特別な存在
アグネスはアランの部屋の前に立っていた。ドアの横には余った段ボールが山積みになっている。
それを少しよけてノックした。
「どうぞ〜。」
アグネスが部屋に入ると、アランはむずかしい顔をしてベッドに座っていた。
「だいぶ進んだわね。でも来週なんだから身の回りの物はギリギリでいいんじゃないの?」
「あ…ああそうだね」アランはまだ封をしていない段ボール箱の中から歯ブラシを抜き取った。
「どうしたの?なんか変よ。引っ越すのが嫌なの?」
アランはブンブンかぶりを振った。
「いや、そんなんじゃないよ。たださ、俺の説明が悪くてヨンを怒らせちゃったよ。」
「何があったの?」
アランはさっきの出来事を話した。
「そっか…確かに私達の配慮が足りなかったわね。ヨンには私からも謝っておくわ。でもまさかヨンが私にヤキモチ妬くなんてね。意外だったなぁ。」
アランはびっくりした顔でアグネスの方を見た。
「そういうことよアラン。可愛いじゃない、私にアランをとられちゃうと思うなんて!」アランは呆気にとられて何も言い返せなかった。
もちろんヨンのことは大好きだが、妹のようにしか思ったことはなかった。
「そんなこと…俺どうしたらいいのかな?」アグネスは困り切った顔のアランを見て思わず笑みがこぼれた。
「いいじゃない、アランはヨンにとって特別な存在なのよ。それって素敵なことだと思うわ。」
アランは照れまくって毛布にくるまってしまった。
「ちゃんとフォロー入れておきなさいよ!分かった?」
アランは芋虫みたいに身をよじらせてうなずいている。
「…それから、私この学院辞めることにしたわ。」
アランはくるまっていた毛布からニョッキリと顔を出し、アグネスの方に向き直った。
「姐さん…なんで?まさかヨンに遠慮して?」
アグネスは近くにあった雑誌を丸めてアランの頭をポカリと叩いた。
「馬鹿ねぇ、そんなわけないでしょ!ちょっと商売を始めようと思ってるの。あっ…先に言っておくけどあんたはここを辞めちゃダメよ!ヨンにこれ以上恨まれたくないからね。」
「そ…そんなぁ。」
しょんぼりしているアランの肩を抱いて「もちろんあんたにも手伝ってもらうわよ!これから忙しくなるわよ。覚悟しておいてね。」と言うと、アランの背中をバシンと叩いた。




