王の棺
ハデスの中で冷たい我王の身体を抱きながらカインは一つの決断を下した。
「実…ロバート博士は無事か?」
「ああ大丈夫だよ。エストニアはシールドで覆われてる。テラに沈んだおかげでユノの奴らにも見つからずにすんでるよ。」
カインはホッと胸を撫でおろした。
「急いでくれ!我王の容体は一刻を争う状況だ」
「そっちも色々あったみたいだね…他のみんなは?」
「わからない…だが多分ユノに捕らわれただろうな。まさかエストニアが無事だったとは誰も想像していないだろうよ」
「………」
沈黙が空間を支配した。
カインも実もそれぞれがこれからの事を考えていた。
「着いたよ!ゲートを開けてくれ。二人を収容した」
ロバートの声が返ってきた。
「おお!二人とも無事か?良かったすぐに解除する」
「ロバート、我王が負傷している。ストレッチャーの用意を!医師を呼んでくれ。予断を許さない状況だ!」
「わかった、すぐに手配するからな。」
我王はストレッチャーに乗せられ、すぐに手術室に運ばれて行った。
事態を聞きつけ、サラをはじめお妃達が駆けつけてきた。
カインの顔色を見るなり、サラは事態がいかに深刻な状況か即座に判断した。
「カイン、ご苦労でした。我王は?」
カインは首を横に振った。
「やはり…そうですか。せめてあなたが無事でいてくれて良かった」
アリサがそれを聞いて泣き崩れた。
「そんな…我王が死ぬなんて。彼はエストニアの…ううんこのテラの希望なのに」
セシリアは悲しみをぐっとこらえ、サラに詰め寄った。
「何か方法はありませんか?」
サラは瞑目したまま答えない。
「方法はあります」
皆は一斉にカインを見た。
「カイン…それはいけません!」
サラが強い調子でカインをたしなめた。
その時、手術室のドアが開いて沈痛な面持ちの医師が出てきた。
「打ち所が悪かった…手のつくしようがありません。皆さん王様にお別れを…」
カインは皆の顔を見回して宣言した。
「皆さん、私の身体に我王の魂を転移させます。今ならまだ間に合う、ロバートさん用意を頼みます!皆さん、それしか方法はありません。了承してくださいお願いします!」
あまりの事に一瞬その場はシンと鎮まりかえった。
「…そうね。そうだわ!サラ様そうしましょう。」
アリサがサラの小さな身体を揺すぶった。
「私は反対です…カイン、もし我王の思念が強ければあなたの方が消えてしまう可能性もありますよ」
カインはフッと微笑んだ。
「もとよりこの身は王に捧げております。我王がいなければ私が存在する意味もないのですよ。」
カインの目に揺らぎはなかった。
「さあ、ロバートさん頼みます!」
「ウ、ウム…了解した。そのカプセルに入ってくれ」
ロバートは小さくつぶやいた。
「お前はバカだよ…」カインは笑った。
「今頃わかったんですか?」
カプセルに横たわったカインはそっと目を閉じた。
アグネス…すまない…遠くなる意識の底に彼女の面影が消えていった。




