狂った王様
アグネスはあっという間の出来事に言葉を失った。
メインスクリーンで我王の青ざめた顔が映し出される。
「テラが…テラが…ユノは知っていたのか?」
アグネスはやっと我に返りカインに通信をつなぐ。
「カイン様…我々はどうすれば?もう守るべき故郷も無くなってしまった…」
カインからは何の反応も返って来ない。
代わってカノンの通信が流れてきた。
「不本意ですが…投降するより他ないでしょう。」
その時、我王の狂ったような叫びが響いた。「ユノの仕業だ!ユノが我々のテラを破壊した!!この悪魔め…ウワアアア」
「我王落ち着け!」
カインの制止を振り切り、たった一機でジュピターは敵陣に向かって行った。
「やめろー!我王ー!」
我王の乗るジュピターのかかとが赤く点灯している。自爆装置が作動した。
「バカヤロー!我王、俺達をおいていくなー! 」
ジュピターは火の玉となり、ユノの敵陣に突っ込んで行った。
カインは必死で後を追う。
カインはユノの集中放火を浴びながら我王と過ごした日々を思い出していた。
「俺達…ここまでなのか?いや!まだやらねばならない事がある。我王!お前はテラの希望だ…死なすわけにはいかんのだ!」
カインはジュピターを羽交い締めにした。
カインの乗るジュピター2号機にも引火した。もう猶予はない。
ジュピターの背中にある強制脱出装置のボタンを押し、自らも脱出した。
そのわずか数秒後、物凄い爆発音と供にカインと我王は宇宙空間に投げ出された。
アグネス達は遠く離れた場所で、2体のジュピターが爆発する様をただ呆然と見ていた。皆を制止していたカノンは声もなく泣いていたが、皆に通信を開き宣言した。
「みんな良く聞いてちょうだい!ユノに投降します。命を無駄にしてはいけません!死んでいった人々の分も生きなければ…ユノに下ってもテラ人である誇りを持ち続けるのです!いいですね?」
皆のすすり泣く声が聞こえる。
カノンは自分に言い聞かせる。
「しっかりしなければ…これから本当の戦いが始まる。お父様、どうか私を守ってちょうだい」
カノンは自分のために泣くのは今日で最後にしようと心に決めた。




