地獄の案内人
アランのような学院の下働きは下流階級といえどその生活圏は上流階級の中にある。
このようなスラム街に立ち入るようなことは今まで一度も無かった。
「綺麗なのは表面だけか…クソ!嫌な世の中だぜ。俺が住んでたテラってとこは一体どんな世界だったのかな?姐さん教えてくれよ!姐さーん!俺を置いてどこにいっちまったんだ!姐さーん!」
「うるせぇな…誰だよお前。ここはオラのねぐらなんだよ!その足どけてくれ…」
周りのガラクタと同化していて気付かなかったが、そこら辺のボロ切れを張り合わせたような服らしきものを纏った小さな老人が物陰からニュッと顔を出した。
その老人はアランの姿を見た途端「ギャアアバケモンじゃ!なんまんだぶなんまんだぶ。どうかオラを食わないで下され。オラには寝たきりのかかあがおる!オラがいなけりゃアイツは1日だって生きていけねぇ。頼む、命だけはお助けを〜!」と命ごいを始めた。
アランは平伏した老人の前にかがみこんで、出来る限り優しく声をかけた。
「驚かせてすまなかったな。俺はセントレイノルズ学院の用務員でアランっていうんだ。こんな姿だが別に怪しいもんじゃねぇよ。ちょっと人を捜してるんだがあんたこの辺のことは詳しいかい?」
「へ?へい、オラは先祖代々このレッドジャングルに住んでますから」
「この辺はレッドジャングルっていうのかい?」
「へいさようで…。ここはスラムの中でも最下層、あなたさんがお探しの姐さんはおりますまい。」
アランは怪訝そうに訊ねた。
「どうしてそう言い切れる?」
すると老人はスッと萎びた枯れ枝のような腕を伸ばして手を広げた。
アランはチッと舌打ちすると、その掌に銅銭を一つ乗せてやった。老人はニヤリと笑い銅銭をしまいこむと、周りをキョロキョロ見回した。
「旦那、黒い羊飼いって連中をご存じで?」「ああ…あの武装集団か?」
「そうそう、それですよ!その姐さんとやらはもしや…テラのお人では?」
「………」
老人はやっぱりといった顔でうなずいた。
「だとしたら間違いない、奴らの仕業です。奴らのアジトに案内してもいいですが…今更もう手遅れかも?」
アランは老人の襟首を締め上げた。
「なんだと!もう一回言ってみろ!」
「あああ止めて下さいよ旦那〜苦しい…うう」
「今すぐ案内しろ!今すぐにだ!」
「アワワワ、分かりましたよ。そのかわり」
老人はまた掌をアランの前に差し出した。
アランは銀貨を一つ乗せると老人は指を2本立てた。
「図太いヤツ!おまえの名前は?」
老人は黄色い歯を見せてニカリと笑った。
「死神のボロ…ここの連中はそう呼びます」「死神…か。おまえにぴったりの名前だな」クククと妙な笑い声をたてるとボロはアランについて来るよう言い、まるで迷路のようなスラム街をまるで滑るような速さで進んで行った。




