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日野はソレをゆるさない  作者: モモスケ
期末ピンチ&ラン!!《前》
60/82


「それは多分おまじないだね。」


「おまじない?」


 あまりピンとこない単語を復唱すると、体操服姿の佐々木さんは腕組みをした。


「そーそー、自分の身体の一部を相手に食べてもらうっていう、ちょっとヤバめの女子がする恋愛成就のおまじない。」


「なにそれのろいじゃなくて?」


「『まじない』って書くんだし一緒でしょ。もし私なら、バレないようにひと口で食べれるやつにするけどね。」


「はぁーなるほどその手があったか……じゃなくて、それ食べたって必ず成就するわけじゃないだろ。髪の毛なんか入れたら逆に嫌われるって思わないの?」


「もうそんなの考えもしないでしょ。ひたすら好きー!って気持ちだけで動いててさ、髪の毛はその念の媒体ってわけ。」


「媒体とか怖っ!!」


 恋は盲目ーだとか、おまじないーなんて可愛いもんじゃないぞ。暑いはずなのに急に寒くなった背中がぶるりと震える。

 佐々木さんは日焼けした肌に映える、白い歯を見せてニヤニヤ笑った。


「媒体ってのは呪詛の力を増幅させるアイテムだからね。ついでに自分の一部が相手の胃の中に入りさえすれば『自分は彼の一部になった』っていう既成事実も生まれて更にヒートアップ……果てしない愛憎の沼。」


「もう完全に呪詛って言っちゃってるよ。良かった、俺食べてたら呪われるところだった。」


 しかも相手を手に入れるんじゃなくて、自分を相手に押し付けていくスタイルときた。……まあそうか、そもそも呪いって一方的なものだもんね。


 ピッ!という鋭いホイッスルの音に目を向けると、スズメが体育期末テストの1つ、ハンドボール投げの記録を測定しているところだった。

 青空の中、白いボールはぐんぐん距離を伸ばして―――「羽賀、記録42メートル!」という体育教員の声にぱっくり口が開く。


「あれ?俺の何倍かな?」


「さっすがラミア。そうだ日野知ってる?去年の1年生さ、体育の期末テストで歴代1位・オール新記録出した人がいるんだよ。」


「マジで?すげーな、他にもラミアいるのに歴代1位ってどんだけ………いや、待てよ。」


 去年の1年生ってことは、今の2年生のことだ。俺は2年生の知り合いは多くないが、中でもとびきりの身体能力を持った人を知っている。


「それって朝原先輩?」


「ピンポーン!あのピンク先輩すごいよね、なのにどの部活にも入ってないなんて勿体無い。陸上部来てくんないかなー?」


「言われてみれば勿体無いような気がするけど、あの人たちが入った部活は希望者が殺到しそうだ。主に女子の。」


 ―――ああ、だから朝原先輩だけじゃなくて瀬谷先輩も結城先輩も部活には入ってないんだろうか。

 佐々木さんも俺と同じことを考えたんだろうか、「まったく、たかが容姿で不自由だね。」と呟いた。


 再びホイッスルの音がして、今度は見知らぬ生徒がボールを投げた。きっと、Dクラスの生徒だろう。実技系の授業はこうして、他クラスと合同で行うこともあるのだ。


「不自由と言えば、日野の貧血体質もそうだけどさあ。」


「? ひんけ…あ、ああー!貧血ね、うん。」


「共存学の筆記、勉強してる?実技出れないから筆記に単位かかってんでしょ。」


「そうなんだよねー、なのに昨日もプレゼントを全部開けた達成感で寝ちゃったんだよねー…。」


 深夜2時に目を覚ました時には俺は部屋に1人きりで、ローテーブルに突っ伏して寝ていた。

 テーブルの上には洗濯された俺の制服が置いてあったので、先輩は俺が寝ているのを見たはずなんだけど。


「先輩もどっか行く前に起こしてくれればいいのに。」


「ていうか、結城先輩に教えて貰えばいいじゃん。勉強。」


「そっ…んなの無理だよ何言ってんの!」


「無理じゃないでしょ、あの人『特A』なんだから頭良いでしょ。」


「そうじゃなくて、俺が先輩に勉強を教わるっていうのが無理なの!なんだろう、こう……親密度?みたいなやつがあって初めて出来るやつだろ。」


 『親密度』を表すジェスチャーが思いつかず、手を上下にバタバタさせている俺を見た佐々木さんは、ぱちりと瞬きをした。


「日野と先輩は親密じゃないの?」


「ないない。」


「なにさ、じゃあ日野は親密度のカケラも感じてない人が貰ったプレゼントを開けるの、一晩中手伝ったの?」


「そ、それは…あー…」


 純粋に投げられた疑問が、驚くほどストレートに突き刺さった。崖っぷちに追いやられたような気分になるのはなんでだろう。


「じゃあカケラくらいは…あるのか、な…?消しカスぐらいかもしんないけど……でもそうじゃなくて、俺も部屋のスペース狭くなるの嫌だったしさ……受け取れって言った責任があるし……。

