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日野はソレをゆるさない  作者: モモスケ
303号室の同居人
17/82

 悪夢のような入学式を終えた放課後、俺は陸とともに寮へ向かっていた。

 保健室で手当てしてもらったおかげで、自力で歩けるくらい足首の痛みはマシになったが、まだ心のダメージは残っている。

 ………おもに、ずっと爆笑してる幼馴染のせいだ。


「……陸、いい加減笑うのやめろよな!」


「あははは、ひーっ、ごめん、でもあれは笑うでしょ!お姫様抱っこは笑うでしょ!」


 こいつまだ笑うか。体育館中が固まってる中でも1人だけ盛大に爆笑してやがったくせに、本人を見た途端またぶり返したらしい。

 この反応を見ると、入学式の後は各自解散のスケジュールで本当によかったと思う。明日になったらみんな記憶喪失になってればいいのに。


「はぁ、笑った……でも、すごいじゃん秋人。ちゃんとラミアの子とも仲よくできてさ。」


「俺さ、知らない間にラミアって種族に対して恐怖感というか、拒否感を持ってたんだな。でもスズ……羽賀さんは、俺が思ってたよりもずっと普通の子だったよ。俺はもっと知るべきことがたくさんあるって、分かった。」


「確かに、俺もラミアとオリジンって大差ないなってこと、会ってみて初めて実感したかも。まだ初日だけどな。……でもさ、秋人は結局そう言うと思ってた。」


「なんで?」


「お前、昔から結局どんな人でも受け入れちゃうっていうか……そんなとこあるし。」


 ふーん?よく分からないけど、そんなことあったっけ。友達なら俺よりも陸の方が多いと思うけど。

 そう思って見上げた陸は、寮のパンフレットを取り出して道順を確認している。俺は基本的に地図を見ながら真逆に歩いていくような人間なので、ノータッチだ。


「ああ、こっちか。いちいち敷地が広くて面倒だな……そういや、寮の部屋は1部屋に2人だろ?ペアの学年や種族はランダムらしいから、緊張するよなー。」


「そ、そうだった!3年生だとなんか申し訳ないよなあ……受験あるし。オリジンでもラミアでもいいから、優しい人だといいな。」


 そして遊びに連れてってくれたり、勉強教えてくれたり、進路の相談に乗ってくれるくらい仲良くなりたい。

 まだ見ぬ同居人に想像を膨らませながら、大きな木が並んでいる傍を歩く。ちょうど、木の陰で女子生徒同士が吸血しているところを見てしまい、慌てて目をそらした。


 そっか、今度からこれが当たり前になるのか―――やっぱり、まだ慣れるのは難しそうだ。




◆◆◆




 以前の俺は学生寮と聞くと、いつも無機質なコンクリート製のアパートを想像していたが、峰ヶ原学園は違う。


 暖かみのあるオレンジ色の壁と濃いブルーの屋根、ずらりと並ぶ白い窓枠……その外観はまるで、英国のお屋敷のようだ。俺と同じ感想を抱いているのだろうか、周囲では何人かの新入生が口を開けたまま眺めている。


山岸やまぎしです、これからよろしくね。」


 玄関では、管理人である中年の夫婦が出迎えてくれた。優しい笑顔を浮かべる2人に、俺と陸はお菓子を渡しながら挨拶する。


「部屋は間宮君が502号室、日野君が303号室。部屋は基本的に2人で1室なのは知ってるよね?

寮の食堂は朝と夕は提供してるけど、昼は学園の食堂を使ってね。部屋にも簡易キッチンがあるから、自分で作ることもできるよ。お風呂は部屋にあるシャワーか、共用の大浴場を使って。」


「はい。」


「じゃあこれ、部屋の鍵と入寮者名簿。何か困ったことがあったら呼んでね。」


「ありがとうございました!」


 エレベーターがくるまでの間、俺たちは待ちきれずに貰った入寮者名簿へと目を通す。


「ラッキー、俺同室者1年生だ!秋人は?」


「えーっ、いいな!俺は……。」


 えっと、確か俺の部屋は303号室だったよな……303号室を表す四角の枠内に『1年 日野 秋人』、『2年 結城 千隼』と書いてある。


「2年生だ。結城ゆうき 千隼ちはや……結城ゆうき先輩かぁ。どんな人かな、うわー緊張してきた。」


「大丈夫だろ……っと、そうだ、俺このあと野球部の見学に呼ばれてるから、しばらくそっち行ってるな。」


「おお、流石スポーツ推薦。じゃあまたな、頑張れよ。」


 『3』のランプが光るとともに、エレベーターのドアが開く。陸に別れを告げると、ずらりと並ぶ扉の番号を数えながら廊下を進み―――そして、いよいよ『303号室』の部屋の前にたどり着いた俺は、緊張のあまり震える手で扉をノックした。



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