残酷な現実
いったい何だっていうんだ…俺、どうかしてるぜ!
目は自分の意思と関係なくアグネスの姿を探し、耳は常にアグネスの方向に向かってピンと立っていた。
「あ〜あ見てられないなぁ」
ヨンはアランがピュアな心の持ち主であることにずっと前から気付いていた。
きっとアランは傷付きたくなくて人と距離をとっていたのだろう。「大丈夫かな〜。とりあえず今は熱くなってて誰の言葉も耳に入らないでしょうね。もうしばらく様子をみよう…頑張れよ、悩める青少年!」
ヨンは小さくアランに声援をとばした。
「ヨンったら、こんなとこで何してるの?」「ヒッ!び、びっくりしたぁ〜。アグネスったら驚かせないでよ〜!」
「ごめんごめん!あらアランもいたの?」
アランの胸は早鐘を打ち、草刈りカマを持つ手が震えた。
アッと思った瞬間アランの手からカマが落ちて靴の上にグサリと刺さった。
「キャアア!大変、アグネスどうしよう…アランが!アランがぁ!」
「落ち着いてヨン!あなたは救急箱を持ってきて!ほら、早く」
ヨンは慌てて駆けていった。
アグネスはホッと胸を撫でおろし、アランの足に刺さったカマをグイと引き抜いた。
アランはボ〜ッとしてその様子を見ていた。「アラン、靴を脱いでみて」
アランはアグネスに言われたまま破れた靴を脱ぎ捨てた。
アグネスはアランの足をくまなく点検した。「大丈夫!少しへこんだけど後で私が修理してあげるわ」
アランの体が小刻みに震えた。
「な…なんで血が出ない?修理?修理ってどういうことだよ!」
アランは絶叫した。
「落ち着いてアラン!あなた…あなたもしかしてそれすらも忘れていたの?」
アランはアグネスに詰め寄った。
「なんなんだ?俺は…俺の身体はどうなってる!」
アグネスは躊躇ったが、思いきったようにアランの肩に手をかけた。
「アラン…あなたはみんなと違う姿よね?それはどうしてだと思う?」
「そ…それは…病気のせいだと…テラでの流行り病のせいだと思って…違うのか?」
アグネスはうなずいた。
「隠していてもいずれ分かることよ…はっきり言うわね。アラン、あなたはアンドロイドなの。人間じゃないのよ」
「そ…んな。嘘だ、嘘だ嘘だー!!」
アランはアグネスを振り切り駆け出して行った。
「アラン!待って、私の話しを聞いてー!」ヨンが救急箱を持って泣いているアグネスを抱き起こした。
「どうしたのアグネス?なんで泣いてるのよ、アランは?アランはどこに行ったの?」
アグネスは首を振るばかりで何も答えない。途方にくれながら、ヨンはただ泣きじゃくるアグネスの頭を撫で続けてやるしかなかった。




