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ひとひらの花弁  作者: yukko
ひとひらの花弁
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見合いの日の後

まぁちゃんには暫く俺の家から会社に通って貰った。

俺は叔母の家から店に通った。

あの日、俺の家に来たまぁちゃんに母も叔母も褒めた。

「頑張ったわね。」と褒めた。

「親から褒められることが無かった。」と言ったまぁちゃんは泣いていた。

母が優しく背中を撫でた。

まぁちゃんは、毎日、母と過ごすうちに少しずつ落ち着いてきたようだった。


「まぁちゃん、お父さんかお母さんが会社に来た?」

「いいえ。」

「そうか……。」⦅あんなこと言ってたのに心配しないのかよ!⦆

「……もしかしたら、私が家に居なくて嬉しいのかも……。」

「そんなことないよ。」

「心配しているでしょうけれども……

 どうしたらいいのか分からないのでしょうね。」

「?」

「娘の友達の名前も知らないのだから……。

 誰に連絡したらいいのか分からないのだわ。

 それに、会社に出向くことは無いでしょう。

 会社って、多分、お父さんにとって恥をかきたくない場所だろうからね。」

「恥をかく?」

「そうよ。『娘が帰ってきません。会社に来ていますか?』って聞けないのよ。

 だから、今どうしたらいいのか分からないんだと思うわ。」

「なるほど。」

「ところで、お二人さん。

 これから、どうするの?」

「どうするって……考えるよ。」

「まぁちゃん、うちの馬鹿息子の手を取ったのよね。

 ご両親は結婚相手だと思ってらっしゃるわよ。

 いいの? うちの馬鹿息子で……。」


まぁちゃんは頬を染めて小さく頷いた。


「いいのね。これで……。これよ。本当にいいの?」

「……はい。」

「今なら引き返せるわよ。」

「母さん!」

「私……生まれて初めて『好き』って言って貰えたんです。」

「ちょっと待って! 初めての告白だったからなら、止めた方がいいわ。」

「母さん!」

「そうでしょう。今の気持ちは本物じゃないから……。」

「本物?……ドキドキしても……。」

「ドキドキするの? これに?」

「母さん……もお~~っ。」

「あんたは黙ってなさい。」

「俺のことじゃないかっ!」

「黙ってなさい!

 ……まぁちゃん、これにドキドキしたのは、いつからなの?」

「あの……『好き』って……。」

「うん。」

「言われるより……前……です。」

「前なの?」

「それって、いつから?」⦅ほんとかよ。⦆

「あの、えっとぉ~……。」

「うん、うん。」

「いつからなの?」⦅いつからなんだ?⦆

「女子会で……お泊りさせて貰った頃だと…思います。」

「へぇ~~っ、じゃあ両思いだったのね。」

「……………ほんとに?」⦅気が付かなかったぁ……。⦆

「はい。」

「じゃあ、結婚してもいいのかしら?」

「…はい。」

「じゃあ、どうするか分かるわよね。」

「挨拶に行く!」

「その日は私も行くからね。」

「えっ?」

「うちの馬鹿息子の所に来て貰うんですもの。

 ちゃんとご挨拶しないといけないわ。

 それに、謝罪もね。」

「正式に挨拶に行くってこと?」

「勿論! 一回で済ませるわよ。」

「へっ?」

「一回でいいのよ。ちゃんと筋を通せばね。

 後は若い二人で、ね。

 挨拶が終わったら、式の日取りを決めないとね。

 そのために式場を二人で見に行くといいわ。」

「許して貰えなくても?」

「成人なんだから結婚出来るでしょう。」

「でもさ、まぁちゃんのことを考えると……許して貰ってからの方が……

 いいんじゃないかと思うんだ。」

「ああいう人は間に入る人を通したら許すわ。

 だから、学歴がある役職にも就いている男性にも一緒に、ね。」

「そんな人どこに……?」

「居るじゃないの。お父さんの弟……あんたの叔父さん。」

「あ……役所の課長!」

「そうよ。頼んでみるわ。

 叔父さんから連絡を取って貰うわね。

 あちらのご都合がいい日に両家の顔合わせも兼ねて、ね。」

「母さん……ありがとう。」

「それからね。二人が結婚したら、あんた、家を出るでしょ。

 新居も探さないといけないわよ。

 まぁちゃんは結婚した後、会社はどうするの?」

「まだ、考えていません。」

「私からのお願いなんだけどね。」

「はい。」

「出来たら会社は辞めずに続けて欲しいの。

 今の会社が居づらかったら辞めて貰いたいのだけどね。

 まぁちゃんにとって嫌な場所じゃなかったら続けて。

 何があるか分からないからね。

 女性も仕事を持つべきだと思うの。」

「はい。考えます。」

「母さん。」

「あんたが結婚しても私は同居したくないからね。

 嫁と姑は離れた方がいいのよ。」

「うん。……でもさ、母さんの体調が悪くなったら言ってよ。

 俺が看病するからさ。」

「勿論、その時は馬鹿息子に頼むわ。

 でも……妹の方がいいかなぁ~。」

「私が……。」

「まぁちゃんは古いことに縛られているお家で育ったから……

 同居不可はいけないことだと思っているだろうけれども、不可でいいのよ。

 自分の親のことは自分で!が正しいの。

 でも、その優しい気持ちは有難く頂きますね。」

「はい。」

「じゃあ、あんたは動くこと。いいわね。

 決めないといけないことが多いのよ。

 頑張りなさい。でも、仕事はしっかりと!」

「うん。分かった。」


まぁちゃんの気持ちを知れて嬉しかった。

俺は、あの合コンのメンバーに「まぁちゃんとの結婚」を報告した。

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