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世界に色を付ける系アイドル始めました  作者: 廿楽 亜久
11話 世界に色を付ける魔法少女

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02

≫【速報】池袋再び白墨に染まる! #拡散希望 #テロ #緊急事態 #避難して

 ≫ヤバ……マジで白黒じゃん

 ≫だから、ライブして挑発すんなって言ってたんだよ。無視した結果だろ。警察も魔法局も責任どう取るつもりだよ

 ≫白墨事件の時、実際いた人だけど、その時はもっと黒かったけど……加工じゃね?

  ≫フェイクニュースかよ(笑)

  ≫いやいや、他にも動画上がってるから。嘘乙

 ≫炎上目的でも、これは不謹慎だろ


 始めの投稿があってから、数分もしない内に爆発的に増えていく投稿の数。


「だァァァアアア!! 特定特定!! 小林氏、そっちよろしく! これ、どう考えても、もう抑え込めるレベルじゃ――あ、サイト落とせばいいのか。ktkr(キタコレ)。逆転の発想。天才か」


 再び白墨事件が起きるのではないかと、期待をしていた人も多かったのだろう。

 この数分で書いたとは思えない、記事などや画像までもが、爆発的に増える投稿の山に、根倉は再び、キーボードを叩き始めた。


 そして、ライブ会場でも、白黒に染まりつつある状況は、確認されていた。

 幸いなのは、光や魔法による演出が常に行われているライブ会場で、SNSを開いている人が少ないことだろう。おかげで、混乱はまだ起きていない。


「中止するべきよ!!」


 だが、スタッフや出演者には、すでに気が付いている人はおり、すぐにライブを中止するべきだという意見が上がっていた。


「そうですよ。被害がないとはいえ、ドローンや怪魔だって、明らかに増えてますし……その上、あの魔法使いまでいるなら、いくらなんでも、中止するべきです」

「し、しかし……」


 口々に中止を要求するスタッフに、ライブの責任者は、ちらりと熊猫の方へ目をやる。


「ドローンと怪魔については、ここ数分は動きがないわね。だから、現状、問題なのは、魔法の方……」


 機密事項だが、この魔法は灯里の魔法であるため、危険性はない。

 本来であれば、このままライブを続けることはできる。


 だが、それを伝えてしまえば、この魔法を使っている魔法使いのことを、警察やが認知していることを、公にすることになる。

 そうなれば、今の世論の状態では、白墨事件の犯人である灯里を逮捕しろと言い出しかねない。


「今のところ、なんも被害ないんだから、イージャン」

「ハァ!? この先、会場の人たちに被害があったらどうするの!? 避難しないとマズいでしょ!!」

「どこによ?」


 スパンコールの言葉に、中止するべきと叫んでいた魔法少女は、言葉を詰まらせ、警察へ目を向けた。


「はぁぁぁ……そこで他人に投げるのかよ。つか、逃げ場なんてないってわかってんじゃん。なのに、危ないからライブは中止! あとはお好きに! 中止したから、私たちは関係ありませーん! チョーウケる」


 笑っているのに、その魔法少女を見下すスパンコールに、熊猫も止めるように声をかける。


「事実だし、今すぐに絶対安全な避難場所なんて、用意できないっしょ?」


 警察も魔法管理局も、何かあった時のため、避難所として、池袋駅を準備している。

 だが、今すぐに、この会場にいる全員と、周囲の人々を避難させられるかと問われれば、難しいと言わざる得ない。


「なら、変に不安を煽るより、神のライブで盛り上がってた方がいーじゃん」

「いい加減にしてよ! アンタ、部外者なのに! 何の責任と取れないんだから、黙っててよ!」

「はァ〜〜??? ライブする覚悟があるから、残ってたんじゃないの? ビビるんだったら、他の奴らみたいに辞退すれば、よかったじゃん」


 そのスパンコールの言葉は、彼女に相当響いたらしく、顔を真っ赤にして、一歩前に足を進めるが、直後、スパンコールとの間に入る影。

 彩花だった。


「こんなところで喧嘩しないで! それに、私もライブを中止にするのは、反対。こ、の人のいうことは、全部が合ってないとはいえ、観客を混乱させるのは、良くないと思う」

「だからって、ライブする必要ある!?」

「じゃあ、私が繋ぐから! 他にも、状況が落ち着くまで、ステージに立ちたくない人の分は、私が出るから! それじゃダメ?」


 彩花の言葉に、眉を潜めたのはひとりだけではない。スタッフも含めて、半数ほどが眉を潜め、冷たい視線が彩花に突き刺さる。


 元々、ブリリアントカラーライブを中止にしたくない側として有名ではあったが、白墨事件と同様の魔法が起きている状況でさえ、ライブを強行しようとする姿に、さすがに表情を歪める者の方が多い。


「この魔法だって、何か起きてるわけじゃないでしょ? 下手に避難誘導した方が、危険じゃない?」

「起きてるじゃない! 色がないって、それだけでおかしいでしょ!」


 この魔法が、人を傷つけているわけではないと、口にする彩花の言葉は、すぐに否定される。


「同じ魔法が使われてるんだから、またひどい事件が起きるに決まってるじゃない!」

「ま、前の事件は、あくまで人工怪魔とか、銃撃とかで、怪我人が出ただけで、魔法は、誰も――」

「何言ってんの……? おかしいんじゃない?」


 違う。灯里の魔法は、誰も傷つけていない。

 むしろ、みんなを守ってくれてる。


 喉から溢れ出しそうになる言葉を口にしたところで、今の彼女たちには、届かない。

 それどころか、灯里が犯人だと決めつける。


 悪意なんてない。純粋に、そう信じて、決めつけている。


 だから、私はこのライブを成功させなくちゃいけない。

 灯里の魔法は、誰も傷つけていないと、この世界は、怖がる必要なんてないって、証明するために。


「…………」


 彩花の必死に言葉を聞きながら、ひかりは自分の周りを飛んでいた黒い影のような魚たちを思い出しては、魔法で星を作り出した。

 黄色くて、明るい星。


「魔法は、色がある……きらりちゃん。きらりちゃん……! これなら、できるかも……!!」


 ひかりの手元を見たきらりは、大きく目を輝かせ、何度も頷く。


「ママ! 携帯貸して!」

「え、なに……ライブは中止になるのよ?」

「ダメ! 灯里ちゃんと約束したもん!」


 きらりは、そう言いながら、SNSにひとつの投稿を行った。


「ねぇねぇ! 続けるなら、次、私たちが出たい! それで、お願いがあるんだけど」


 大人たちが、ライブの続行について話し合う中、きらりが手を上げ、割り込むと、その投稿画面を見せた。

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