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世界に色を付ける系アイドル始めました  作者: 廿楽 亜久
8話 ライブをする理由

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33/53

01

 ブリリアントカラーライブまで、あと数週間。

 出演する魔法少女の数は、随分と減った。


 実際に事件に巻き込まれた者もいれば、危険を冒してまでライブに参加する必要はないと判断した者もいた。

 ただでさえ、ライブ本番こそが科学推進委員会の本命だという可能性があるのなら、出演を見送るのが普通だ。たった一度の仕事で、今後の人生を棒に振る必要はない。


「残ったのは、腕に自信があるのと、今回のライブに出ないといけないレベルの魔法少女……」


 彩花や桜子のように、ブリリアントカラーライブそのものが中止にならない限り、出演辞退ができない魔法少女以外に残っているのは、何か起きたとしても対応できる自信のある高レベルの魔法使いか、このライブの出演を手放すことのできないレベルの魔法少女。


「さ、桜子? 大丈夫?」


 レッスン場の隅に座りながら、疲れたようにため息をつく桜子に、彩花も動揺しながら声をかけてしまう。

 今日は、密着取材もいない日であり、営業モードは切っているらしい。


「しわ寄せがエグい」

「…………」


 出演する予定だった魔法少女の出演時間は、残ったメンバーに少しずつ振り分けられていた。一人二人なら問題はない。だが、あまりに数が多かった。


「しかも、抜けたのが中堅クラスで、結構出演時間持ってる人も多いし、残った出演者の持ち歌が少なすぎるからって全部トークタイムにわけにいかないのはわかるけど、だからって……」


 桜子は魔法少女歴が長い分、持ち歌も多い。しかも、ライブのメインの出演者である。

 結果、割り振られる割合は自然と多くなり、彩花も桜子とのコラボとしていくつか一緒に歌うことになっていた。


「でも、ちょっと意外だったわね。あのふたりが残るとは思ってなかった」


 ため息交じりに桜子が視線を向けるのは、踊りのレッスンをしているきらりとひかりのふたり。


 正直、キラピカコンビは、テレビ局で襲われたこともあるし、何より最も幼い魔法少女だ。身を守る手段だって持っているわけではない。

 事務所の都合で、売れなければいけないと切羽詰まっているわけではなく、彼女たちのブレイクは、両親が撮影した踊ってみた動画だ。その後もネットタレントとしてブレイクしていて、テレビに出演しなくても十分な利益を上げている。

 なにより、両親が出演を止めてると思っていた。


「本当に、死んじゃうかもしれないのに」


 『魔法使いだから』

 そんな言葉で、何度無責任に放り出されたか。

 魔法が使えなければ、非力だと守ってもらえるのに、碌に使えない魔法のせいで、軽々と命を危険に晒される。


「そのために、灯里が護衛を引き受けてくれたんだから、大丈夫だよ」

「……聞いた。Sランクなんでしょ」


 レッスン場で、複雑な表情で顔を手で覆っている不審者顔負けの世界最高峰の魔法使いである灯里。

 最後の最後まで、レッスン場に入ることを渋っていたが、きらりとひかりに連れ込まれていた。


「その、確かに、色々危ないっていうのはわかってるけど、灯里はすごく強くて、心配はいらないから」


 白墨事件の世界から色を奪った犯人が灯里であることは、桜子にも伝えることはできない、立て続けに起きている襲撃事件に、少しでも安心させるように口にするが、桜子の表情は暗いまま。


「…………私は、アンタとは違うの」


 魔法士のプロパガンダ。つまり、ただの広告塔としての役目である”魔法少女”としてデビューしている彩花と、演技に携わりたくて子役から芸能活動をして、魔力があるからと”魔法少女”になる他なかった桜子では、心持が違う。


 どうして、命を危険に晒してまでライブをしないといけないんだ。

 どうして、下りたいと言ってはいけないんだ。

 どうして、死にたくないと言ってはいけないんだ。


「桜子……」


 彩花の声に、自分の口が余計なことを口走っていないか不安になったが、致命的なことは言っていないはずだ。


 少しだけ開いていた口を一度閉じると、大きく息を吸った。


「そりゃそうでしょ。私は、黒沼先輩と何回かしか会ってないんだから、幼馴染のあんた達とは信頼度が違うっての」


 いつもの自分と同じように、少しだけ憎まれ口の正論を口にすれば、彩花も何も言えないとばかりに視線を逸らした。


「まぁ、魔法少女好きってのはわかったけど。しかも、アニメの方」

「え、そうなの?」


 しかし、桜子の言う通り、部屋に置かれていたグッズたちは、二次元の物が多かったかもしれない。


 魔法少女はその性質上、アニメや漫画の二次元のファンとアイドルや特撮の三次元のファンが存在する。

 もちろん、共存することも多いが、やはりどちらの方が好きというものはあるし、出演している魔法少女もよくコラボしている。


「アンタ、本当に魔法少女に興味なさ過ぎでしょ……ちょっとは調べなさいよ」

「ご、ごめん……」


 魔法少女として活動するようになってからは、仕事の一環として調べるようになったものの、詳しくないのは事実だ。

 特に、最近はインタビューの途中に、他のキャストから好きな魔法少女のエピソードに相槌を打つことも多く、ちょっとした一言を返す必要も増えてきたが、桜子から見ても彩花はうまくなっていると思っていた。


「まぁ、灯里から聞きかじった知識だったり、部屋に飾ってあったなぁ……って物だったりするけど」

「ずっと先輩と住んでなさい」


 やはり、あまり勉強はしてないようだ。

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