⑥
「あ゛ーー……」
窓越しに聞こえていた蝉の大合唱が、いつの間にかヒグラシのしんみりした独唱へと変わる頃。
小さなテーブルを5人で囲って座っているにも関わらず重い沈黙が漂っていた303号室だが、それを1番最初に打ち破ったのは、額を抱えた陸のうなり声だった。
「……今の説明だとつまり、やたら犬飼君につっかかってた米山君が、なぜか消えたいと思ったうえに、なーぜーかヴィズを呼んだ。そんで、そこのヴィズは人間の情報を集めるために、秋人や犬飼君……学園の人間に『種』をまいたって?」
「うんうん、大体合ってふぞ。むぐ、メガネ君もオーヘー?」
「ああ。にわかには信じ難いが、実際こうして目の前にヴィズがいるからな。それに、その方がドッペルについても納得がいく。」
「えー、犬飼君順応早すぎでしょ!俺は納得どころか理解すんのも厳しいんだけど……あのさ、取り合えずこの菓子食いまくってるヴィズ、マジで警察に通報しなくていいわけ?」
3日間徹夜した後みたいな顔の陸に、俺は頷き返す。
最初に『俺』がヴィズだって知った時は、2人が警察を呼ぼうとするのを止めるのに苦労したが、学園内に種をまかれた『人質』がいるうえに、こいつが米山君の行方の鍵を握っている以上、警察に通報することはできない―――そう説明し終えている今は、口を盛大に歪めて、どうにか憤りを飲み込んだみたいだ。
そんな陸にいそいそと近づき、肩に手を置いたのは『俺』だ。
「まあまあ、落ち着けって。お前たちに何かしようとは思ってないって言ってるだろ。」
「うわー!触んなよ!つーか、もう秋人とか犬飼君に種ってやつまいてんだろ。十分してくれてんじゃねーか。」
「ん、お前にもまいてるぞ?」
余りに唐突な衝撃に俺の喉から「んぼぇ!?」という変な声が出た。
そんな俺の隣で、陸も飛び上がる。
「はぁっ、マジで!?嘘だろ!?」
「へへ、ウッソー。引っかかってやんの!」
「ああああああーーーもうやだコイツー!犬飼君が秋人のNAZO!な化学のノートを直しに行くって言うから一緒に勉強しようと思って付いて来たのに勉強どころじゃねーし、なんで更に謎でヤベー奴がいるんだよ!……そもそもヴィズってこんなやつじゃねーだろ。もっとガーッて襲ってくるだろ普通!」
「おおさすが『オサナナジミ』、リアクションが一緒だなあ。でも、お前には本当に種を仕込んでないから安心しろって。『これ以上他の人間に種をまかない』ってのが、さっき日野とした約束だから。」
「まさか陸が持ってきたお菓子食べたさに、簡単に約束するなんて思ってなかったけどな。」
「分かった、もうまかない!」とすっぱり返事をし、なんの恥じらいもなくクッキーを齧るヴィズに、俺までもう一度「お前ほんとにヴィズなの?」と聞いてしまったほどだ。
(でも、陸には何もしてないんだよな。良かった。)
ひとまず、被害者がこれ以上増えないことにホッとした……が、俺と同じく種をまかれているらしい犬飼は違った様だ。目を細めて『俺』を観察したまま、ぽつりと呟いた。
「…ヴィズが人間との約束を守るなんて、俺には信じられない。」
「だな。俺も犬飼君に賛成。そもそも、そいつの話は本当なのか?種とか言われても目に見えないし、俺達を脅すための嘘かもしれないぜ。秋人は単純だから、そういうのすぐ騙されるし。」
「なっ、だって本当に頭が内側からムズムズしたり、すげー痛かったりしたんだぞ!それにコイツ、俺が吸血嫌いだってことも知ってたし……。」
「そうか、種で収集した情報とやらも、適当に誰かが喋っている内容を盗み聞ぎしただけかもしれないな。間宮の言う通り日野は単純だから、可能性はある。」
「うぐ……」
なんだよ2人揃って単純単純言いやがって!
