のまぁちゃんが座っていた。