プロローグ
アラン…今助けに行くからね!
ケルベロスの操縦席で今か今かと出撃命令を待っているアグネスには戦いへの恐れなど微塵も感じられなかった。
「無事でいて…」
アグネスは家族もなく、アランを本当の弟のように思っていた。
上半身がピューマという異様な姿とは裏腹に植物や動物が大好きな優しい性格の持ち主だ。
もし、洗脳されていたら…
アグネスはかぶりを振った。
ううん、大丈夫よ!その時はパスワードで初期化に戻せばいいんだもの。
アグネスは我王から洗脳を解く方法を教わっていた。
だが、それは一か八かの賭けだ。
我王はアグネスを厳しい顔で見つめた。
「いいかアグネスもしアランが洗脳されて襲ってきたら、もはや我々にとって彼は敵だ。命が危ないと思ったら躊躇せず殺せ!」
私に出来るだろうか…アグネスは右側を見た。
愛しいカインがジュピター2号機に乗り込もうとしている。
アグネスの視線に気付きもしない。
思い余って告白してみたものの、二人の間柄は全く変わっていなかった。
「期待してたわけじゃないけどね」
アグネスは左側のガイアに乗っているエリザベートを見た。
緊張しているのか顔が心持ち青ざめて見える。
エリザベート…強い人。
アグネスが彼女に最初に懐いた印象は『世間知らずの甘ちゃん』だった。
ところが彼女は愛する我王の為に身を投げ出して実験台になり、とうとう子供の出来ない身体になってしまった。そしてあろうことか、自分から妃候補を降りてガイアのパイロットになったのだ。
なんて勇気のある人だろう…
その凛々しい横顔を頼もしげに見つめる。
アグネスの視線に気付いたエリザベートは笑顔で敬礼してきた。
アグネスもそれに返し、心を決めた。
生き抜こう、絶対に生きてここに帰る!