と、とにかく無理!どうせ断られるだろうし、俺には学年3位の犬飼様が付いてるからな―――って佐々木さーん聞いてるー?なんで余所見してんのー?」


「日野。目だけで右見て。」


「なに?目だけ?」


 突然小声になった佐々木様は、突然難しいことを仰った。

 目だけで右を…ってことは顔は動かすなと言うことだろうか。俺のこのテンションは一体どこに置けばいいんだ―――さっきまでの空気の差に困惑しながらも言われた通り、どうにか目だけを動かす。

 

 辺りには俺たちと同じくハンドボール投げの測定を終え、時間をつぶしている生徒たちがいるだけだ。一体、佐々木さんは俺に何を見て欲しいんだろう。

 更に見渡そうとして眼球がりそうになった時―――生徒達の陰から、こちらをジッと見つめている人物の姿が目に入った。

 色白、痩身、丸っこいフレームの眼鏡をかけた男子生徒。…そこまで分かったらもう十分だ、即座に視点を佐々木さんに戻す。


「な、なんかすげえこっち見てる人いる。」


「やっぱこっち見てるよね?日野がゴニョゴニョしてたあたりから、あのまま動かないんだよ。」


「俺あの人と会ったことある。昨日廊下からAクラスをガン見しててさ、誰か呼ぼうかって声掛けたら、うざいって逃げられた……。」


「はぁ?なにそれ。あいつ何してんの?」


「佐々木さんはあの人のこと知ってる?」


 くいっと片眉を上げたまま、佐々木さんは頷いた。


米山よねやま。Dクラスの米山よねやま さとしだよ。部活の時、グラウンドの横の花壇でよく見かける。」


「花壇?」


「そー。Dクラスの部員が、米山は園芸部なんだって言ってた。」


「へー、うちの学校って園芸部もあるんだ。……で、米山君はなんで俺たちのこと見てるんだ?」


「さあ。雰囲気的に、日野の友達ではなさそうだなって思ったけど。Aクラスをガン見してたとは怪しいやつ。」


 コッソリ教えてくれたのはそれが理由だったようだ。さすが園田至上主義者でありAクラスの守護神・佐々木将軍……とはいえ、ずっとこのままガン見されてるのも居心地が悪い。


(話しかけたらまたうざがられるかな。なんか繊細そうだもんな。)


 もう一度コッソリ盗み見れば、口元だけ小さく動いているのが見えた。なんて言ってるのか読み取ろうとしたけど、動きが早くて全く分からない。

 そういえば話した時もすげえ早口だったな、と思い返した矢先、「日野見過ぎだって!」と佐々木さんの声が飛んできた。


(やべっ!)


 慌てて口から視線を逸らそうとしたが、時既に遅し―――米山君の細い目とバッチリ目があってしまった。


(ば、バレたぁーー!)


 ちょ、普通にバレたんだけどどうしようこれ。ほんっと俺の偵察能力ヒドイな!?

 米山君が先に目を逸らしてくれることを願ったが、相変わらず微動だにしない。


「ど、どうもー…?」


「ちょっと何にこやかに手振ってんの!」


「だって耐えられないよこの状況!」


 とは言え、米山君が振り返してくれるなんて微塵も期待はしてな……ああ、また何か呟いてる!絶対うざいって言われてる気がする!


