もうひとつの……ひとひらの花弁
あれは……夢だったのか?
変な夢だ。
合コンって? 俺たちの時代には無かった。
アプリって? それも無かった。
変な夢だ。
俺は、まぁちゃんと結婚出来なかったのに……。
夢の中では結婚していた。
違う。違いすぎる。
まぁちゃんと俺が出逢ったのは昭和50年だった。
俺は、まぁちゃんに一目惚れだった。
俺の店に来たお客さんだったまぁちゃんに恋をした。
付き合いだしたのは俺が告白したからだった。
いろんな所へ出掛けた。
デートが楽しかった。
休日はまぁちゃんが俺に合わせてくれた。
時々、母が俺に休みをくれて、そんな日はデートをした。
あれは……付き合って4年が経った頃だった。
まぁちゃんも高卒、俺も高卒。
俺は高校を卒業してから学校へ通い資格を取った。
理容師の資格だ。
その俺の学歴が、まぁちゃんのご両親は許せなかったのだ。
そして……まぁちゃんは毎日、お父さんに酷く叩かれたらしい。
俺は何も知らなかった。知らなかったのだ。
まぁちゃんは……何も言わなかった。
まぁちゃんは親が言う通りにするしかなかったそうだ。
「何故なんだ?」と聞くと、「まぁちゃんは親からの虐待を受け続けていたから……。」と教えてくれた。
そう、もう何十年も経ってから聞いたのだ。
まぁちゃんが治ることが無い病に罹った後で、共通の友人から俺は聞かされた。
そう全てを……。
あの時、何があったのかを……。