言い返してやりたいのは山々だが、困ったことに幼馴染と学年3位相手ではうまい言葉が思いつかない。 助力を求めようにも、さっきから完全に興味を失っている結城先輩は黙ってスマホを操作し続けているし―――。
「おいおい負けるなよ日野。お前らも、友達ならそんなこと言ってやるなよな。」
「えっ、あ、ありがと……なあ、唯一の味方がヴィズっておかしくない?」
「俺の種の情報によるとメガネ君は最近、学食の和風ハンバーグに乗ってた大葉の美味さに衝撃を受けたらしいぞ。どのくらいかって言うと、部屋へ帰った後に国語辞典で『大葉』という言葉を調べ、その見出しに緑色の付箋を付け、緑色の蛍光マーカーをひき、緑色の……」
「おい間宮大変だ。俺にも種がまかれてるぞ。」
「切り替えも早いな犬飼君は!?つーかそんなことまで知られるとか『種』こえー、超こえー!」
「い、犬飼お前…あの時すげえ大葉をガン見してるとは思ってたけど、どんだけ気にいってんだよ!マイブーム終わった後に緑まみれになったページ見てみろ?死ぬほど恥ずかしくなるやつだぞ!」
「そうだぜ、小学生がこっそりエロい単語調べてマーカーひくならまだしも大葉って……大葉って……ん、大葉ってなんだっけ!?やべえ分かんなくなってきた!」
「?」
や……やめよう、いたって真面目な顔をしている犬飼に、なぜか突っ込んでる俺たちの方が恥ずかしくなってきた。
粗っぽく咳払いした陸が、『俺』に向き直る。
「えー、それは置いといて。とにかく、学園のどこかにいる米山君を見つけ出せば、種を取り除いてくれるんだろ。」
「そうだな、状況によるけど。ま、聡が消えちゃう前に見つけられればいいね。」
「……お前、本当に米山君の居場所を知らないのか?」
「さっきも言っただろ、『知ってるけど、知らない』って。とにかく、聡は学園内にいる……これ以上は言うつもりはない。」
何度聞いても曖昧な返答だ。困惑するばかりの俺と陸は、自然と顔を見合わせる。
一方で、あからさまにフイと顔を背けた『俺』の態度が気に食わなかったのだろうか。いつもより険しい表情の(ように見える。当社比。)犬飼が、『俺』が手を伸ばしたクッキーを横から掻っ攫った。
「あー!」と悲鳴をあげるヴィズの正面でゆっくり、サクサクと小気味良い音を立てながら咀嚼する姿は、なかなかシュールかつ鬼畜である。
「美味いな、これ……で、米山は寮生じゃないのか。」
「うん。さっき寮の名簿見たけど、ここにはいなかった。実家から通ってるみたいだ。」
「じゃあ明日登校したらまず、Dクラスに行ってみっか。問題は米山君が見つかるまでの間、秋人そっくりのこいつをどうするかだけど……。」
陸が、犬飼を恨めしそうに睨む横顔をチラリと見る。
クッキーが犬飼の喉を通ったのを見てやっと諦めたらしい『俺』は、今度は空袋に付いたクッキーの粉を指ですくって舐め始めた。
「俺?俺も学園に行くに決まってるだろ。人間の生活を観察するチャンスだってのに、こんな狭いとこに閉じ込もってるなんて、つまんないじゃん。」
「はあ!?無理に決まってんだろ、お前一応ヴィズなんだぞ?」
「無理じゃないですぅー。あと、一応じゃなくてもヴィズですぅー。」
「うっわ絶妙にイラっとする!こいつ、段々喋り方のバリエーションが増えてね?」
「…ヴィズじゃなくて妖怪クッキー舐めと呼ぼう。」
「えーっ格好悪い!センパイ助けて、こいつらが虐める!」
おいやめろ、俺と同じ顔で結城先輩の腕にしがみ付くんじゃない!
