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あなたを守りたい

使用人達の朝は早い。アグネスは目を擦りながら厨房の灯りをつけた。

「あれ?なんで…つかない!どうしよう」

「どうしたの?アグネス」

ヨンがヒョイと顔を覗かせた。

「電気がつかないの…困ったな、どうしよう」ヨンはしめしめと思いつつ「じゃあアランに直してもらいましょ!」と言って駆け出していった。

アランが来る。どんな顔して会えばいいのよ〜!

しばらくしてヨンはプリプリ怒りながら帰ってきた。

「あいつったら自分の持ち場は自分が守れ!ってさ。冷たい男よね〜。」

アグネスはホッとした顔で呼びに行ってくれたヨンに礼を言い、「いいのよ。その通りですもの…自分でやるわ。ヨンも仕事詰まってるでしょ?こっちは大丈夫だから自分の持ち場に帰って」と電球を握りしめた。

「うん了解!もし出来なかったら呼びに来てね」

「ありがとう。そうするわ」

ヨンはアグネスに手を振り、持ち場に帰っていった。

アグネスはフラフラと安定しない脚立の梯子に自分の足を掛け暗闇の中、手探りで切れた電球を探した。

「確かこの辺に…あった!」

手を伸ばした瞬間、バランスを崩しアグネスの身体は大きく傾いた。

「キャア!」

その時、毛むくじゃらの腕がアグネスのウエストをしっかり捕まえた。

「…誰?ありがとう。」

アグネスはそのまま電球を無事に取り替え、脚立を降りてきた。

電気のスイッチをカチリと押すと厨房に昼間の明るさが戻ってきた。

「あら?どこに行ったのかしら」

すでに助けてくれた人物は姿を消しており、厨房はシンと鎮まりかえっていた。

「もしかしてアラン?」

アグネスはもしそうだったならまだ望みはある、と嬉しくなった。朝食の時間が終わり、アグネスはポットにコーヒーを注いだ。

窓から庭掃きをしているアランの姿が見える。

アグネスはゆっくりと彼のそばに歩いて行った。

「休憩時間よアラン。コーヒー淹れてきたの」

アランは汗を拭うと学院の裏手にある雑木林に向かって行った。

アグネスもその後に続く。

暖かい木漏れ日がアランの黄金色の毛を照らしてキラキラ光った。アグネスは2つのカップにコーヒーを満たし、アランの前に差し出した。

「あんた…俺が怖くないのか?」

「どうして?」

「こんな半獣人…気味悪いだろ」

アグネスはアランが深く傷ついているのに気がついた。

「見かけなんか…私にはどうでもいいことだから」

「あんた変わってるよ」

アランの言葉にアグネスは笑った。

「…ほんと言うと俺、自分のこと良く分からないんだ。」

「分からない?」

アランはうなずいた。「俺は黒の羊飼いに拉致されてね。クロノスにシンクロ状態のまま奴らに引きずりだされた。」

「ええっ!?そんなことしたら…」

アランは苦し気に目をそらした。

「そう…精神回路がやられて廃人さ。」

アグネスはあまりの驚きで声を失った。

「…だがなんとか俺は助かった。でも引き換えに記憶を無くしちまったんだ。クロノスに乗る前の記憶が全くもどらない…」

アグネスはアランの手をとった。

「辛い思いをしてたのね…私は前のあなたを知っているわ。とても優しくて照れ屋で甘ったれだった」

アランは笑った。

「俺が?…甘ったれ…なんだか信じられないな」

アグネスはアランの目を真剣な眼差しで見つめ、優しくて抱き締めた。

「アラン…私、あなたを諦めない!きっと思い出す時が来るわ。それまできっと私があなたを守ってみせる!もう誰にもあなたを傷つけさせたりしない」

アランの凍った心を丸ごと抱えこんでくれる感触にアランはしばし身体を預けた。

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