難民として
カノンは投降を意味する照明弾を打ち上げた。
大統領の穏やかな顔がメインスクリーンに映し出される。
「我々ユノ政府は諸君を受け入れよう。武装解除し、こちらの指示に従うように。」
ユノの空母から次々にガーディアンが飛び立ってこちらに向かってくる。
「みんな…抵抗しないで。今は時を待ちましょう。必ず、必ずまた立ち上がる時がきます。その時までじっと待つのですよ。分かりましたね」
アグネスは心の中で虚しく叫んだ。
「一体いつまで!そんな日が本当にくるの?カイン様…カイン様…あなたがいない世界なんて…」
アグネスは絶望にうちひしがれていたその時、突如として遠くから自分を呼ぶ声が聞こえた気がした。
「姉さん…姉さん…」アラン、そうよ。アランを助けなくちゃ!まだ私にはやることがある。
アグネスは震える気持ちを無理矢理なだめ、ケルベロスを両脇から拘束している黒いガーディアン達をグッと睨み付けた。
空母に着いたテラ軍のガーディアンは次々とユノの格納庫に運ばれて行く。
パイロット達は空母の中にある捕虜収容所に連れて行かれた。
アグネスは魂が抜けたようなエリザベートの身体を支えて、やっとの思いでそこに立っていた。
ざっと周りを見回す。むき出しのコンクリートと鋼鉄で出来た灰色一色の無機質な空間に、不安げなテラ人がひしめきあっていた。
「私達…これからどうなるのかしら?」
普段は気の強いシシィがカノンの袖をギュッ掴んで離さない。
カノンはシシィの細い身体を抱き締めた。
「大丈夫よ…大丈夫…」
その時、ユノ軍の指揮官とおぼしき男が壇上に立ち声を張り上げた。
「テラ軍の諸君、ユノ政府はあなた方を捕虜としてではなく、難民とみなします。残念ながら母なるテラは天災により、もはや以前の楽園では無くなってしまった。我らがマザーはもうだいぶ前からこの異変に気付き、対策を練ってこられた。あなた方は我々ユノが子供を拉致した憎い敵と思っておられたようだが、実のところはユノに避難させていたのです。もちろんテラの人々みな救いたい思いはありましたが、それは不可能だ!お知らせしようにもパニックを起こし、ユノを占領しようとされてもこちらが困る…あなた方はラッキーだ。こうして無事に生きておられる。そうでしょう?感謝されこそすれ恨まれてはたまらない。ここで生きる道を探してください。くれぐれも反乱を起こそうなどと思いめさるなよ。」
みな意外な展開に驚き、どよめきが起こった。
政府の人間とおぼしき人々が現れ、1人1人と面談を行う旨告げると捕虜収容所の個室にそれぞれを案内していく。
「しばらくは反乱防止のために隔離するってわけね」
カノンの言葉にエリザベートは震えている。「エリザベート、心配しないで。大人しく服従すれば乱暴なことはしないはずよ。」
エリザベートは不安げに「ええ…そうね。」とうなずいた。
二人はそれぞれ別の方向に連れて行かれた。みんな…しっかりね!カノンは仲間達の背中に無言で語りかけた。




