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世界に色を付ける系アイドル始めました  作者: 廿楽 亜久
10話 ブリリアントカラーライブ

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02

≫池袋周辺に警察の奴らいっぱいいる!!


 写真と共にアップされたSNSのひとつの投稿。

 そこには、ブリリアントカラーライブの警備のために、配置されている警察の姿と、不審車両に声をかけている姿。


 この様子を見たというコメントや野次馬をしようというコメント、そこから税金の無駄遣いやライブの応援、批難など、とにかく大量のコメントと拡散がつき続けている。

 その中には、最初に投稿された写真とは別のものもあり、実際に取り押さえられている写真まである。


「ありゃ……これはまた荒れそうね……」


 小林が呆れながら、その投稿をチェックすれば、案の定、その投稿もまた盛り上がっているようだ。


「おい。あの車」

「え? あーあのワゴン車?」


 赫田の呼びかけに、流し見ていた画面から顔を上げれば、赫田が指しているのは、ひとつのワゴン車。

 企業ロゴなどはなく、何か作業をしているのか、路肩に止めて、運転手が何かの画面を見ている。


 この数ヶ月、良くも悪くも注目を集めたブリリアントカラーライブには、科学推進委員会だけではない、先程の投稿者たちのような野次馬たちも多く集まる。

 それらを有害、無害と振り分けて、有害であるなら、事前に取り締まる。

 いくら、灯里の魔法があるとはいえ、取り締まれるものは取り締まっておく必要はある。


「少しお話よろしいですか?」


 これで何台目かの車に、小林は声をかけるのだった。


*****


 その頃、ライブ会場は開演を目前に控え、モニターに流れていた出演する魔法少女たちの紹介映像が消える。

 不気味な黒い画面に、観客たちは、もうすぐ始まるライブに、息を飲み動きを待つ。


 そして、桃色の花びらが一枚、降ってくると、空から降り立ったかのような、高らかに鳴る足音。


「あなたの心のラブリーラプラスッ☆ 桃井桜子でーすっ!!」


 弾けるような声と共に、桃色の花吹雪が会場に吹き荒れ、すぐにその花吹雪が逆巻く。


「あなたの世界に彩りを。幸延彩花です」


 凛と響く声と共に、たくさんの色の増えた花吹雪が空へと舞い上がっていく。


「「煌めけ! 届け! 世界を彩る一億色の花束! ブリリアントカラーライブ、開演ッ!!」」


 桜子と彩花のライブの開演宣言と共に、会場に溢れる、煌びやかな極彩色の花吹雪。


「すごーいっっ!!」


 サイリウムを両手に握りしめ、目を輝かせている灯里で、熊猫は何とも言えない表情で横目に見る。

 灯里が行っている魔法の事を考えれば、この程度の視覚だけの魔法など、大したものではない。

 魔法少女のライブなら、よくある装置による魔法だ。


「まぁ、問題が起きなければ、それが一番だものね」


 一曲目が始まれば、観客と同じような反応で、サイリウムを振っている灯里に、熊猫は頬に手を当てるのだった。


 その頃、SNSには、一件の動画付きの投稿がアップロードされていた。


≫ 警察が職質した車から、なんかドローンが出てきたんだけど!!


 それは、ドアの開いたワゴン車と、拘束されている男、それからドローンを破壊している槍を持った男の写った動画だった。


≫ライブの演出とかじゃなくて? 白墨事件のオマージュとかじゃないの?

 ≫ガチに決まってるだろ。演出なら、ライブ会場の中でやるだろ。


≫ドローンが吹っ飛んでる先、ビルにぶつかってない?

 ≫ぶつかってるね。わりと思いっきり。これ、修繕費とか税金で出るわけ? 最悪なんだけど

  ≫それなー

  ≫拡大して見たんだけど、壊れてる? これ

   ≫画質荒すぎてわからん(笑)


≫てか、これって、ちょっと前に話題になってた人と同一人物じゃない? ほら、撮影中だったとかいう……

  ≫この動画じゃね? 動きも似てるし、その撮影も、あの桜子って魔法少女だったし、ほぼ確。

  ≫赫田って奴のだろ。ほら、この試合で大暴れしてる奴だよ。

 

「あーはいはい。それ以上は、個人情報でーす」


 根倉は、度を越し始めた投稿に、キーボードを叩くと、投稿を削除し、定型文の警告文を送りつける。


「はぁ~~~~……もう少し穏便に取り締まれないのかねぇ……」


 魔法管理局も、ブリリアントカラーライブに関わっているが、大きな案件としては取り扱っていない。

 そのため、こうしたネットの監視業務も、根倉の仕事としては割り振られていないのだが、半分は趣味だ。

 この監視業務を理由に、魔法少女のライブをリアルタイムで、職務中であっても鑑賞できる。


「ふひひ……ネットのコメントの監視業務なんて、AIで危険な単語を振り分けておけば、余裕だし? これこそ、仕事を選べる人間の特権! いやーサイコーですわ」


 心底楽し気な表情で、複数の画面にライブ映像を流しながら、根倉は、背もたれにもたれかかった。


*****


 自分に向けられているスマホを睨めば、大抵の人は慌てたように、短い悲鳴をあげて逃げていった。


「手は出さないでよ? お前を止められるのなんて、黒沼ちゃんくらいなんだから」


 勝手に写真を撮られる上に、ネットにアップされれば、殴りたい衝動に駆られるのは理解する。

 しかも、赫田に関しては、これで二度目だ。文句を言いたい気持ちもわかるが、ここで暴れられれば、小林も庇い切れない。


 なにより、赫田を止められるのは、灯里くらいで、その灯里は、ライブを楽しんでいるところだ。

 赫田としても、それは邪魔したくないらしく、大きな舌打ちと共に、苛立った様子で、槍を肩に乗せている。


「いやはや……まったく、扱いやすいんだか、にくいんだか……」


 小林も、犯人たちを別動隊に引き渡しながら、警戒を続ける。


 赫田を含めた、戦闘力の高い魔法士のおかげで、ドローンや人工怪魔は今のところ、全て押さえ込めている。

 このまま行けば、ライブは中止せずに済むだろう。


「みぃーーーーっけっっ!!!! 野獣!!」


 安心したのも突かぬ間、突然響いてきた声に、小林と赫田は、身構えながら、その声の方へ目を向ける。

 そこには、派手なギャルな身なりをした女。


「スパンコール!?」


 つい先日、灯里たちを襲ったスパンコールが立っていた。


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