表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ルイス・フロイス天道記〜Historia de Japon  作者: アサシン
過労死からの転生
6/77

年収400貫で何が出来るか全力で考えてみた


 永禄12年4月8日 本能寺客間


 昨日は信長様が俺の話を聞きたいと言って、夕餉(ゆうげ)に呼ばれ、そのまま泊まることになった。


 昨日した話は未来の世界に関する事だ。


 科学の発展。二度にわたる世界大戦。そして世界を焼き尽くしかねない核兵器の登場とその脅威から生まれた薄氷の上にたつ危うい均衡と平和。


 その均衡が崩れた時、世界は終わる。


 この状態は西洋的な一神教の考え方に基づく自然を支配しようとする概念から生まれたのではないかという話もした。


 確かにその考え方が科学の発展をうながし、俺達の生活は便利になった。


 しかし俺が生きていた未来において、求められるのは自然やいろいろな物事と共生することを目指す東洋的な多神教の概念なのではないだろうか?とも。


 西洋的な科学と東洋的な共生の概念の両立。


 すなわち、和魂洋才こそがこれから俺達が目指すべき道だと。


 信長様はその話に聞き入った。


 そして、「人類は未来に自らを滅ぼす兵器をつくる…とな。そこで、和魂洋才か。…ふむ。そのための戦略を考えよ」


 と言われた。



 それから俺は、寝床についてこれからやるべきことを考えた。戦略を練ったのである。


 ♠️


 年収400貫。上級武士の端くれくらいの給金である。織田信長総合株式会社本社の平の取締役(通称・ひらとり)といったところだろうか?


 給金をもらうからには、未来人たる俺にしかできない特別な仕事がしたい。


 武将は給金をもらうサラリーマンであると同時に人を雇う個人事業主でもある。


 兵士を何人雇うかは個人の裁量にかかっている。出世がしたければ、普通は兵士を出来るだけ多く雇うことだろう。


 だが、織田信長総合商社においてはもっと違う物が求められると考える。ただ、戦争をして領地を増やすことを目的としているのではない。天下布武の印象のもと、戦乱を静めて天下を平定することを目指しているのだ。


 俺の使命は、その先にある。昨日、信長様に話したように、世界を制し和魂洋才の概念を広めること。


 最近の研究において、天下とは京都とその周辺、五畿内を指すのではないかという説があるが…五畿内を掌握したくらいで満足してもらっては困る。


 俺の使命は、織田信長を世界の覇者にすることなのだ。その観点からいえば、目先の兵力にだけソースを割くわけにはいかない。


 …未来への投資。


 そう。未来への投資。つまり世界を見据えた人材の育成も必要であろう。


 ふーむ…例えば、信長様の小姓衆を世界を股にかける人材にそだてるとか。


 うん。これはありだ。


 小姓衆だけではなく、女性も育てたい。侍女だ。


 読み書きそろばんが出来、若くして夫を亡くし幼い子供を抱えて生活に困っているような侍女を集め、相互に子育てを助け合わせながら、海外の語学や風習、政治に関することなどを教えてはどうか?将来、外交官や官僚するためだ。


 世界をおさめるためには、その地の言語が話せる外交官は必須だろう。しかも大量に。


 子持ちの侍女に教育を施しておけば、母から子にその言語が伝わる。


 子供は周りの友達にその言語を教えるかもしれない。


 そうすれば、侍女1人を育てる手間で複数の人間にその言語が広まる可能性がある。



 相手は織田信長様の小姓衆であり侍女達だ。生徒を集める手間も省ける。



 あとは、普通に兵を養う。


 年7貫で1人の兵士を雇うことができるようだ。俺の給金だと50人ほどは雇えるか。

 部隊を作るなら、最新式の鉄砲と火薬、銃弾を装備させたい。


 そのためには、研究費がいる。最新式の鉄砲と火薬と銃弾を作るから金と研究スタッフと研究施設をくれと、信長様にお頼みしなければ。


(雇われてさっそく金の無心か…)


 だが、この研究も教育も全ては織田家の将来のため。とくに火薬の原料となる硝石は、国内で効率的に生産する方法が確立されておらず、海外との貿易でぼったくられ放題のはずだ。


 硝石の有効な産出法の確立。そして命中精度、威力、射程距離、装填速度が桁違いに改良された鉄砲の開発。これらをプレゼンすれば、信長様は大喜びで予算を通してくれると思う。



 怒られないよね?



