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世界に色を付ける系アイドル始めました  作者: 廿楽 亜久
6話 子猫預かります

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04

 連絡をした保護団体から保護可能と返事が日の放課後、昇降口に待つその人に灯里の肩を掴んだ。


「アイドルがいるのは聞いてない」

「でも、彩花ちゃんが見つけてくれたサイトだし」

「そりゃ、まぁ、ありがとうございます」

「あ、いえ、私は調べただけですから……ご迷惑なら」

「あ、いや! そんな迷惑ってわけじゃ! なんつーか、ほら、こんな陰キャみたいな集まりに、アンタみたいな陽キャが付き合うってのは、いや、別にふたりが友達ってのはわかってんっすけど、つか、むしろ俺が邪魔なのか……?」


 妙な結論に達しそうな苅野に、彩花が慌てて止めようとすれば、灯里が顎に手をやり、名案だとばかりに苅野に目をやった。


「陽キャ思考に洗脳する?」

「マジやめて」


 即答する苅野は、少し落ち着いたらしく、ようやく歩き出した。

 メールでは、今日の放課後、保護に来てくれるらしい。


「なんか、付き合ってもらったみたいで、すみません……」


 それほど詳しくない自分でも、今度のライブであるブリリアントカラーライブについては、嫌というほど情報が入る大きなライブだ。

 練習だってあるだろうし、魔法少女襲撃事件のこともある。捨て猫のことで、付き合わせてしまう申し訳なさに、つい謝ってしまえば慌てたように首を横に振られた。


「私も好きで付き合ってるだけですから」


 友達の友達という、どこまで踏み込んでいいかわからない関係に、会話が途切れてしまう。

 なんとも気まずい雰囲気に、灯里は震えた携帯の画面を付けると、嬉しそうな声を上げた。


「ブリカラ先行チケット当たった!!」


 ほらほらと、見せられた画面には、確かにライブのチケット当選の通知が来ていた。


「あとでコンビニ寄っていい?」

「大丈夫。それで、場所は……ぁー……」


 携帯の画面を見ながら、何かを呟いている彩花に、鼻歌でも歌いだしそうな灯里に、ふと苅野が首を傾げた。


「そういや、当日って護衛はしないの? 黒沼、呼ばれそうだけど」


 ただでさえ、魔法少女襲撃事件で既に警戒態勢が引かれているのだ。白墨事件が再来するのではないかとテレビでは騒がれているし、ライブ当日は野外ライブで警備体制について、既にどうするか警察と警備会社が合同で検討しているということまで放送されていた。

 そのため、今ですら護衛に呼ばれている黒沼と赫田は、呼ばれそうなものだが。


「「……」」


 すっかり忘れていたとばかりに、こちらを見つめるふたりに、つい表情が険しくなる。


「そ、そういえば、そんなこと言ってたようなぁ……」

「関係者席一席確保しとくって話の時だよね……」

「おぅ……しっかりしてくれよ。マジで」


 灯里にポンコツなところがある事は知っていたが、どうやら彩花もらしい。


「だって、自分で当てたチケットの方がテンション上がるじゃん! てか、その関係者席絶対呼び出すための見えにくい席じゃん!! 先行チケットなら、中央が外れても、どこかのステージの近めの場所だし! 代打苅野で! 連絡しとくから!! バイト代高いよ! たぶん!」

「ムリ! ムリムリ!! ムチャ言うな! バカ!」

「バフ盛り盛り、使い魔も貸すからぁ!」

「それでなんとかなるなら、Sなんていらねーんだよ!」


 Sランクの代わりなどどう考えても務められるはずがない。子供のように駄々をこねる灯里から逃げるように、少し早歩きで進めば、猫のいる場所に作業着を着た男が立っていた。


「もしかして、連絡をくれた苅野さんですか?」


 軽く頭を下げれば、足元からケージの揺れる音と慣れ親しんだ威嚇の声。


「え、さっきまで大人しかったのに……」

「は、嘘!? こいつ、いつもこんなんですよ?」

「いえいえ。本当に。自分がここに来た時は、エサも普通に食べてくれましたし、大人しくケージに入ってくれましたよ」


 実はすごく嫌われていたのかと、ケージの中で威嚇する猫を見つめる。相変わらず、こちらを見て威嚇しては、時々餌を口に入れては、また威嚇してくる。

 確かに、男の方を見て威嚇している様子はない。


「もしかして、みなさん、魔法使いですか?」

「え、あぁ、まぁそうですね」

「じゃあ、もしかしたら、魔力に反応しているのかもしれませんね。猫はそういうのに敏感ですから」


 大きな魔力を持つ魔法使いを怖がる動物というのは、少なからず存在しており、翌檜学園でも動物に嫌われやすいという生徒は意外に多い。

 理由はわかったが、ここ数日毎日餌を上げていたというのに、威嚇だけはやめてくれないかと、少し寂しい思いもありながら、これが最後だとケージの前に座る。

 

「元気でいろよ。魔力ある奴がいても襲うなよ。あの時、結構痛かったんだからな」


 言葉が通じるかはわからないが、少しだけ威嚇をする声を止めて見つめる猫は、突然立ち上がると前足を強くケージに叩きつけた。


「ホ、ホントダメだからな!?」


 だが、それ以上は威嚇することなく、置かれた餌を忙しいとばかりに食べ始めた。

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