「…何してるんだ。」


「ヒッ!?びびった犬飼、いつから隣に!?」


「たった今。羽賀が今日の昼食は何を食べるかと言っていたぞ。」


「あ、ああそうだな―――ん?」


 ザリ、と地面を擦る音が覚えのある方向から聞こえてきた。

 見ればさっきまで直立不動だった米山君が、オドオドと後ずさりしているではないか。


「米山君急にどうしたんだ?」


「さあ……あ、走ってった。なんだったのさ一体。」


 額に手をかざしながら、米山君の後ろ姿が消えるまで見届けた佐々木さんは大きく首をかしげる。

 彼が何をしたかったのかは謎だが、鋭い視線が消えたことにはホッとした。


「ええーっと、ごめん犬飼。昼飯の話だったよな?暑いし、たまにはあっさりした和食セットなんていいよなー。」


「なら俺もそうする。羽賀はこのあと血液パックを買いに購買に行くらしいから、その時食券を買っておいてくれるそうだ。」


「マジで、助かるな!なら俺たちは全力で席を取ろう。」


 こくりと小さく頷いた犬飼は黒縁眼鏡を押し上げる。その目の下の皮膚は薄っすらと、くすんでいた。


くま……犬飼ちゃんと寝てる?」


「大丈夫だ。昨日少し徹夜しただけで、他の日はちゃんと寝てる。」


「ならいいけど…。勉強しすぎて体調崩さないようにって、瀬谷先輩も心配してたぞ。」


「そうか。気をつける。」


「そしたら、とりあえず暑いからさー、木の陰に移動しようよ。ここは日が当たるようになっちゃってダメだ。干からびてしぬ。」


 佐々木さんが指差した先―――グラウンドの傍には、大きな木があった。周辺の木より幹が太く葉が大きくて、緑が一層輝いている。

 みんなからは離れてしまうけれど、集合のホイッスルさえ聞こえれば問題ないだろう。


「あそこに、あんな大きな木あったっけ?」


「さあねー?私も今そう思ったけど、普段木なんて気にしないし?」


「『き』だけにな。」


「「……………。」」


 犬飼がボソリと呟いたジョークに、俺と佐々木さんは押し黙る。誰だ、こいつの心配したやつは。全然元気じゃねーか!


 木をめがけて歩いていると、ホイッスルの音の後に「米山、記録19メートル!」という声が聞こえてきた。

 名前に反応してしまった首を向けると、シンクロしたかのように米山君も俺を見て―――やっぱりまた、睨まれてしまった。




◆◆◆




 相変わらず昼食時になると食堂は大混雑だ。

 生徒達が席取りに苦戦する中、スズメが前もって食券を買っていてくれたおかげで難なく席を確保することができた俺達は、今日の和食セットのメイン、和風ハンバーグを口いっぱいに頬張る。

 峰ヶ原の学食は何を食べても美味しいけれど、体育の後は格別だ。


「そういやスズメ、さっきの授業すげえ記録出してたよな。」


「そ、そんなことないですよ。私より遠くへ飛ばした方もいましたから。」


「俺なんて22メートルだよ?高1のオリジンの男子平均は…えっと…」


 斜め前へ目配せすると、犬飼はハンバーグの上に乗っていた大葉を凝視するのを止めてサラっと答えた。


「約25メートル。」


「げっ、平均もいかなかったのか。まじか…。」


「佐々木が日野が投げるのを見て『体育の時の日野ってさぁ、全力じゃない感じするよねー。』って言ってた。」


「あれがモヤシの全力だったんですけど!?つか声マネうまいな!」


「それは伸びしろがあるって言おうとしたんですよ、きっと!」


「ひええ、スズメさん優しい。」


 右腕にプール掃除の後遺症が残っていたってのはあるが、テストの時はそんなこと言ってられない。あれは確かに俺の全力投球だったはずだ。運動が得意な人から見たら、もっといけるだろ!って思われるような記録かもしれないけどさ。


「いやでも、ヤバいよな…そろそろ筋トレくらいした方がいいのかな。ちなみに犬飼は何メートルだった?」


 犬飼は俺と同じく運動が得意ではない。つまり俺とお前は同士のはずだ―――そう期待を込めて尋ねると、犬飼はすこし間を溜めてから、眼鏡をカチャっと動かした。


「…27メートル。」


「マジで!?まさかの平均越え!?」


 驚きのあまりでかい声が出てしまった。

 俺の声に驚いたらしい隣の人が肩を揺らしたし、後ろからは食器をひっくり返したような音がしたので慌てて口をつぐむ。


「ええーっ腕の太さあんま変わんないのに、意外と腕力あるんだな。」


「あれはコツがある。腕力じゃなくて投げる角度や、重心の移動、手首のスナップなんかがポイントだ。」


「でた、手首のスナップ…。」


 頭の中に昨日の結城先輩が浮かんできた。あのパッと手を引っ込めたのは本当に、なんだったんだろうか。


「ふふ、犬飼君は前日に熱心に調べていましたもんね。」


「ああ、うっかり夜遅くまで研究してしまった。」


「夜遅くってまさか隈の原因それじゃないよね?―――おい、なんだその得意げな顔は。」


 にっと口角を(普段と比べると比較的)持ち上げた犬飼は、一口大に切ったハンバーグを大葉できれいに包んで口に入れる。

 否定しなかったってことは、そういう事と考えていいんだろうか。まさか、体育の実技テストの勉強をしてくる生徒がいるなんて驚きだが、実に犬飼らしいとも言える。


「ほんと、お前には敵わないよ。期末は種族混合で学年1位狙えるんじゃない?というか、取ってほしい。」


「わ、私も同じ事を思いました!」


「…俺は現時点で『特A』に入れるくらいの成績が残せればいい。」


「それって、どのくらいです?」


「上位3位以内に入れば安全圏だと思う。あくまで学力で選ばれる枠の話だが。」


「へえ!じゃあ犬飼は今んとこ―――」


 『クリアしてるってことかすげー!』って言いたかった俺の口は、背後で鳴り響いた音によって緊急停止した。


(……えっ?)


