表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界に色を付ける系アイドル始めました  作者: 廿楽 亜久
3話 魔法少女おでかけ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

11/53

03

 灯里に迷惑をかけるかもしれないからと、灯里の行きたい場所から先に行こうと言ったのは事実だ。

 文句を言える立場ではない。


「魔法少女ショップって……」


 灯里が行きたがったのは、リアル、二次元問わず、魔法少女のグッズを集めたショップだった。

 現役の魔法少女が、プライベートで魔法少女ショップにくる事自体、気後れする。その上、ライブのこともあり、宣伝目的のポスターもたくさん貼ってある。


「来てみたかったんだぁ」


 目を輝かせて店内を物色している灯里は、それはもう嬉しそうで、早く店を出ようとは言い出せない。


「……本当に、好きなんだね」

「うん。キラキラしててかわいいでしょ」


 灯里の後ろで、落ち着かなさそうに周囲に見ている彩花は、正直、外で待っていたいというのが本音だった。

 先程の騒ぎのこともあるし、やはり気恥ずかしさが勝る。


「ね、ねぇ……灯里。私、外で待っててもいい?」

「え……」

「さ、さすがに恥ずかしい……」


 自分のポスターに囲まれるのは慣れない。

 その上、周りから聞こえる会話は、自分にも関わる会話が多く、さすがに気になる。


 だが、魔法少女ショップに現役魔法少女がいる状況で、周りの客は彩花のことに気が付いていないように、各々が買い物を続けている。

 会話や買っている物から察するに、彩花のことを知らないわけではなく、いることに気が付いていないのだ。

 これが、先程灯里の言った『任せて』ということなのだろう。


「店のすぐ外にいるから……それなら、灯里の魔法も解けない?」

「そのくらいなら全然。じゃあ、早めに選ぶね」

「ううん! 大丈夫。ゆっくりで。来たかったんでしょ?」


 魔法には、認識を阻害する魔法もあったはずだ。

 洗脳とは違うが、比較的簡単な精神系の魔法であり、多少洗脳ができると言っていた灯里であれば、その魔法が使えるのだろう。

 店の外で、ようやく息をつく。


 今までなら、通り過ぎていく人たちが横目にこちらを見ていたというのに、今はすっかりこちらに興味もなさそうだ。

 久々に感じる感覚に、手元ではなく復興を始めている街並みに目をやりながら、灯里を待つ。


『やっと見つけた……』


 SNSで彩花の目撃情報を見かけてから、監視カメラをハッキングして、ようやく見つけたその姿。


『なんだよ。ショップ前とか……エゴサとかするタイプかよ』


 先程散々話題になっていたというのに、意外なことに今は周りには誰もいない。

 誰も彩花に気が付いていないかのように素通りしている。


『ま、さすがにこんだけ人がいれば話題にはなんだろ』


 少し違和感はあったが、人目は多い。

 椅子をくるりと回して、別のパソコンを操作する。


「お待たせー」


 買いたい物は買えたのか、いつもより緩く嬉しそうにしている灯里に、壁から背中を離す。


「じゃあ、次は彩花ちゃんの服だね」

「うん。あ、赫田がさすがに下着は自分で買えって言ってたよ」

「う゛……」

「待って。本当に、赫田が服買ってるの? せめて、お母さんとかにしない?」


 服に興味が無ければ、親が買ってくる服を着ている人はよく聞くし、別に気にしないが、さすがに兄弟でもない男性に買ってもらっているのはどうかと思う。

 下着のことを頼まれた時も、大澤も小林もその場にいたが、全員で聞き返してしまった。


「基本的にはお母さんだったよ……? ヒロくんは、たまに…………うん。たまに」

「……サイズわからないとか、ないよね?」

「さすがにわかるよ。服は」


 ちゃんとサイズが測れる場所に行こうと、何も言わずに心に決めた彩花は、足を向けていた方向からそっと逸らす。

 どこが良いだろうかと、考えていると、ふと耳に入ったモーター音。


「……」


 パトロール用のドローンだ。

 決められた順路には必ず飛んでいるが、池袋は白墨事件のこともあり、より数が多い。

 先程から何度か見ているが、目につく程度には多い。


「ドローン? 東京って本当に多いね」

「まぁ、そうだね。茨城は少ないの?」

「つくば駅なら勝てる?」

「基準がわかんない……」


 たぶん、田舎の都会ってやつだろう。

 どの程度かわからないドローンの数は置いておいて、向かう店を決めて向かおうとすれば、妙に耳につく音。

 ちらりと目を向ければ、先程のドローンがまだそこに飛んでいた。


 父の仕事の関係上、ドローンの巡回について、いくつか知っていることがある。

 まず、ひとの密集地帯の上空を通ることはしない。

 これは単に事故で落ちた時の被害が出ないように。


 そして、異常がない時、その場に1分以上留まることはない。


「――――」


 二つ目の理由は、パトロール用ドローンに偽装し、ストーカーを行った事例があるから。


 ドローンに目はないが、ドローンと目が合った気がした。


「灯里!!」


 灯里を庇うように前に立ち、魔法で作った障壁を作った次の瞬間、ドローンから発砲音。

 撃ってきた。

 その事実を理解するのと同時に、障壁が砕ける感覚。


「――ッ!」


 アンチマジック弾。

 文字通り、魔法障壁を破壊することに特化した銃弾であり、魔法使いの天敵。

 高ランクの魔法使いの障壁ならば耐えるかもしれないが、彩花のレベルでは容易く貫通してくる。


 せめて、後ろにいる灯里に当たらないようにと、足に力を込めるが、痛みは一向に来ない。

 どういうことかと、振り返ろうとした時、後ろから回された手が自分を抱き寄せる。


「灯里……?」


 黒い魔力がドローンに放たれ、地面に落ちた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