愛してる
アグネスの肌がむき出しになり、男達は先を争って食らい付こうとした。
その時、ひとつの影が男達の前に立ち塞がった。
「お前達、その女は俺のものだ。どいてもらおう」
「なんだとこの野郎!こいつはな、穢れたテラの生き残りだ。黒の羊飼いの生け贄なんだよ!お前の出る幕じゃねぇ、大人しくあっち行きな」
男は指をポキポキと鳴らした。
「どうやら口で言っても通じないらしい。仕方ないな」
男は指を立て、かかって来いと挑発した。
野獣と化した男達は一斉にその男に飛び掛かって行った。
男はあっという間に男達を一撃で倒していく。
それを目の当たりにした残りの連中は一目散に逃げて行った。
男は不思議な青い髪をかきあげて、アグネスに自分の上着を着せ掛けた。
「あんなクズにやられるなんて…ずいぶん腕が鈍ったなアグネス」男はアグネスをひょいと抱き上げ、路地の間を駆け抜けて行った。
「うっ…痛ぁ。ここは?」
アグネスはやっと意識を取り戻し、周りをキョロキョロ見回した。小さな部屋だが机もあり、書棚には隙間なく本が立ててある。
アグネスはベッドから降りようとして自分が何も身につけていないことに気付いた。
「ええっなんで?私…八百屋で玉ねぎを買おうとして…それから…?」
「お前は男達に犯されかかったんだよ。ずいぶん油断したもんだなアグネス。ユノはそんなに平和なのか?」
アグネスはシーツをまとったまま、その愛しい人の胸に抱きついていった。
「カイン様!…ああカイン様!夢じゃありませんよね?」
カインはアグネスの顎を引き上げ、その唇にキスした。
愛している…
カインは想いのすべてを込めて柔らかい唇を貪った。
いけない…!俺は…
カインは理性を取り戻し、アグネスに背を向けた。
「すまない…取り乱してしまった。安心して休め。後で送ってやる」
「あの…あのカイン様…我王様は?ご無事ですか?」
「………」
「カイン様?」
「後で説明する!」
そう言い残し、カインは部屋から出ていった。
独りのこされたアグネスはまだ感触の残る唇にそっと指を触れ、愛しい人の面影を想い浮かべた。
「生きていた…生きていてくれた。」
アグネスの瞳から真珠のような涙がこぼれおちた。
その頃学院では、なかなか帰らないアグネスを心配してアランが街まで探しに来ていた。行きつけの八百屋のおかみさんにアグネスを見なかったかたずねると、来るには来たが、何も買わずすぐにいなくなったとの事だった。
アランは嫌な予感がして店の周りを探ってみた。
すると、八百屋の横の路地にビリビリに引き裂かれたアグネスの服が落ちているのを見つけた。
「これは姐さんの…まさかそんな!」
アランは不安に打ちのめされながら、スラム街へと入って行った。




