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ひとひらの花弁  作者: yukko
ひとひらの花弁
2/45

メイク

その後の彼女はずっと俯いていた。

話にも積極的に入らなかったし、もう最後の方は居ないような存在になっていた。

⦅何の為に合コンに来たんだか……。⦆と思っていた。

⦅折角あげたのにリップも塗ってない……何なんだ? この女は…。⦆とも思った。

一次会が終わって二次会に行くという話になっても、彼女は乗って来ない。


「済みません。帰ります。」

「まぁちゃん、帰っちゃうの?」

「うん。もう帰らないと……今日はありがとうね。誘ってくれて……。」

「ううん。来てくれてありがとう。」

「今日はありがとうございました。

 お先に失礼します。」

「ねぇ、君、急いで帰らないといけないほど遠いのか?」

「……いいえ……。」

「じゃあさ、これから俺の店でメイクしない?

 3人ともメイクしてあげるからさ。ここから近いし、どう?」

「うわぁ~~っ! 行きます!」

「まぁちゃん、行こうよ。」

「私は……。」

「はい、行くよぉ~。」

「俺も見たい!」

「俺も……。」

「皆で来いよ!」

「ありがとう。」


5人を引き連れて店に帰った。

今日は定休日だから、こんなことも出来る。


「自分の店?」

「親が作った店なんだ。」

「じゃあ、二代目?」

「そうだよ。

 さぁ、最初は誰? 決まったら、こっちに座って!」


そして、彼女以外の女の子のメイクを終えた。

満足して貰って俺は嬉しかった。

彼女の番になった。

何故か……彼女は尻込みした。

それを周りの皆が「さぁ、座って!」と勧めると彼女も無下には出来ずに座ってくれた。

メイクを施していく。

見る見る間に大人の顔になっていった。

終わって「鏡を見て!」と言っても俯いていた。

俺も皆も恥ずかしがっていると思った。


⦅これで、彼女もメイクの仕方を覚えただろう!⦆


「あの……ありがとうございました。」

「うん。いいよ。」

「……あの……失礼してもいいですか?」

「まぁちゃん、もう帰るの?」

「うん。帰る。……ごめんね。最後まで居れなくて……。」

「ううん。今日は無理やり連れて来ちゃったから……

 私こそゴメンね。」

「ううん。ありがとう。気に掛けて貰って……。」

「まぁちゃん、また飲みに行こうよ。

 合コンもね。また誘うから、ねっ!」

「…うん。……ありがとう。

 あの……済みません。お先に失礼します。

 ありがとうございました。」


彼女は直ぐに帰ると言った。

俺たちは二次会に行くと決めていたが、俺は家に帰ることにした。

男が3人ってのもね。

後の4人は「いい雰囲気」だったからね。

彼女は急いで駅のホームに向かって走って行った。

その後を追いかけた。

⦅もしかしたら初メイクだったかもしれない!⦆と思うと、感想を聞きたくなったからだった。

追いついて彼女に聞いた。


「なんで、そんなに急いでるの?」

「えっ?」

「追いついたよ。」

「どうして?」

「メイク……どうだった?」

「……ありがとうございました。」

「どう感じたか聞きたいんだ。」

「どう………。」

「うん。」

「済みません。早く帰りたいんです。」

「えっ?」

「済みません。」

「まだ9時だけど? 実家なの?」

「はい。」

「厳しいの?」

「はい。………あの、もういいですか?」

「えっ?……うん。じゃあ、気を付けて!」

「ありがとうございます。失礼します。」


急いで電車に乗り込んだ彼女は嬉しそうじゃなかった。

⦅そんなに怖いのかな? どんな親なんだろう?⦆と不思議だった。

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