決心
アランは闇雲に街の中を歩き回った。
頭の中にはアグネスの言葉がぐるぐる回っている。
人間じゃない…アンドロイド…人間じゃない…アンドロイド…
アランは通りすがりの工務店で小さなナイフを購入した。
もう一度自分で確かめずにはいられなかった。
公園のベンチに座り、ナイフの切っ先を反対側の足にズブリと突き刺した。
痛みもなく、やはり血が滲む様子はなかった。
今度は腕を突き刺す。「ツッ…痛ってぇ…」アランの腕からは夥しい血がダラダラ垂れていた。
「なんてこった…なんて中途半端な身体だよ!」
アランは首にかけていたタオルで腕をぐるぐる巻きにした。
その時、遠くから自分を呼ぶアグネスの声が聞こえた。
「アラ〜ン!アラ〜ン!どこなの?お願い出てきてよ」
その悲痛な叫びにアランはフラフラと立ち上がった。
「アグネス…ここだ!」
涙でグショグショになりながらアグネスはアランにしがみついた。「バカバカ…なんでいなくなるの?もう、もう私を置いていかないでよぅ…エッ…エッ…ヒック…ヒック…
アランはアグネスを抱き締めた。
「悪かったよ…もう置いて行ったりしない…ただショックでとても…とても怖かったんだ」
アグネスは自分の手の生暖かい感触に気付いて慌てた。
その手はべったりとアランの血で赤くなっていたのだ。
「アグネス…やっぱり俺は昔の記憶を取り戻したい。協力してくれるか?」
「ええ…ええもちろんよアラン!さあ帰って腕の治療をしましょう」
学院に戻るとプリプリ怒ったヨンが二人を出迎えた。
「もう!どこ行ってたの?心配したわよ。救急箱持ってきたのにアランはいないし、アグネスは泣きじゃくってたと思ったら突然走って行っちゃうし。もう、痴話喧嘩もいい加減にしなさいよ!」
「ごめんねヨン、アランの腕を診てやって怪我してるの」
ヨンはお手上げポーズで「まったく〜なんで今度は腕まで怪我してくるのよ?このやんちゃ坊主!この借りは後で返して貰うからね」と言って手際よく傷口を消毒して包帯を巻いていった。
「ありがとうヨン」
アランは耳を垂れて申し訳なさそうにしている。
「ほんとに手間のかかる人達ね!さっ早く仕事にとりかからないと。時間がないわよ」
アランとアグネスは急いでお互いの持ち場に帰っていった。
アグネスはアランが決心してくれたことが本当に嬉しかった。
今度の休みにアランを家に連れて帰ろう。
カノンとエリザベートに会えばきっと刺激になるはずだわ。
アグネスの頭の中はこれからの計画でいっぱいになっていた。




