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姉の恋人

アグネスは止めるヨンを振りきってアランを追って校庭に出た。

太陽が顔をのぞかせ、空が柔らかい朝もやに包まれている。

アランはベンチで今朝の様子を思い出していた。

ガラリと窓が開く音がしてアランはアグネスの帰宅を知った。「まったく…今何時だと思ってるんだ?姐さんちゃんと寝たのかな?」

アランの脳裏にアグネスと知らない男が寄り添って寝ているシーンが浮かんで慌てて振り払った。

「どんな男か絶対つきとめてやる!」

アランがそんな決意を固めているとも知らず、アグネスの表情は微妙な翳りを見せていた。

何より気がかりなのはカインの意識が一体いつまでもつかだ。

どうやらカインの話ではアグネスと会うまでは我王の意識が支配していたらしい。

だとしたら、もしかしてカインはもう意識の底で眠ってしまった可能性もあるということだ。

一つの身体に2つの魂!今後どういう風になっていくのかは想像もつかない。

アグネスとしてはカインがいなくなるのはなんとしても防ぎたかった。

そしてもう一つ気がかりなのは、アランの事だ。

新しい任務はテラとユノとの間を行き来してカイン達に物資や情報を運ぶ諜報員だが、表向きは海賊を装っての危険な仕事だ。

もしアランが知ったらきっと反対するに違いない。

アグネスはアランが昨夜つけてきていたことに気付いていた。

ごめんねアラン!

アグネスは心の中でアランに手を合わせた

。今、アランに知られては動き難くなる。

アグネスは火照る頬をピタピタ叩いて気を落ち着けた。

校庭のベンチでホウキを持ったまま座りこんでいるアランの寂しげな背中を見つけ、アグネスは立ち止まった。なんて声をかければいいの?

いざとなると言葉が見つからない。

アグネスはアランの隣に無言のまま腰かけた。

「なぁ姐さん。俺の事、弟だと思うなら本当の事を教えてくれよ。あの日一体何があった?」

アグネスはビクッと肩を震わせた。

「あの日?」

「ああそうさ…あの玉ねぎを買いに街に出た日の事だよ。それから昨夜こっそりどこに行ってたのかも教えてくれ!」

アグネスはアランの迫力にたじろいだ。

「そ…それは…やっぱり言えないわ」

アランはアグネスの肩を揺すぶった。

「どうして?なんで言えないんだ。俺は姐さんが誰かを好きになってもそれは仕方ないと思ってる。俺は姐さんに幸せになって欲しいんだよ。姐さんが惚れた男に俺を紹介してくれよ」

アグネスは目をふせて苦し気にうめいた。

「…出来ないわ」

「どうして!そんなどうしようもないヤツなのか?俺に紹介もできないほど…だったら俺は反対だ!そんなヤツに姐さんを渡せない。これからは俺がしっかりガードする。そのつもりでね!」

アランはアグネスにそう宣言するとスタスタと林の方に行ってしまった。

取り残されたアグネスは途方にくれながら小さくなっていくアランの後ろ姿を見つめ、ため息をついた。

「ああもう!どうしたらいいの?きっとまたつけてくる気だわ。カイン様に相談してみよう…」

アグネスは重い足どりで厨房に戻って行った。

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