しかも、その体勢で妙に勝ち誇ったような顔を俺に向けてきて……よく分かんないけど、またモヤッとした感覚が腹の底から湧き上がる。
「くっつくんじゃねー。離れろ。」
「なあ、センパイだって俺と同じ考えだろ?こんなに頭が良いヴィズを、誰も見てない部屋に1人にしていいのか。むしろ、例え学園内でも目の届くところに置いとく方が賢明だ……ってね。」
「俺は今すぐお前を通報するか、消す方が早いと思ってるけど。」
(えっ、それじゃ米山君が消えちゃうじゃないか。種をまかれた学園の人達もどうなるか……。)
背中がヒヤリとする一方、心底迷惑そうな顔をした先輩に引きはがされた『俺』も、笑みを引っ込めた。
「ほーんと聡のことっていうか、センパイは周囲に対して執着とか、興味が無いのな?……ふむ、それはそれで俺の興味が出て来た。センパイにも種をまいときゃ良かったぜ。」
「…………。」
「でも、俺を排除するようなことしたら、種はそのままだぜ。大多数はどうであれ、ルームメイトの後輩がどうなってもいいのか?」
(お、俺!?)
先輩の琥珀色がこちらに向けられると、心臓が勝手に跳ねた。予想外の緊張にほんの2、3秒ですら、長い時間のように感じられる。
先輩はなんて答えるんだろうーーー聞きたいけど、それ以上に聞くのが怖い。トイレでもいいから、何か理由をつけてここから動けば良かった。
…そう思った矢先、視線をフイと逸らした先輩が呟いた。
「別に。首突っ込んだそいつの自業自得だろ。」
「ふーん。」
ーーーああやっぱり、こう言われると思ったんだ。
分かってたし、期待なんかしてなかったのに、なぜか喉が熱くなって息がつまる。
「なっ、そんな言い方ねーだろ!」
大きな音に驚いて顔を上げると、テーブルに両手を叩きつけて立ち上がったのは陸だった。
「アンタ最低だな!秋人だって、好きでこんな目に合ってるんじゃないんだぞ。」
「り、陸、俺は大丈夫だからさ…」
そう言いかけたところで、キッとこっちを睨んだ陸は俺の右腕を掴んだ。…やばい、いつもの温厚な様子は何処へやら、完全に怒っていらっしゃる。
「大丈夫じゃねーだろ!中3の時も、1人で大丈夫だって、そう言った帰り道にヴィズに襲われてんだぞ。今度は変なもん頭に入れられたって?」
「陸、」
「そんなのハイそうですか、なんて納得出来るわけねー。 なんでお前ばっかりこんな目に合うんだよ。」
「陸あの、腕が痛…」
「先輩、アンタだってよく言えるよな。アンタも忘れちまったのか?あの日こうえーーー……!」
突然、陸の口が動きを止めた。
正確には出かけた言葉を無理やり押し戻すかのように、口元を手のひらで覆っている。
「『こうえ』?」
「あ、いや、なんでもない……あー、えっと、ごめんな大きな声出して。と、とにかく、そんな人放っておいて米山君を見つけよう。俺も協力するから。」
「お、おお。」
ーーーなんだ、今度は急によそよそしい感じになったぞ。
怒りが収まったのは良かったけれど、ちょっと不自然だったのは気のせいだろうか?
