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ルイス・フロイス天道記〜Historia de Japon  作者: アサシン
領地経営から始める戦国攻略
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追撃するべきか、引くべきか?それが問題だ

♠️天正3年5月初旬・断上山


 昔、新聞を読んでいると〝押し目買いに注意〟という記事があって、(【押し目買い】とはなんぞや?)と思ったことがある。


 押し目とは、株や暗号資産などの投資対象の価格が下がった時のことを指すそうだ。


 押し目買いとは、上がり相場の中で投資対象の価格が下がった時に、強気な買いに走ることらしい。


 問題は…、本当にそれが上がり相場なのか?売りが売りを呼ぶような、さらなる暴落の予兆ではないのか?ということだろう。



 投資においては、買うか売るか、現状維持でいくかの三択がありそうだ。


 他国との戦争においても、似たような決断を迫られる時がある。


 勝ち戦のあと、相手を追撃するべきか?引くべきか?はたまた、別の戦略をたてるべきなのか?


 ただし、戦争の場合は投資と違って、対象がお金や物資だけでなく人間。あるいは、国。だったりもするわけで…。


 人の生き死にや国家の存亡がかかる判断はより慎重に行わなければならないのは、明らかである。


 手負いの猛獣を下手につつくと、逆襲されてこちらが致命傷を負わされかねないし。



♠️

「この戦は我らの勝ちじゃ。あとは、敗走した武田勝頼をどこまで追うかじゃが…権六、どう思う?」


 と、信長様が柴田勝家殿に問う。


 戦闘が終わって、重臣たちが集められている。


 今行われているのは、武田勝頼をどこまで追うべきなのかという評定である。


「は。勝頼の首をとるまで追うべきかと」



「ふむ。権六らしい意見じゃな。十兵衛はどう思う?」


 今度は、明智光秀殿に問う。


 こういう場合、トップが意見をだしてごり押しする、いわゆる、トップダウンな決定はあまり下されない。


 議論を百出させて、自分の意見に近いことを言った者を「おまえ、いいことを言った」と褒めるのである。


 その習わしからいうと…武田勝頼が【御旗】【盾なし】を用いて強制的に議論を終わらせたのは、やはり、愚策であっただろう。



「は。此度の戦。大軍を率い、矢玉を撃ちすぎました。このまま、甲斐へ攻めこもうにも、矢玉や兵糧が足りませぬ。これ以上の追撃は無理があると存じまする。それに、手負いの猛獣を仕留めるには、もっと相手を弱らせたほうが良いかと…」



「その策はあるか?」



「いえ、策を立てるには情報を集めませんと…。一旦ひいて、情報を集めてはいかがでしょう??」



「ふむ…、瑠偉はどう思う?」


 今度は、俺の番か…。


「大方、十兵衛殿の意見に賛成でございますが…先程、武田の本陣に潜入させた忍びが帰ってきたところです」


 忍びというか、式神だが。


「ふ。武田の陣中に忍びを放っておいたのか?で、なにか有益な情報は得られたのか?」


「はい。戦の途中で、穴山・小山田などの武田の一門衆が離反したよしにございます。此度の戦では、武田の重臣のほとんどか討ち死にしてもおり…。武田勝頼は責任を問われるはず。これを機に、武田の一門衆や甲斐の国人衆たちに調略を仕掛けるのが良いかと存じます。それと、甲斐本国が遠くて兵站が不安なのであれば、隣国である信濃から攻略してはいかがでしょう??」



「それじゃ!」



「恐れ入ります」  



「信濃を攻略するのは、信濃の近くの所領を預けている半介と新五郎に任すべきであろうが…半介はどうした?」


 信長様は、その場にいない佐久間信盛殿を探しながら、けげんそうに言った。


「その報告はそれがしがいたします」


 末席から声を上げたのは水野殿である。


「ふむ」


「戦の最中に〝敵は断上山にあり〟などという妄言を吐いたのでひっとらえてあります!」


「はぁっつつつ?……。あやつのとぼけ面を今すぐ、首ごとすっ飛ばしてやりたい!瑠偉っ、どう思う?」


「はぁ…。尾張に帰ってから詳しく詮議すべきかと。〝疑わしきは、罰せず〟でございます」


「ふーむ…まぁ、二郎三郎殿が治る三河の地。勝ち戦の祝いの席でもある。血で汚すこともない…か。…口惜しいが…尾張にひったてて、牢にぶち込んでおけ!帰ったら、儂自ら詮議してくれる」


「ご配慮、感謝いたします」


 こう言ったのは徳川家康殿だ。


「場が白けてしまったな。勝鬨でもあげておくか。…えいえい」



「「「おー!!!」」」」


「えいえい」


「「「おー!!!」」」



 これで、帰れる。


 今回は、ずっと本陣に控えていたんだ。このまま帰っても、「危険なことをしないでください!死んだらどうするのです!!」と、綾達に怒られたりしないだろう。


 怒られない…よね?


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