表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界に色を付ける系アイドル始めました  作者: 廿楽 亜久
11話 世界に色を付ける魔法少女

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

50/53

03

≫【準備OK?】ブリリアントカラーライブ 次の曲は『ラ・ラ・ライス』!!

 コメは炊いた? スイッチ押した?

 みんなのコメが会場に届くよ!


 写真付きでSNSに投稿された、きらりとひかりの公式アカウント。


≫は? ライブ続けんの?

≫待ってました! コメは一升用意しております!

 ≫一升(一生)な

  ≫言わせるなよ。恥ずかしい。

≫俵で買ってきたぞ!! 任せろ!!

≫カレーと明太子も用意してあります! 準備万端です!!


 投稿直後から、一気に盛り上がるコメント欄には、ライブを続けるのかという意見も流れているが、ファンたちの待望のコメントに流されていく。


 その熱狂の中、ステージに、きらりとひかりが現れれば、また熱量は上がり、歓声が響く。


「コメの準備はできたァ?」

「今日は、ブリカラ特別仕様のカラースプレーな、かわいいコメ!」

「「せぇーーーーのっ」」


 ふたりの代表曲でもある『ラ・ラ・ライス』のお決まりのセリフを叫ぶ。


「「コメ炊けェェェェエエエエエッッ!!!!」」


 ふたりの声と同時に、会場にいっぱいに流れていく、色とりどりの大量の『※』の弾幕。


≫え、生放送と連動してるの? マジかよ!? これは参加せねば!!


「連動してるよーっ! コメ足りてないぞぉ!」

「もっともっと! みんなの弾幕、もっとすごいって知ってるよ?」


 きらりたちが、ネットの生放送で見ている彼らに呼びかければ、もっと現れる大量コメントの弾幕。

 もはや、きらりたちが見えなくなりそうな勢いだ。


「うわぁ……これ、機械壊れたりしないです?」


 桜子が心配そうに、終始流れ続けるコメントを投影し続けている機械へ目をやる。

 確かに、舞台装置として、用意してあった投影機ではあるが、急遽、ライブを生放送しているコメント欄と連動して、投影している状態だ。


 ネットで大流行した『ラ・ラ・ライス』は、コメントととの掛け合いも含めた歌で、この大量のコメントの弾幕も、彼女たちにとってはいつもの事だ。

 それはもう、世界から色が消えかけているなど忘れてしまいそうなほどの、目が痛くなるような極彩色だ。


「5分なら、なんとか? えーっと、次は、桜マークだけ投影されるようにしてェっと……うっげェ……もうこっちに偽善者共が来やがった……※弾幕に負けてるけどな!」


 生放送のコメントが、会場に投影されていると聞いて、さっそくコメントに『白墨事件再来』『逃げて』などのコメントを記載しているユーザーがいるが、圧倒的な『※』も数に埋もれてしまっている。


「さ、桜子。本当にいいの……?」


 スパンコールが、投影するコメントの調整をしている中、彩花は次のために準備をしている桜子に、心配そうに声をかけた。


「本当に危なくなったら、中止にするわよ。でも……アンタが、口を滑らせたせいで、これが先輩が戦ってるだけってわかっちゃってるんだから、仕方ないでしょ」


 舞台に出ていないとはいえ、桜子が、アイドル用のキャラを被らず、彩花を睨む様子に、彩花も引きつった表情でしか、謝れなかった。


「というか、謝るなら、あのふたりに謝りなさいよ。多分、察してるわよ。この魔法、先輩が関係してるって」

「え……」

「じゃなきゃ、誰も協力なんてしないわよ。どう見たって、白墨事件じゃない。これじゃあ」

「……うん。ごめん。ありがとう」

「ホントよね。一生お礼言われても、言われ足りないレベルよ」

「う゛、うん……」


 きらりとひかりの親は、ふたりを止めていたが、それでも、彼女たちはステージに出ると言ってくれた。

 そして、桜子も。


「私のステージも含めて、約10分。これで、元に戻らなかったら、アンタの番になる前に、たぶん中止になるわ」


 今の状況で、ステージに立ってもいいと言ってくれた魔法少女は、彩花も含めて、この四人だけだ。

 なにより、約10分あれば、熊猫たちも、安全な避難誘導ルートを確保する。

 おそらく、彩花の順番が回ってくる前に、もう一度、中止について審議され、この黒い世界のままだったら、中止になる可能性が高い。


「そしたら、自分で言うのよ。ライブの中止のこと」

「…………うん。わかった」


 できる限りの時間稼ぎをしてくれている。

 灯里だって、それまでに決着をつけてくれるはずだ。

 だから、大丈夫。


*****


 義手の利点は何か。

 まずは強度だ。人間の皮膚や骨より、ずっと硬く、丈夫だ。その代わり、感覚というものはないが、破壊された時、痛みを感じないというのは、利点ともいえる。


 そのどちらも、想定を上回るバケモノが目の前にいなければ、という話ではあるが。


「おいおい……いくらすると思ってるんだよ」

「うるさいな……」


 また、金属の拉げた音が響く。


 痛みはない。だが、背筋が引きつる感覚がする。

 恐怖だ。

 この7年間、自分のプライドを潰されたことへの怒りだけで、目の前のバケモノを、ひどく、醜く殺してやることしか考えてこなかった自分の心が、恐怖を理解しようとしている。


 海の底へ沈んでいくように、徐々に圧倒的な力が、近づいてくる感覚。


「バケモノが……」


 こんなもの、ただの災害だ。

 人間なんかじゃない。


「人間のフリなんて、してんじゃねェよ」


 人を守るなんて、人間染みたことしてるんじゃない。

 ただただ黒い目が、俺を写し、その最期を告げようとした。


「――灯里!!!」


 だが、その最期は、ひとつの声で止まった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