(……いや、不自然にもなるか。また陸に心配かけちゃってるんだから。)
それに、まさかヴィズが出てくるとは思わなかったとは言え、先輩の言葉は間違ってない。ダメだ俺、しっかりしないと。
「先輩、陸、巻き込んでごめんなさい。できるだけ早く、米山君を見つけますから、その…」
「通報するのはやめろ、か。」
先輩は考えるようにじっと『俺』を見ていたが、数秒後に深いため息をついた。
「……勝手にしろ。ただ、こいつが変な行動したときは、容赦しないからな。」
「あ、ありがとうございます!」
良かった!断られたらマジでどうしようかと思った。
俺が頭を下げると、見計らったようなタイミングで、結城先輩のスマホが震えだした。
「ーーー、もしもし。」
先輩は一瞬、こちらに向かって唇を開きかけていたように見えたけれど、スマホを耳に当てると、部屋を出て行ってしまった。
その背中を見届けた犬飼が、眼鏡をカチャッと押し上げる。
「なんとか米山を探す方向で動けそうだな。……で、間宮。気合いが入ってるのはいいが、そろそろ腕を離してやれ。日野が痛そうだ。」
「えっ?ーーーうわ、ごめん秋人!無意識だった……けど、俺そんなに強く握ってないぞ。」
「あ、あー、ちょっとハンドボール投げで痛めちゃったかな?すげースナップしたからな。」
ーーー本当は痣の真上を掴まれたからだけど。とっさに思い付いた嘘にしては、なかなかリアリティがあるんじゃないか?
我ながら上手いと思いつつ右腕を引っ込めようとしたら、なぜかまた掴み直された。
「マジかよ、ちゃんと処置しねーとクセになるぞ。ちょっと見せてみ。」
「いやいやいや、見なくていい、ぜーんぜん痛くないから!」
「嘘つけ。スナップなんて普段やりもしないことするからそんな事に……つーか、今日なんで長袖着てんの?もしかして夏風邪ひいた?」
「ひいてない!そして勝手に捲るんじゃない!」
ああもう、なんでこんな時に保護者力を発揮するかな!?
俺の長袖シャツを捲ろうとする陸の腕を掴んで引きはがそうにも、モヤシの腕と野球部の腕じゃ力が段違いだ。抵抗するどころか、実にスムーズにシャツは肘まで上げられて―――くっきり付いた痣が丸見えになってしまった。
俺の腕を見て、一瞬時が止まったかのように停止した陸がゆっくり顔をあげる。
「………は?秋人、なにこれ。」
「低っく!お前ってそんな声低かったっけ?」
「ちゃんと答えて。これ、どうしたんだよ。」
「えっと、これは事故って言うか…」
ど、どうしよう。なんかやばめのオーラに圧倒されて上手く言葉が出てこない。
犬飼に助けを求める視線を送ったら、無言で眼鏡を指でカチャッてしてきただけだった。…入学式からずっと思ってるけど、そのカチャッていうのは何なの!?
しかも、実際に割り込んで来たのは助けを求めた犬飼ではなく、暇を持て余していたヴィズだった。
「あーあ。それ、聡が掴んだ時のやつだな。」
「な、なんでそれを……また俺の頭の種を使ったな!?」
「使ってねーよ。お前は気付いてなかっただろうけど、俺もあの場に居たから知ってる。
それにしても、あれっぽっちで、そんな気色悪い色が付くのか?人間…特にオリジンってのは脆いんだなあ。お前の情報にあった、ほらなんだっけ……モヤシ?」
「誰がモヤシだ、全オリジンに謝れ!」
「あてっ!」
しまった、勢いで自分と同じ顔の頭をはたいてしまった。
びっくりするくらい良い音が鳴ったのはさておき、わざとらしく不満げに口を尖らせた自分を見る羽目になるなんて、これこそ気色悪いってもんだろう。
(しかも今、こいつも花壇にいたって言ったよな?おかしいな、俺たち以外に人の姿は無かったはずだけど……。)
俺が思い出そうと必死になる一方で、ぐるりと腕を一周して痣を観察した陸が「マジだ、指の跡になってる」と呟く。
「待てよ、掴まれただけでこんな痣になるってことは、米山君はラミアなのか?」
「…ああ。模試の結果にも『米山 聡 (L)』と書いてあったからな。人は見かけにはよらないと言うものだ。」
「でも、スズメもあの見かけであの力だから何とも言えないよな。そういや…米山君のハンドボール投げの記録は俺より短かったけど、加減してたとか?」
「その可能性は低いな。学期末の体育、しかも計測だぞ。」
…なるほど、落ち着いて考えれば犬飼の言う通りだ。
今回の記録は体育の成績にも反映されるものだから、学年上位を狙う米山君にとって加減する理由にはならないはず。この犬飼でさえ、徹夜で投球フォームを研究したくらいなんだからな。
「単にラミアの能力の個人差ってやつ…にしても、秋人より短いってのはなあ……なんだかなあ。」
「どうもありがとうな、濁してくれて!お陰様で、俺はやっぱり加減した説を推すことにするわ。」
「じゃあボール相手は加減できて、人相手じゃ加減出来なかったって?
