婚約おめでとう
モテ男の結婚が決まって、あの合コンの3人プラスモテ男の彼女……否、今は婚約者だ。
その4人で会った。
「婚約おめでとう」のちょっとした飲み会だ。
今、彼女が居ないのは俺だけだ。
「おめでとう!」
「やったな。お前ぇ~。」
「ありがとう。」
「ありがとうございます。」
「それで、いつなんだ? 挙式。」
「来年の春、4月なんだ。
来てくれるよな。」
「もちのろん!」
「勿論だよ。」
「ありがとうございます。」
婚約者がトイレに行った時に聞いた。
「なぁ……あのネットゲームの子。 あれから何もしてこないか?」
「あの時から何も……助かったよ。 ありがとう。」
「しつこかった子だよな。話だけ聞いたよ。」
「兎に角、良かったよ。」
「うん。彼女の不安も消えたみたいだから……本当、ありがとう。」
「ねぇ、何の話?」
「否、あの付きまとった子のことだよ。」
「あ………あのネットゲームの子ね。」
「もう接触してきてないからね。」
「うん。分かってるわ。」
「あのさ……あの時の合コンの……君以外の人二人だけど……
今はどうしてるか分かる?」
「分かりますよ。
一人は職場の人から告られて少し前から付き合っています。
もう一人はお見合いさせられて……断ってから……
まぁちゃんは……お見合いを断ったことで……
親に叱られたって聞いてます。」
「叱られるって……なんで?
第一、お見合いって何?」
「だよな! お見合いって何なんだよ、って思うよな。」
「それは、私も思います。
なんだか、ほっぺが赤く腫れてて……
聞いたら、『お父さんに叩かれた。』って……。」
「見合いを断っただけで叩くぅ?
あのさ……親が所謂……毒親なのか?」
「私ももう一人の子もびっくりしたんですけど、まぁちゃん………
叩かれ慣れてるみたいなんですよね。お父さんに……。
門限も今もあって……お父さんよりも遅く帰ると叩かれるそうなんです。」
「それって日常的なのか?」
「みたいですね。私は家を出るように言ったんですけどね。
そしたら、まぁちゃん、『家を出るのは結婚する時だけ』って……。
そう両親から言われてるって………そう言ってました。」
「ストレス凄そうだな。」
「ストレス………アトピーの原因の……ひとつ……。」
「なんだって?」
「アトピーの原因のひとつがストレスなんだってさ。」
「まぁちゃんがアトピーだって知ってたんですか?」
「うん。偶然、会ったんだ。一度だけ……。
その時に本人から聞いたんだ。」
「まぁちゃんが話したんですか………。」
「もし、親が原因だったら、家を出て親から離れるしかないんじゃないかな?」
「そうだよな。」
「でも、まぁちゃんは選べないんですよね。
最初から無理だと思ってる。」
「でも、結婚でしか家を出られないと思ってるんだよな。」
「親の言葉に縛り付けられてるのか……。」
「遠くに異動とか……?」
「うちの会社は大きくないから日本全国に支店はありません。」
「結婚でしか家を出られないなら、尚更、親の言いなりになるかもな。」
「言いなりになって結婚したら、親の手の中のままだと思うけどな。」
「誰かと恋愛するしかないのか?………それは難問だな。」
「あのさ、昼休みの時間に会わせてくれる?」
「えっ?」
「俺、気になって仕方ないんだ。
あの時、メイクしたから……知らなかったけれども……
悪化させたから……気になるんだ。」
「分かりました。いつならいいですか?」
「月曜日が定休日だから……第一希望は月曜日。」
「分かりました。
もう一人の子とまぁちゃんと3人でいつもお昼ご飯食べてますから……
上手く誘います。」
「俺も一緒に食べたいなぁ。」
「お前はいつでも一緒に食べられるだろ!」
「だってさ……。」
「可愛く『だってさ……。』って言っても、なぁ。」
「勿論、貴方も一緒よ。」
「げっ! どこでも一緒かよ。」
「そうなるんだろうなぁ……。」
「俺もいつか……そんな恋をしたいなぁ。」
「今、してるだろ。」
「否。それほどの恋じゃないから。」
「そうなのか?」
「うん。」
「婚約おめとう」から、あの子……まぁちゃんに三度会える機会を得られる約束が出来た。