 同じく固まりかけた首をなんとか動かして後ろを振り向けば、何というデジャヴだろうか―――立ち上がってテーブルに両手をついていた米山君も、同時にこちらを振り返った。


(米山君!?後ろに座ってたのかよ、全然気づかなかった!)


 振り向く寸前の姿勢からして、さっきの音は米山君がテーブルに両手を叩きつけた音だったんだろう。テーブルクロスの上にはスープやらおかずやらが飛び散って、側に積まれた教材の上にもかかってしまっている。


「よ、米山君?ごめん俺達うるさかった?」


 座ったまま、高い位置にある白い顔を見上げると、米山君は目尻を震わせながら睨みつけていた。

 俺ではなく――――――犬飼を。


「いい加減にしろよ犬飼 翔真…っ!」


「!?」


「…何が。」


「その態度がだよ!見てるとい、イライラするっ…たまたま良い成績取ったからって調子に乗るなよ。」


「ちょ、よねや」


「うるさい!そうやってずっとば、馬鹿な奴らとふざけてればいいよ!ひ、人のこと見下しやがって…そうだろ、そうだよ、だから僕が……」


 一体何が起こってるんだ?唾を飛ばしながらまくしたてたり、小声でボソボソと呟いたりを繰り返す米山君は、まるでネジが外れてしまったかのようだ。

 肩で息をする彼の一方で、犬飼は顔色ひとつ変えずに黙っている。


「な、何か言えよ…ロボット!」


「…………。」


「本当のことだから言えないの?…はは、もしかしてオリジンなのに上位になれたのも、何か裏があるんじゃない?」


「おい!それって犬飼がズルしたって言いたいのか!?」


 ―――今の言葉にはカチンときた。

 さすがに我慢できず立ち上がると、至近距離で米山君と向かい合う形になった。のけ反るように米山君が後ろに下がり、テーブルにぶつかる。


「なっ、なんだよ、君には関係ないだろ。」


「そっちこそいきなり何だよ。犬飼はなぁ、俺たちの見えないとこですげー努力してんだぞ。なのに自分の成績を自慢したり、調子に乗ったりもしない。」


「そっ、そうです!犬飼君はロボットなんかじゃありません。どうしてそんなに酷いことを言うんですか。」


「う……うるさい!うるさい!」


「あっ!ちょっと!!」


 テーブル上の教材を引っ掴んだ米山君は、引き留める間もなく走り去っていってしまった。

 昼食のトレーを手にした生徒達が、突っ込んでくる米山君を避けようと悲鳴をあげる中、自然とスズメと顔を合わせる。そして、2人そろって下方に目をやれば、米山君がいた方を見ていた犬飼も遅れて俺たちを見上げた。


「犬飼、大丈夫か。」


「…もの凄く早口だったな。」


「え?…ああ、うん。すげー早かった、な?」


「聞き取るのが大変だった。」


「うん……」


 ……えっ、それだけ?今の騒動の感想それだけ?おまっ、もうちょっと言うことあるんじゃない!?

 再びハンバーグをつつき始めた犬飼に突っ込みたいけれど、どんなテンションでなんて言えば良いか思いつかない。

 とりあえずスズメに習って俺も席に着くと、息を潜めていたギャラリーたちが徐々ににぎやかさを取り戻していく。


「びっくりしたー。今の誰?」


「Dクラの米山でしょ。ちょー根暗のガリ勉で、いっつも1人でブツブツ言ってんの。」


「マジで!?こわー。」


「言われた方もさぁ、なんで黙ってんの?」


「余裕って感じ?頭がいい奴は人と感覚が違うんだろ。」


(なんだよ、みんな犬飼のこと知らないくせに。)


 こういうのってすげえ苦手だ。無視するのが一番だって分かってるけれど、込み上げるイライラでハンバーグの味もよく分からなくなる。

 

 ああくそ、と胸の中で愚痴っていると、バキン!という音がした。

 顔を上げたら、スズメの持っている箸がポッキリと折れていて……ひとまず、スズメの隣でヒソヒソしてた集団と、俺の心がそっと静まった。


「ひゃっ、ごめんなさい!私新しいお箸とってきますね。」


 テーブルの上に跳ねた箸の残骸を、スズメよりも早く犬飼の手が拾い上げる。


「…羽賀。日野も、気にするな。こういう事はよくある。気にしてたらキリがない。」


「でも!」


「犬飼はいきなりあんなこと言われてムカつかないのかよ。」


「腹が立つというか……驚いた。」


「そりゃそうだよ!失礼にも程が、」


「言い返した人がいたのは初めてだったから。」


「んえっ?」


 予想外の返答に声が裏返った。

 ハンバーグを細切れにしていた箸を止めた犬飼は一瞬だけこちらを見ると、また顔を伏せてポツリと呟いた。



「……ありがとう。助かった。」



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