表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界に色を付ける系アイドル始めました  作者: 廿楽 亜久
10話 ブリリアントカラーライブ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

47/53

05

「あーここか。へぇ……」


 ネットにアップされていた画像を元に、その建物を見上げれば、新しい傷は存在しない。

 ここだけではなく、複数個所で同じ状態だ。


「やっぱり、いるなぁ? 魔法使いさんよぉ?」


 ネットのくだらない考察なんかではない。

 今、池袋には、大規模な魔法が展開されている。かつて、白墨事件と同様の規模の魔法だ。


 もし、それが技術により可能になったならば、ライブの安心材料として、公開するはずだ。

 公開していないということは、この魔法が普遍的な技術ではなく、個人的な技術であるということの証明だ。


 個人的な技術というものは、その当人に何かがあれば、すぐに途絶えてしまい、”絶対安全”とは程遠い。


「それにしても、あの馬、思った以上に使えなかったな……嬢ちゃんの方が当たりだったかァ……」


 青兎馬に、魔法局が管理しているSランクの魔法使いについて調べさせたが、結果は散々なものだった。

 年齢も性別も、名前すらもわからなかった。


「さぁて……どう釣り上げるか……」


 ライブ会場を混乱させれば、出てくるか。

 人工怪魔は、優先的に倒しているのか、ライブ会場に辿り着けていないが、ドローンは既に、数体が入っている。

 どれも被害を出せた様子はないが、この建物同様、何かしらの魔法だろう。


 ライブの残り時間は、1時間半。半分過ぎた辺りだ。


「……あぁ。俺だ。10分後に残ってるやつ、全部吐き出せ。全部だ。全部。一斉にだ」


 海馬は、それだけ告げると、携帯をしまった。


 その頃、ライブ会場の裏では、小林が引きつった表情で、携帯を構えていた。


「ハァ……? 灯里に、海馬のことを教えた?」


 電話越しでも、明らかに怒っている嵜沼に、小林だけではなく、熊猫も頬を引きつらせる。


「あら……それはまずいね……根倉君。連絡が来たって言う内容は?」


 大澤も困ったような声をあげながら、根倉に問いかける。


「ドローンの操作者を特定してほしいって内容だったんですけど……ライブ会場が決まってる以上、無差別なら直接操作はしてないだろうから、特定できても海馬ではない。ってのは、まだ黒沼氏には伝えてない。やっぱり、ヤバめのヤバヤバ案件……?」


 先程、灯里から連絡が来て、青兎馬の居場所を特定に入っている根倉だったが、それと同時に、嵜沼と大澤にも連絡を入れていた。

 そして、今の状況である。


「…………灯里の場所はわかるか?」

「監視カメラを洗えばいけるかもだけど……こっちも、SNS情報消しが多すぎて、容量キツイ。同様の理由で、海馬探しも、トンデモ魔術に対抗はできない」


 灯里も、例の目玉の使い魔を使って、海馬を探しているだろう。

 そんな使い魔を持っていない根倉たちが取れる方法は、配置している魔法士や警察、監視カメラでの情報を追うくらいなものだが、認識阻害魔法を使っている灯里を探すには、カメラの情報を探すしかない。だが、この池袋のカメラを探すには、数が多すぎる。

 かといって、海馬は、監視カメラに写らないルートなど調べ尽くしているだろうから、そちらを調べるのも、時間が掛かる。

 つまり、現状、灯里に連絡をつける以外に、灯里も海馬の場所も、見つけるのは困難ということだ。


「今なら、ドローンや怪魔の数が減ってるから、赫田も含めて、人は回せるけど……嫌な予感がするんだよなぁ……正直、人は回したくない」


 大澤の言葉に、舌打ちが聞こえる。

 嵜沼だろう。


「あ、あのー……黒沼ちゃんなら、海馬相手でも、何とでもなるんじゃ……」


 戦闘経験が豊富なテロリストだとしても、規格外の魔法使い、しかも手の内を明かしていないのならば、負けることはないだろう。


「何とかなるから困るんだよ」


 嵜沼は、大きくため息を吐き出す。

 灯里が、海馬に負けるとは思っていない。むしろ、確実に勝つ。


「灯里が海馬に接触したら、確実に殺す」


 つい、手を出したくなるほど腹立たしくなること。それは誰にだってある。灯里でなくても。

 その理由が法律であったり、倫理観であったりするだけで、抑え込む理性は、誰にでも存在する。

 だが、もし、強大な力を持っていて、法律などでは縛れず、本人の気持ちにだけに任されていたのなら?


 その片鱗は、久遠と対峙した時にもあった。

 明確に、彩花をバカにされた時、灯里は久遠に、容赦なく精神系の魔法を使った。悪びれることなどしなかった。

 久遠が助かったのは、彩花の兄であったことと、苅野や担任がすぐに止めに入ったからだ。

 

 だが、海馬には、それらのストッパーはない。

 故に、自分の大切な人たちの、大切な舞台を破壊しようとする海馬を、跡形もなく、誰に認識をさせず、殺すだろう。


「俺は灯里を探す。小林。お前は、青兎馬の場所の特定次第、さっさと確保しろ」

「は、はい……」


 電話が切れた後、小林は張り詰めた気持ちを吐き出すように、大きく息を吐き出した。


「ってわけなんだけど、ちなみに、お前は知らないわけ? お仲間なんでしょ」


 まるで自分には関係ないとばかりに、タブレットを操作していたスパンコールへ目をやれば、やれやれと首を横に振られた。


「うちら、リモートワークだから、どこ住みなんか知らないしぃ? ま、ウチの好みじゃないから、調べもしてない」

「あっそ……」

「それよりさぁ、さやちんの最高の曲なんだから、ブクロ全体に流さね? 神曲だぜ? 聞かなきゃ損っしょ」

「ちょっ……! ダメに決まってるでしょ!」


 熊猫が慌てて、スパンコールの持つタブレットを取り上げるのだった。

 

*****


 灯里は、黒いジンベイザメのような使い魔に乗りながら、携帯に写るライブ映像を眺めていた。

 だが、タツノオトシゴのような使い魔が、数回ラッパを吹くように何かを伝えれば、視線をある場所に向ける。


「やっと見つけた」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