……ほらな、やっぱりこういう事になるから、『一緒に』なんか無理だよ。」
「ん?」
小さくて聞こえなかったけれど、陸は後半なんて言ったんだろうか。俺の痣を見ているはずなのに、どこか遠くを見るような目をしている。
もう一度声をかけようとしたが、陸が顔を上げる方が早かった。
「―――と、まあ、この痣の文句は明日米山君に直接言うとして、だ。俺、米山君のこと全然知らねーからさ、Dクラの野球部員に話聞いてみようと思う。なんかのヒントになるかもしんねーし。」
「あ、ああ、うん。お願い。消えたいって思うほどの理由も気になるしな……って今気付いたけど、そんな心境で学校に来るか?」
「試験前だし、勉学に厳しい家庭だという話だ。簡単に休むようなことはしないんじゃないか。どうなんだ、妖怪。」
「ん?あ、俺に聞いてんのか、妖怪じゃねーっつーの…。何度も言ってるけど、聡は学園にいる。それは本当だ。」
『俺』のきっぱりした口調に、俺たちは顔を見合わせる。ヴィズの言う事だから、と疑いたくなるが、残念ながらこの場において1番大きな情報源であるのには間違いないのだ。
……そう、例えそいつが、間抜けな声を出して大あくびしたとしても。
「ふわぁー……今日は時間切れだな。俺はもう帰る。」
「帰る?なんだよ急に、どこに帰るんだよ。こんな時間だし、まさか…」
「心配しなくても、人を喰いに行くわけじゃねーよ。単に体力の限界で、この姿を維持できないだけ。」
そう言ったそばから、『俺』の輪郭が不安定にゆらめいた。
息を飲む俺達を置いて、『俺』は部屋の奥へと歩き出す。
「お、おい、ちょっと待て。」
慌てて立ち上がった陸が、その背中に向かって手を伸ばすが―――陸の手は『俺』の背中に触れるどころか、突き抜けたではないか。
「っ、」
「なーに今更ビビってんだよ。俺はヴィズだぞ。」
『俺』が窓の網戸を開けると、珍しく強い風が吹き込んだ。
その姿は一層揺らいで、乱される髪の隙間から覗く、2つの目がぎらりと光る。
ーーー怖い。瞬時に、そう思った。
「『また明日』と言えばいいんだっけ?この姿で会いに来るから逃げるなよ、日野。」
「あ……」
声を絞り出す間も無く、まるで夜風に溶けるように、ヴィズの姿は消えてしまった。
すぐに窓に駆け寄り、外を覗くも姿は無い。
(今さら言われなくたって、お前がヴィズだってことくらい知ってるよ。)
知ってるけど、まるで人間みたいに話したり、笑ったりなんかするから、よく分からなくなるのだ。
人間とは全く違う、恐るべき存在のはずなのに……なぜあのヴィズはわざわざ人間の真似をして俺たちに近付き、米山君を探せと言うのか。
(人間の外見を真似しているだけならーーー本当は、どんな姿をしてるんだろう?)
答えの見つからない疑問ばかりが、胸の中に積もっていく。
誰もが立ち尽くす部屋の中をただ、甘い香りだけが漂っていた。




