表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
日野はソレをゆるさない  作者: モモスケ
人を呪わば、穴二つ
5/82

 ぶつり、と皮膚が破れる音がした。


「いっ……!?」


 首から鋭い何かが抜かれ、すぐに温かくて湿ったもので塞がれた。じゅる、と液体をすするような音がして、身体からゆっくり力が抜けていく。


(……あれ、変だな、まさか身体までバターになったのか?)


 じんわり痺れていく頭が、すっとんきょうなことを真面目に考える。ただ分かるのは、首に男の柔らかい髪が、体温が、息が―――唇があたる箇所が、すごく熱い。


(外はこんなに寒いのに、おかしいな。こんな寒い中で、俺はいま、何をされてるんだ?)


 なんで―――――なんで、血を吸われてるんだ?



「えええええええええええ!!!???」


「!?」


 夜の公園を、俺の渾身の叫びが突き抜けた。俺の首元から離れた男は、一瞬驚いた顔をしていたが、すぐに不機嫌そうに血の付いた口元を歪ませる。


「うるっせーな、喉噛みちぎるぞ。」


「いやいやいや、何おま……はっ?なんでお前俺の血吸ってんの!?ラミアかよ!?」


「ラミアだけど。」


「だからラッ!……え、ラミア、なの?」


 男は返事しない代わりに口元を指で拭い、さらに指についた血を舐めとった。恐る恐る俺も自分の首元に手を持っていくと、ぬるっとしたものが指につく。……ま、マジで血が出てるんだけど。これどうしよう、急いで病院に行かないと、大量出血で死ぬんじゃないか?


「ちょ、ここ、これ、どどど、」


「何の生き物だお前は。そんなのすぐ止まる。」


 ……あ、ほんとだ。もう一度首に触れてみると、溢れた血は急激に乾いて皮膚にこびり付いているが、新しい出血はないようだ。

 男は息を吐きながら立ち上がった。…想像よりも背が高い。長い脚の膝まで丈があるコートの雪を払い落とすと、再び俺を見下ろした。


「もういいわ。次からもっと考えて行動しろ。じゃーな、馬鹿。」


「お、おい!俺は!?」


「知るか。這って帰れば?」


 ……え、あいつ本当に帰ったんだけど。

 1回も振り返ることなく颯爽と立ち去っていきやがったんだけど。人の血を吸うだけ吸って、帰ったんですけど!?

 いますぐ追いかけてブン殴ってやりたいのに、まだ足に力が入らなくて立ち上がれない。さっきまで熱かった身体はウソのように、寒風と雪に晒されて冷えていく。


「し…信じらんねえ……。」


 ……これぞまさに、人生2度目の最悪な日だ。神様、あんまりです。

 もしかして、今朝カップルにかけた呪いのせいだろうか。『人を呪わば穴二つ』なんて言うが、まさにたったいま俺の首には穴が二つ、あけられたというワケだ。マジでほんとに笑えない。


「はっくしゅん!……くそラミアーッ!次会ったら絶対殴ってやるからなああ!!」


 ―――やっぱりラミアと関わると、ロクなことがない!!



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