表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界に色を付ける系アイドル始めました  作者: 廿楽 亜久
10話 ブリリアントカラーライブ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

46/53

04

 会場が盛り上がる中、苅野は、またひとつドローンを壊していた。


 十分ほど前から、ドローンや怪魔の出現情報が相次いでいるのだ。

 ライブの警備の警察や魔法士たちも、対応に当たっており、人的被害は今のところ出ていない。


「…………調子がいい。つーか、良すぎる……」


 苅野は、いつもと変わった様子のない剣を握る自分の手を、訝し気に見つめた。


『苅野、参加するの!? ホント!? じゃあ、バフ盛り盛りにするよ!』


 以前、灯里に言われた言葉を思い出しては、大きく息を吐き出した。

 今日は灯里に会っていないが、灯里の魔法効果範囲ではあるし、自分に補助魔法が掛かっていても、おかしくはない。


「補助魔法も、高ランクだとこうも違うんだな……」


 苅野も、多少の補助魔法は使っているが、それとは比べ物にならない。


「にしても……野次馬も多すぎだろ……」


 先程から、ドローンや怪魔を倒すたびに、向けられるスマホ。

 すぐに警察や教師が注意してくれているが、野次馬たちの数は減る様子がない。むしろ、増えている。


「何が楽しいんだか……」

「苅野。またドローンだ」

「うっす」


 運が良ければ、ライブをタダで見れるなんて、甘い考えなど無くなるような慌ただしさだ。

 学生の応援でこれなのだから、本物の魔法士など、もっと忙しいことだろう。


 戦闘中に、ドローンを当ててしまった建物の壁に目をやるが、そこに傷跡は一切ない。

 灯里の使っている大規模魔法のおかげで、例え、苅野たちが、ドローンや怪魔を取りこぼしたところで、何とかなるのだろう。


「…………って、そういうことじゃねーか」


 だからといって、手を抜いていい理由にはならない。

 気合を入れるように、軽く自分の頬を叩くと、苅野は教師の後ろを追いかけた。


「どんだけ予算があるんだ……!! クソッ」


 報告の数が増え、乱雑に交差し始める無線に、ドローンを破壊しながら、教師は舌打ちを零す。

 徐々に、会場近くにも、討ち漏らしたドローンや怪魔の出現が増えている。単純な頭数の違いだ。


「まずい……! ドローンが一体抜けた!」


 ほんの数瞬、無線に集中していた瞬間に、頭上を通り過ぎて行ったドローン。


 すぐに撃ち落す魔法を構えるが、今撃ち落せば、観客たちに落ちる。


「――――」


 灯里の大規模魔法が、苅野の言うとおりであるなら、それで問題ない。

 だが、教師は撃てなかった。


 そのドローンは、ステージ歌っている彩花たちにも、はっきり見えていた。

 ライブ用の装置ではないドローン。以前に襲われたことがある彩花には、見覚えのあるそれ。


「――っ」


 一瞬、身を強張らせた彩花に、背中から強い衝撃。


「ハピハピっ」


 すぐに聞こえてくる桜子の明るい声と、視界の隅に見えたドローンを飲み込んだ、サメのような黒い影。

 灯里の使い魔が、ドローンを回収してくれたらしい。


「ハピネスっ! 一緒に歌おっ♪」


 向けられたマイクと、桜子の笑顔。

 その笑顔は、笑顔のはずなのに、”ちゃんとやれ”という圧があって、彩花もつい、笑みをこぼしてしまう。


「5つの合言葉ッ」


 彩花の掛け声に、桜子がすぐに観客にマイクを向ければ、すぐに返ってくるコール。


「「「「「あいしてるっっ」」」」」


 会場いっぱいに広がる声に、桜子も負けじと、曲の間に器用に「私もだよー!」と返事を返している。

 まるで何も起きていなかったかのように、ステージを踊る桜子に感心しながら、彩花も声を上げる。


 心配なんていらない。

 ドローンも、怪魔も、灯里が、絶対に倒してくれる。


 だから、私は、ライブを成功させる。

 みんなの心から、白墨事件なんて言葉が消えてしまうように。


 なにより灯里が、あのキラキラした目で、楽しめるように……!!


 彩花は、大きく息を吸い込むと、会場の視線を全て釘付けにするような、声をあげた。


*****


≫なんか、池袋でドローンとか、怪魔とか、多すぎじゃね?

 ≫めっちゃ多いよ。今、ブクロ行ったら、改札出て5分で魔法士の戦闘見れるレベル

  ≫だから、スマホ構えてる連中多いの?

  ≫でも、アップしてる奴ら少なくね? そんな連中がネットリテラシー持ってると思えないんだけど、死んだとか?

   ≫しっ! それ以上はいけない。気づかれるぞ。

    ≫おっと、その案件でしたかー おや? 誰か来たようだ……


「ハァァァーーーー!? その通りですけどォ!? つーか、JK共が無修正動画上げ過ぎなんだよ!? インプゾンビ共が!!」


 根倉が叫びながら、ソフトが自動で処理し続けている、処理中件数が増え続ける画面を見ながら、呆れながら叫ぶ。


「このネット社会で、なんでこんなネットリテラシー皆無なバケモンばっか育ってんだよ。日本の教育、マジ終わってんな!」


 文句を言いながら、未だに作られ続けるネットの隠語を追加していれば、聞こえた通知音。

 苛立ちながら、画面を流し見て、すぐに手に取った。


『ドローンの操作してる人、探してくれませんか?』


『今、少し忙しくて、お願いします』


『座標、送ってもらえると、助かります』


 灯里からだった。


 先程、ライブ会場にドローンが入ったことは見た。

 灯里の魔法で、何事も起きていなかったが、灯里やその場にいる警備の人間が、すぐに対応できなければ、ライブの中止も検討されるだろう。


 それでも、『座標を送ってほしい』という言葉に、底知れないなにかを感じながらも、根倉は『了解』のスタンプを送ると、キーボードを叩き出した。


「ってかさぁ……これ、海馬のこと、バレてんじゃないの……嵜沼氏ぃ……」


 ドローンの操作元を探しながら、根倉は、頬が引きつるのを感じるのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