過去との対話
アランは大きく息を吸った。
アグネスはそんなアランの背中を押して、家の中に入るよう促した。
「緊張しなくてもいいのよ。カノンもエリザベートもあなたと会うのをとても楽しみにしてるのよ。」
「あ…ああそうだな」アランはドアを開けようとしたがその前にドアは開いて、二人の女性が顔をのぞかせた。「アラン、待ってたわ〜!さあ入って入って!」
オレンジ色のショートヘアの女の子が満面の笑みでアランの手を引き、部屋の中に案内してくれた。
明るく活発なイメージだ。
もう1人の女性はサラサラの黒髪が美しいく知性的な感じをうけた。
アグネスはアランに二人を改めて紹介することにした。
「アランはテラでの記憶を無くしてるの。だからあなたたち自己紹介してくれる?」
カノンはうなずいた。「私は竜崎カノン、エストニアの…元王妃よ。父はガーディアンの開発製造会社の会長で、アランあなたを造ったのもこの竜崎グループなの」
アランは身を乗り出した。
「じゃあ…じゃあ詳しく教えてくれ!俺の身体がどうなっているのか。自分の身体なのに解らないことだらけなんだ」
「ええ、もちろんそのつもりよ。エリザベートの紹介が済んだらね!」
エリザベートはニッコリとアランに微笑みかけた。
「私はエリザベート、ガイアのパイロットよ。父はサイバーアトミック社でパイロットのシンクロ率をあげる研究をしていたの」
アランは真剣な表情で二人を見つめた。
「どうやら二人とも俺には縁の深い人物のようだな」
アグネスは「そうよ。だからなんでも聞いてちょうだい。」
アランは意を決して「俺が生まれた訳を教えて欲しい。」とたずねた。
「その質問には私が答えなくちゃね。その前に一つ聞いておきたいことがあるの。いいかしら?」
「ああ、なんだい?」「あなたは生まれてきた事を後悔してる?」アランはカノンの目を見据えてハッキリと答えた。
「いいや、感謝してる。こうして俺という存在を造りだしてくれたおかげであんたたちとも出逢えた。」
アグネスはつい涙ぐんでしまった。
「なんであんたが泣くんだ?」
「だって…嬉しくて」エリザベートは顔を綻ばせてアグネスの涙を拭いてやった。
「アランはね。アグネスのたった1人の家族なのよ。どんなにあなたを心配してたか…やっと安心したんだよね?」
アグネスはコクリとうなずいた。
家族…か。
俺は幸せだな。もうどんな事を聞いても大丈夫だ。
こんなに俺を愛してくれている姉さんがいるんだから…
「どんな事も包み隠さず教えて下さい。お願いします。」
カノンはありのまま事実のみを話した。
アランにとってそれは少なからずショックな内容であった。とくにカノンの父、竜崎一馬の台詞で「人間に似せたものより怪物のほうが死んだ時、心が痛まない」というフレーズだ。
自分が獣の姿の訳がそんな理由だなんて…。アランの心は一瞬冷えかけたが、アグネスがギュッとアランの手を握りしめてくれていて赦す気持ちになれた。どんな理由にしろ、一馬のおかげでここにいる。
「やっと前に進めそうな気がするよ」
アランの前に数枚の写真が並べられた。
それはアグネスがいつもポケットに入れて大事にしていたものだ。アランは一枚一枚手にとり、じっくり眺めた。
昔の俺も幸せそうだ!アランは思わず笑みがこぼれた。




