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世界に色を付ける系アイドル始めました  作者: 廿楽 亜久
10話 ブリリアントカラーライブ

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01

 7月26日。

 池袋には、ライブ関係者や観客、警察関係者も含め、多くの人が集まり出していた。


「ブリリアントカラーライブのチケットをお持ちの方は、こちらからご入場ください!! ライブ区画外での撮影は、他の方々の迷惑となりますので、ご遠慮ください!!」


 スタッフの誘導の声が響く中、苅野は、区画外で足を止めては、ステージへカメラを向ける人々にめんどくさそうな目を向けていた。

 まだ警備のバイトを始めてから、一時間も経っていないというのに、すっかり慣れてきた声かけをする。


「人多すぎだろ……まだ開始まで一時間以上あんのに……」


 魔法少女のファンらしきに報道陣、野外ライブということもあり、チケットを持たずに聞こうとする野次馬たち。

 ここ数日、特にメディアが騒いだおかげで、注目度も高い。


「その上、始まる前からトラブルを起こす奴もいるからな」

「う゛……す、すみません……」


 久遠に関しては、結局、このバイトから外されることになった。

 灯里との件も含めて、既に前例もあり、危険という判断らしい。

 もちろん、久遠と苅野の喧嘩については、学生の監督をしている担任にも連絡はいっており、こうして嫌味を言われている。


「まぁいい。それより、苅野、お前、黒沼から、警備に関して、何か聞いてるか?」


 担任は、現役の魔法士だが、本職が教師であり、今回も、あくまで学生の監督だ。

 そのため、詳細な警備内容について、聞かされてはいなかった。特に、S級である灯里の配置などは。


「これだけ実害も出てるライブで、しかも、野外だ。なにかしら、大規模で確実な対策がなければ、魔法管理局も許可は出さないだろ」


 しかし、そこに関しては、メディアはもちろん、学生バイトとはいえ、警備の一部を担っている担任たちにすら伝えていない。

 つまり、そこにS級である、灯里の存在が関わっていることになる。


「大規模魔法なら、大規模であるほど、概要を知らされずに動くのは、危険だからな。少しでも情報があれば、動きやすいんだが……」


 担任の気持ちはわかるが、苅野は何とも微妙な顔をした。

 確かに、そのことについて、苅野も灯里に聞いていたし、灯里も答えてくれた。


「あー……えっと……黒沼が言ったまんま言いますね……」


 灯里に言われた言葉を、そのまま担任へ伝えれば、担任は、しばらく唖然とした後、ひどく頬を引きつらせた。


 その頃、ステージ裏では、着々とライブの準備が行われていた。


「黒沼ちゃん。もう一回聞くけど、既に大規模魔法は展開済?」

「はい」

「んで、ライブ会場を中心に、半径1.5kmの人は、結界魔法の中に収納。建物や大型の建造物は、収納ではなく、結界内に模倣した物質を配置……自分で言ってて、意味わからんけど、合ってる?」

「合ってます」


 野外行われるブリリアントカラーライブにおいて、観客の安全性を確保は、最も難しい問題だった。

 しかし、それに対する灯里の回答は、あまりにもあっさりしたものだった。


 灯里の最も得意とする、結界魔法に、観客を含めたライブ会場周辺の人間を招き入れるというものだった。

 すでに、白墨事件で、灯里の結界魔法の実力は証明されている。


 そこから安全性を高める方法として、灯里の普段から使用している、『招く存在の線引き』が行われた。

 今回の場合は、招く存在を人に限定。武器やドローンなどのロボットは、対象外とした。

 そうすることで、人と武器は、別世界の存在となり、お互いが干渉することはできなくなる。

 弊害として、ライブステージや建物にも触れられなくなるという問題はあるが、それは結界内に似たような物体を配置することで、問題を解消。


 つまり、現在、この池袋には、別の世界が重なって存在しているような状態ということだ。

 そして、その線引きは、目の前にいる少女一人の手で決められている。


 考えれば考える程、恐ろしい状態だ。


「ついでに、魔法少女には、全員、護衛をつけてます」

「灯里さんの使い魔?」

「どこどこー?」

「あ……きらぴ……かわっ……!! かわいい……!!」


 ステージ衣装に着替えたひかりときらりに、目を輝かせる灯里に、ふたりも嬉しそうにポーズを取っている。

 その様子に、携帯を手に持ちながら、撮ってはいけないと我慢する灯里に、ふたりは灯里を挟むように立つと、小林に携帯を渡して、写真を撮ってもらう。


「んぁぁぁ~~~~……消しゴムマジックで、真ん中を消しといてくださいぃ……」

「いやいや、大人しくもらっときなって……てか、普通に撮っていいんじゃないの?」

「ステージで撮るのはいいけど、裏で撮るのは、違うじゃないですか……!!」

「えー……灯里ちゃんならいいと思うけど……」

「うん。そうですよ。お母さんたちに、さっき撮ってもらいましたし……」

「それ、身内だもん……!! あと、プロが撮った写真の方が、絶対にいい」


 めんどくさいと口には出さずに、小林はきらりに携帯を返しながら、先程の護衛について聞けば、灯里も思い出したように、声を上げた。

 それと同時に、きらりとひかりの前に現れた、薄いベールのような白い幕。

 見上げれば、薄くぼんやりとしたクラゲのような存在から、垂れ下がっている。


「クラゲガードです。基本的に、見えないようにしてますけど、全員につけてます」

「はぁ……そう……」


 もう感心するしかないというのが本音だった。


 白墨事件のレポートにも、黒い影のような、空を飛ぶ怪魔のような存在が確認されていた。

 それも灯里の魔法だというなら、今のクラゲガードも、今回のため、作り出したのだろう。


「すごーいっ! ずっとついてくる!」

「きらりちゃん、あんまり走ったらダメだよ」


 楽しそうに走り回るきらりに、ひかりも注意するが、ひかりも気になるのか、ベールを不思議そうに触っている。


「え、なにあれ……」

「先輩の魔法。ステージに出る奴、全員につけてるはずだぞ」

「そうなんだ……」


 遠目に、灯里たちの様子を見ていた彩花と桜子も、赫田の言葉に、何も見えない頭上を見上げた。

 


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