反省をふまえて
天正2年1月3日 宇佐山城
宇佐山城にきて、一晩泊まった。朝だ。
昨日はオモイカネ様から説得や信頼関係の構築に関するレクチャーを受けた。
わかったのは、俺と十兵衛殿との間に信頼関係がなかったということである。
で、レクチャーをうけて学んだ、相手との信頼関係の構築方法についてだが…。
1.相手に心から関心をもつ
2.相手が喜ぶ言葉をかける
3.相手の予想を上回る成果をだす
4.常に相手の立場にたって話をする
5.相手の話を聞く時はリアクションを普段の1.5倍にすることを意識する
6.ミラーリングを意識する
7.さりげなく相手に触れる
8.相手を100%信頼する
だそうだ。
他には、無理なことははじめから無理だと言う。失敗したら言い訳せずに素直に謝る。どんな些細な約束も必ず守る。普段から裏表のない真っ直ぐな言動を心がける。とかもあったな。
あたり前のことじゃないかと。何を今更そんなことを学習しているんだ?と言われそうな内容だが…。
お互いに相手が苦手、もしくは…嫌い(?)な場合はそれが相当難しい。相手に好意を持っていれば、これらのことは、そもそも意識しなくても自然にできて当然なことなのだ。
苦手な相手にミラーリング?触れる?100%信じる?
…うん。無理なことは、はじめから無理だと言っておく。下剋上上等な戦国時代においては相手を100%信じることこそがウルトラCなのではないだろうか?西洋人風にいうならば、Nice joke!といったところ。
まぁ、説得や信頼関係の構築に難しいことはあまり必要なく、基本が大事ってことはわかった。というか、再確認した。
これから十兵衛殿と朝ご飯を食べる。昨晩、出来てなかったことで、意識すれば出来ることは心がけるようにしよう。
具体的には…、相手の立場に立って話す。リアクションを普段の1.5倍にするってところ。相手を説得するための熱意ももっと持とう。
それと、俺に出来ることと出来ないことを見極めて、出来ることは精一杯やると言ったところか?
そもそも、この仲裁の話、俺にはなんのメリットもないんだよなぁ。そのため、この話にのぞむ俺の熱意やモチベーションなどがものすごく低かったことも素直に認める。
♠️
「おはようございまする。昨晩はよく眠れましたかな?」
十兵衛殿が俺にそう声をかけた。目の前には山盛りのご飯と味噌汁、琵琶湖でとれた焼き魚、漬物などが並んでいる。
「おはようございます。いろいろ考えごとをしておりましたが、疲れていたのかぐっすりと眠りました。それはともかく…昨日は、事態を把握しまちがっていたようで申し訳ございませんでした」
「いえいえ」
「十兵衛殿さえ、手を引いてくだされば簡単に解決すると見込んでおりましたが…事態はもっと複雑でしたね。私に仲裁させていただく件、考えてくださいましたか?」
「ええ。こちらこそせっかく当方へ足を運んでくださったというのに、頭に血をのばらしてしまい申し訳ございませんでした。しかし、仲裁とはどうやるのです?」
十兵衛殿はそんなことが簡単に出来るのか?というような疑いの眼差しを俺に向けてきた。
「現時点ではなんともいいかねます。それがしに何が出来て、何が出来ないか…まずは双方の言い分をよく聞いて事態の正確な把握に努めるべきでしょうね。一鉄殿の言い分も聞きに行きますが…その前に…一鉄殿の娘婿である那波殿と斎藤殿からもお話をうかがわせていただきましょう」
「ふーむ…。内蔵介もですか?」
「ええ。斎藤内蔵介どのがそもそも那波殿を十兵衛殿に推挙したのでしょう?斎藤殿には四国攻めのことに関しても伺わなくてはならないことがございますゆえ。その話あいの席には当然、十兵衛殿にも立ち会っていただきますよ?」
そう言うと、十兵衛殿はギョっとした顔をした。
「四国攻めに介入しようとしていたこともご存知でしたか?全く、瑠偉殿はどんな目と耳を持っておるのじゃ。それに瑠偉殿にはこれらの件に関わってもなんの得もありますまいに…」
…。
ほんとだよ。全く。
「なんの得もありませんが…。周囲が敵だらけの今、家中が分裂するようなことは避けねばなりませぬ。そのために動いているそれがしに、骨折り損のくたびれ儲けをさせないでもらいたいものですね」
俺はそう本音をいって、苦笑した。
「ふむ…。自分に何の得にもならないことでも織田家中のために必死に働くとは…瑠偉殿を少し見直しましたぞ…。斎藤、那波の両名とたしかにお引き合わせいたしましょう。朝餉が終わったら、その話し合いですな」
見直した…ね。
「はは…私をどんな人間だと思われていることやら…。話し合い、よろしくお願いいたします」
「こちらこそ」
一晩、お互いに頭を冷やしたことで、少しは腹をわって話せるようになったかな?ここからが大変そうだが…。