 今朝も信長様と朝餉を共にすることになっているので、昨日考えたことを戦略と一緒にプレゼンしようと思う。



 ♠️

 本能寺の信長様の部屋に行って朝餉を共にしている。


 食膳に並ぶは、青菜のおひたし、パサパサした山盛りのご飯、味噌汁、塩辛い漬けもの、高野どうふだ。寺であるためか魚はない。


「昨日はよく眠れたか?」

 信長様が問う。



「はい。昨日命じられた戦略を考えていたら、いつの間にかぐっすり寝ておりました」



「で何をするのじゃ?」



「はい。和魂洋才の実現のために、我らが世界を制します。そのためにまず、鉄砲の改良と火薬の国産化を行います。ただそれを行うための職人や資金の方は…かなりの額になりそうなので織田様をお頼りせねばならなさそうなのですが…」

 と俺は申し訳なさそうに言ってみた。



「ほう…。鉄砲の改良と火薬の国産化か。どうやるのじゃ?」

 信長様は、興味しんしんで身を乗り出す。


 まず鉄砲の改良といっても、いきなり元込め式の連発銃が作れるかといえば無理がある。この銃が出来たのは200年ほど先のヨーロッパにおいてであり技術の格差がありすぎる。



「今の火縄銃の命中精度が悪いです。なぜ、命中精度が悪いのかというと、弾丸が丸いからです。丸いと空気というか風?の影響を受けやすいのです。なので弾丸は流線型にして、錐揉み状に飛んでいくようにしなければなりません」



「ほう。…」



 まず最初に作るのは、銃身に旋条跡を刻んだ鉄砲―ライフルドマスケットとそのための銃弾―ミニエー弾だ。金属性の薬莢に加工するのは今は難しいから紙製の薬莢を作る。また、マスケットといってもフリントロック式ではなく火縄式でつくる。日本ではフリントロック式銃の着火に用いる蛍石(火打ち石)の質が低いからだ。


 日本は、湿気が強く紙がしけりやすいけど。火縄をしけりにくくする改良技術があったはずなのでそれも問題なかろう。



 火薬は従来の黒色火薬では暴発しやすいので半炭化状の炭を加えて褐色火薬にする。


 火薬に使う硝石は硝石丘法というものを用いて国産化したい。このやり方は、量は取れるができるまで数年かかるので、それまでは輸入に頼るしかないが…。



 結論。ライフルドマスケットはこれまでの火縄銃に比べ、飛距離は三倍、充填速度は3分2、弾道が安定することにより命中率は桁違いに上がることになる。硝石も国産化すればぼったくられないし外国に付け込まれる隙も与えないので是非やるべき。



「なるほどな」

 俺が話し終わると信長様は感心したように頷いた。



「昨日の今日でこのような案をもってくるとは…感心したぞ?」



「ありがとうございます。」



「ふむ。金を出しても良い。だが…」


「だが?」


「いや、一応重臣どもにもはかろうと思ってな。反発を招きたくないからな。重臣達をあつめて評定を開く。貴様の紹介もするので、でろ」


「ははー」


 家臣にはかる?信長様が??あ、家臣の反発を招いて謀叛にあった話を気にしてるみたい。いい傾向なのかもな。


「他に画期的な案はあるか?」


 信長様が俺にそう聞いた。


「は」


 俺は、信長様の小性や子持ちの侍女や職人の子供達などに世界の主だった言語や風習、学問や技術などを教える学校を作りたいと申し出た。


 西洋の科学と東洋の考え方を両方とも教える。


 和魂洋才を持つ人物を育てるのである。


「教育か。…良かろう。岐阜にいる儂のお気に入りの小性や侍女を選りすぐって数名お主に預けてやろう。…実に惜しいことだが気に入ったものがおったら、お主が引き抜いても良い。まぁその時は儂に一言、断って欲しいけどな」


「は。ありがとうございます」


 信長様お気に入りの小性や侍女を預かるもしくはもらいうけるか。信長様が気にいるほどの者たち。どんな人材がいるか楽しみだ。

今回調べてて、びっくりしたのは、足軽の年収ですね。年収35万て…。何度調べてもその数字なのです。当時は物価が安かったんですかね。だとしたら年収1000万は破格の待遇ですね。江戸時代の下女の年収が3両ですから一両10万として年収30万円。下女と同じような給料で命がけで働く足軽さんは大変です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] ふぅおおお(゜∀゜) リアルスペックに対する収入が、リアルだぁ((((;゜Д゜))))))) さらにオプションの神二柱を加えると、むしろ信長部下に雇えるくらいの勢い(゜∀゜)フフフ …
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