良い友達たち
まぁちゃんは、あの日から痒みが酷くなったそうだ。
掻いてしまって夜中に起きてしまう日もあるらしい。
きっと大きなストレスだったのだと俺は思った。
そして、⦅何も俺は出来ない……。⦆と現実を突きつけられた。
あれから、モテ男の婚約者さんも合コンの時に居たもう一人の子も泊まりに来てくれている日があるようだ。
急に俺の家は賑やかになった。
婚約者さんはボーイッシュで明るく楽しい子だと母は言っている。
モテ男に一目ぼれした婚約者さんは、積極的にアプローチして恋を実らせた。
もう一人の子は、二人と比べると大人の雰囲気で仕事をバリバリしていて責任感が強い子だと母は言っている。
母は「三人とも可愛いわぁ。」と言って、息子が家に居ない状況を楽しんでいるようだ。
そして……叔父が動いてくれた。
まぁちゃんから聞いた電話番号を俺は叔父に伝えて「お願いします。」と頼んだ。
叔父は「やっと頼ってくれた。これを上手く纏められたら僕は兄さんに報告出来るよ。」と言ってくれて、「礼を言いたいのは僕の方だよ。」とまで言ってくれた。
そして、まぁちゃんの家に電話をしてくれて日時を決めてくれた。
一歩前に進めた気分だった。
「叔父さん、駄目だったら……俺、まぁちゃんを帰さないよ。」
「強気だな。」
「まぁちゃん、アトピーが酷くなってるんだ。
お父さんとお母さんのせいだ! そんな家に帰したくない。」
「分かった。二人の気持ち次第だからね。僕は粘るけど……。」
「はい。」
「駆け落ちって手もあるけどね。昔から……。
でもね。出来る限り認めて貰いたい!
僕の大切な甥だから……。
だから、粘るよ。僕は、いいね。」
「………叔父さん……ありがとう。」
「今まで義姉さんと子ども達で頑張ってくれた。
感謝してるよ。」
「叔父さん……。」
「二人で幸せになるんだよ。」
「はい。」
二週間後の土曜日、まぁちゃんの家を叔父さんと母と俺とで挨拶に行くことにしている。
まぁちゃんは怖がっていて無理だと思った。
「叩かれる……。」
「俺が付いてるよ。」
「酷いこと……皆さんに言うかもしれない。」
「それも分かってる。」
その話の間、まぁちゃんは腕を掻いていた。
痒みが収まらないのだ。
俺は冷凍庫から保冷剤を取り出して、まぁちゃんに渡した。
冷たい物を当てることで痒みが少し収まることがあるそうだ。
「ごめんなさい。」
「いいよ。」
「ありがとう。」
「うん。」
まぁちゃん抜きで考えていたが、当日の朝、まぁちゃんが「私が行かないと…。」と言ってくれて、まぁちゃんも一緒に俺の家を出た。
行く気になったのは友達のお陰だった。
婚約者さんも、キャリアウーマンさんも……まぁちゃんに「結婚するなら、自分の気持ちを話した方がいい。それが出来るのは、まぁちゃん一人の時じゃないと思うわ。話せるチャンスなのかもしれないからね。」と言ってくれたそうだ。
勇気が要ったと思うけれど、まぁちゃんは凄く頑張ってくれた。
震えるほど怖いお父さんの前に出ると決めてくれたのだから……。
その話を聞いた母が……「あんた、もうちょっとシッカリしなさいよ。」と一言。
俺は「御尤も!」と言うしかなかった。