心療内科受診
まぁちゃんの親がなんと言ったのか分からないが、今回は母のお陰だと言わざるを得ない。悔しいけど……。
母が泊まることを電話で話した時は「普通だった。」と母は言った。
だけど、俺は不安だった。
まぁちゃんが帰った時に叱られるのではないかと不安だった。
ただ、母は言った。
「多分だけどね。
23歳までに結婚!というのは世間体だと思うのよね。」
「えっ? 世間体?」
「そうよ。世間体。何よりもそれが大事な人も居るのよ。
世間体を気にする人なら、会社の友達の母親からの電話を無下にはしないわ。
まぁ、会社の友達の母親ってのは嘘だけどね。
『よろしくお願いします。』って返事だったから、大丈夫よ。」
「ふぅ~~ん。ってか、さ。
会社の友達の母親って嘘、バレたらどうするのさ?」
「バレないわよ。もう二度と電話しないからね。」
「バレたら……酷い目に遭わされるかもしれないのに……。」
「やっぱりね。心配なんでしょ!」
「そりゃそうさ。母さんのせいで叱られたら、まぁちゃん可哀想だ。」
「心配で仕方ないのね。そりゃそうよね。好きなんだもん。」
「だから、違うって!」
「楽しみね。受診日! まぁちゃんに会えるわね。」
「……はぁ……もう、やだ!」
そして、心療内科受診の日が来た。
まぁちゃんとは店で待ち合わせた。
その日は母と俺だけが店を休んだ。
店は叔母と従姉の二人で営業する。
店で待っていると待ち合わせ時間の10分前にまぁちゃんは来た。
俺が運転する車で予約した心療内科に向かった。
「今日は本当にありがとうございます。」
「いいえ、無理強いしたような気がして御免なさいね。」
「いいえ、眠れない日が続いていたので良かったです。」
「そう言って貰えると良かったわ。」
「まぁちゃん! うちの母は強引だからね。嫌な時は嫌って言ってよ。
嫌って言われても大丈夫だからね。
気にしないと思うから……。」
「はい。……あの今日はありがとうございます。」
「あ……お礼を言われるようなことしてないから、気にしないで!」
「ありがとうございます。」
病院に着いて、診察室に入ったまぁちゃんを待っている間、俺は不安だった。
⦅大丈夫だろうか……。⦆ということばかりが頭の中を駆け巡った。
診察を終えたまぁちゃんを見た。
泣いた跡があった。
「お待たせしてしまって……。」
「いいよ。そんなこと……。」⦅大丈夫なのか? 泣いた跡がある。⦆
「なんて仰ったの?」
「私の幼い頃からの話を聞いて、先生は……
私が虐待を受けていたって仰いました。」
「そうなんだ……。」
「そう……今は大丈夫?
幼い頃からの話をして……大丈夫なの?」
「はい。大丈夫です。泣いちゃいましたけど……。」
「泣いてもいいのよ。」
「はい。先生もそう仰って……
病名も付きました。」
「病名!」
「なんて?」
「……抑うつ状態と……。」
「抑うつ……。」
「そうなのね。」
「良かったです。ありがとうございました。
眠れないことをお話したら、お薬を出して下さると……。」
「そうなのね。」
「連れて来て下さって本当にありがとうございました。」
「そう思って貰えたら嬉しいわ。
余計なことをしたのに……まぁちゃんは優しいわね。」
「会計があるので、そちらに行きます。」
「そうね。ここで話し込んでもいけないわ。」
「行こう。」
会計を済ませて薬を貰い、帰路に就くことにした。
「まぁちゃん、今日はお父さん、お母さんに話してきた?
俺たちと病院へ行くって……。」
「いいえ、普段通りに何も言わないで家を出ました。
会社に行ってると思ってるはずです。
嘘付いちゃいました。」
「大丈夫か? 叱られない?」
「叩かれるだけですから……。」
「叩かれるだけって……ごめんな。」
「そんな、ごめんって言わないで下さい。
本当に感謝してるんですから……。」
「でもな、辛い目に遭わせるようになってしまうから……。」
「分かりましたから、いいんです。」
「そう?」
会社に行っていることになっているから、今日はこのまま家に帰らず、俺たちと一緒にうちの家に帰ることになった。
店は叔母たちに頼んだ。
うちの家に帰る前に昼食を摂った。
昼食後、急に母が違う話を始めた。