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世界に色を付ける系アイドル始めました  作者: 廿楽 亜久
8話 ライブをする理由

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05

 彩花はいつもと特に変わりなく、灯里と接しているようだが、どこか表情が硬かった。


「………」


 原因は明らかで、刹那に言われた”ライブの失敗が全て灯里のせいになる”というものだろう。


 最終的に、灯里自身がやると言ったことは事実だが、彩花からすれば自分が巻き込んだようなもの。

 それに、いくらSランクとはいえ、全責任を負うことになるわけがない。というのは事実。

 さすがの警察も魔法管理局も、もしブリリアントカラーライブで何かしらの事件が起きたとしても、それを個人に全て背負わせることはしない。


 だが、世間がどう思うかはまた別の話だ。


「キラピカコンビが、ブリカラ用アクセサリー制作動画アップしてる!」

「あぁ、そういえばいくつか作るって言ってたね」


 電車の隅で肩をくっつけてスマホを見ている二人。

 都内を走っている電車だけあって、ライブのポスターも張られているが、今のところ彩花に気が付いた様子の客はいない。

 相変わらず、灯里の魔法は、護衛にはもってこいの能力らしい。


「これ、絶対、ラ・ラ・ライス歌うよね」

「うん。って、もしかして、曲目見てない?」


 警備するにあたり、出演者の動きなどの情報は渡されている。もちろん、曲目についても、知らされている。

 警備に絶対的に必要というわけではないが、ほとんどの場合は目を通すことが多い。


「…………代表曲だし、歌うとは思ってたけどさ」


 目を通さなかったのは、単純に灯里がライブを楽しみたいという一点だけなのは想像に易かった。


 中止になるかもと脅されていたのは事実だが、本当は警備なんてしないで、純粋にライブを楽しみたかったのだろう。

 それを、やめさせてしまった。


「……灯里は、やっぱりライブ見たかったよね」

「え、うん。そりゃ」

「ごめんね。巻き込んじゃって」


 楽しみにしていたものを取り上げて、無駄な責任を負わせて、でも、間違っているとは思いたくなかった。

 このまま白墨事件を灯里のせいにしておくなんて、したくなかった。


「でも、私参加しないと、そもそも中止になるって話だったし」

「そうなんだけど、そうなんだけど……灯里の魔法士としての人生が、ライブなんかで泥塗られるかもしれないなんて考えてなかったから」

「………………」


 気まずくて、灯里の方に目をやれなかった。

 これだって、自己満足かもしれない。ブリリアントカラーライブをやめるつもりなんてないんだから、謝ったところで意味はない。


 だが、そっと引かれた背中に足を止めれば、灯里が服を掴んでいたらしい。


「灯里?」

「えっと……よくわからなかったけど、たぶんお互い勘違いしてる。たぶん!」

「……うん? うん。勘違い?」


 意味が分からないと、つい小林へ目をやるが、わからないと手を振られ、灯里も困ったように半開きの口のまま固まっていた。

 そんな中、後ろからやってきた大きな影。


「ヘイ! ヒロ君!」

「……あ゛?」


 いきなり巻き込まれた赫田は、見事に顔を顰めるのであった。


「魔法士云々っていうなら、先輩はもっと前から翌檜に来てんだろ」


 たった一言だった。

 取り留めのない灯里の説明を聞いた赫田が放った回答は。


「Sかどうかはともかく、別に先輩が高ランクの魔法使いだってのは、小せぇ時から知ってんだ。別に、いつでも翌檜には入れたに決まってんだろ」


 測定器についてで測れないのは事実だが、白墨事件といい、隠しているつもりではない灯里の魔法が、実際の測定値と異なっていることに気が付く人は少なくなかった。

 そのほとんどが常に一緒にいる赫田のせいで、気に留めていない。むしろ、ストッパーとしていてほしいということもあったのだろう。

 だが、結局のところ、本人に魔法士になる意思がないのが大きい。


「でも、翌檜に来たってことは魔法士になるってことじゃ……?」

「それは、その……暴発とかも色々あるから、ちゃんと魔法教育を受けてほしいって言われて」


 翌檜学園に入った今だって、魔法士になるかと言われれば、首をかしげてしまう。

 確かに、魔法の才能はあるのだろう。しかし、魔法士といって想像するのは、高い志を持って、犯罪者を逮捕する様子。

 高い志も無ければ、犯罪者を逮捕する体力だってない。つまり、魔法士には向いていないということだ。


「だから、難しいことは考えなくていいんだよ? ライブは見たいけど、中止はもっといやってだけだからさ」


 首を傾げながら微笑む灯里は、


「それに、彩花ちゃんががんばってるのは、応援したいってのが一番強いしね!」


 そう付け足して、胸を張った。


「…………ありがとう」


 その気持ちはきっと嘘じゃない。


 だって、初めて立ったステージで見た目と同じ目をしているから。


「それはそれとして、灯里。ちゃんと、将来のことは考えないとダメだよ」


 魔法士になる、ならないを置いておくなら、それはそれで別の夢が必要になる。

 灯里は、高校2年なのだから、そろそろ進学か、就職かを考え始める時期に入り出しているはずだ。絶対的に器用ではないのだから、早めに準備しておくにこしたことはない。


 そっと顔を逸らした灯里の肩を掴んでおいた。

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