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ユノの神殿

ここは…サラの神殿と同じだわ。

昼間だというのに薄暗く、松明の炎がチリチリと燃えている。

武装した女官がナオミを見てひざまずいた。ナオミは門の前で立ち尽くすアグネスに声をかけた。

「どうしました?怖じけづきましたか?」

アグネスはツンと上を向いて「そんなわけないでしょう!」とムキになっている。

ナオミはクスリと笑って手招きした。

「もう皆さん中でお待ちですよ」

重い扉がギギギと開き、部屋の赤い敷物の上にカノンやエリザベート、シシィが座っていた。

みな緊張した面持ちで入ってきたアグネスを迎えた。

「みんな…ここはエストニアのあの神殿なの?何もかもそっくり同じじゃない!」

「お静かに…マザーがおみえです」

ナオミはアグネスにも座るよう促し、自身は降ろされた御簾の前にひざまずいた。

スススと衣擦れの音がして中の人物が座る様子が御簾ごしに伝わってきた。

「皆さん、このたびのこと…さぞや驚かれたことでしょう。私もなんとか食い止める方法を見つけたかった。でもどうにもなりませんでした。力及ばず申し訳ありません。」

アグネスはハッとしてカノンの方に視線を送った。

この声…聞き覚えがある。

でも、まさか…ね。

どうやらカノンもアグネスと同じ事を考えているようだ。

視線を返してうなずいてきた。

カノンはひれ伏して礼を述べた。

「我々の勘違いとはいえ、数々の無礼おゆるし下さい。テラが無くなった現在私どもが頼りとするはユノ政府のみ、どうぞ我らをお助け下さい」

あの誇り高いお姉様が敵に頭を下げている…シシィにとってそれは衝撃的な光景であった。

「頭を上げてください。竜崎カノン様、あなた方はすでにユノの市民なのです。大統領からユノ市民に向けてメッセージが流されました。これをご覧ください」

巫女達がスクリーンのスイッチを入れた。

大統領が大画面に映し出されている。

「ユノの皆さん、故郷を無くしたテラの難民を我々の仲間に迎えました。彼らは家族を無くし、深い心の痛手をおっています。どうか温かい手を差しのべてください。」

大統領の演説は富裕層と呼ばれる人々の共感をよび、スラム街に住む貧困層からは大層反感をかったのだとナオミが説明してくれた。カノンはこの国の内情を知らなければ、打つ手もないと考えた。

「マザー、どうやらユノとテラはずいぶん政策が違っているようです。我々は今後どのように暮らしていったらいいのでしょう?」

マザーは巫女に御簾をあげるよう指示した。スルスルと御簾が上がっていく。一同息を飲んで中の人物を凝視した。

その人物はここにいるはずもない意外な人物であった。

「サラ様!どうして?どうしてここに?」

カノンは絶句したまま思わず後ずさりした。

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