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ルイス・フロイス天道記〜Historia de Japon  作者: アサシン
領地経営から始める戦国攻略
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後世にのこるもの

天正2年1月2日 宇佐山城


 俺は、市殿や義娘たちと朝食を取ったあと、南滋賀にある宇佐山城へ向かった。



 この城は本来なら坂本城の完成に伴って元亀2年に廃城となるはずだった。が、比叡山焼き討ちが起こらなかったために坂本城はまだ完成されておらず、この城は廃城されていない。


 不便な山城であるがゆえに十兵衛殿は妻子を伴っておらず、単身赴任しているけれど。


 宇佐山の標高は335メートルほどだが、斜面が急で登るのに難儀する。仮屋とはいえ十兵衛殿はよくこんなところに住もうと考えたな。


 宇佐山城は織田家中の森可成殿が自身が討ち死にしながらも、浅井・朝倉連合軍三万人の猛攻を守備兵一千人で援軍がくるまで耐えたほどの城だ。


 おれは、ぜーぜー言いながら急な斜面を登る。


 俺もこの前まで立てこもっていた横山城に3日後くらいに引っ越す。しかしながら…


(居城は平城にかぎるなぁ)




 俺は今浜に城と住居を大急ぎで建設中である。城の完成はあと、二ヶ月半。住居はあと半月足らずで完成する予定だ。それまでの辛抱か。


 とにかく、城についた。これから明智十兵衛殿と会って話をする。


♠️


「これは瑠偉殿、ようこそお越しくだされた。こんなところまで、何用でござる?」


 信長様が呼ぶところの金柑、こと、明智十兵衛殿が茶を持って入ってきて、開口一番にそう言った。


 麒麟がくるとかこないとかの話では、どのへんが金柑なのかよくわからないが…光秀殿の容姿はその麒麟がくるとかこないとかの話の主人公によく似ている気がする。



「山陰地方攻めの準備と領地経営でお忙しいところを突然の訪問で申し訳ござらぬ。法度のことでご相談が…。」



「山陰地方攻めは瑠偉殿が私を推挙してくだされたとか。ありがとうございまする」


 十兵衛殿は上機嫌にそう言った。


「いえいえ。丹波の隣の国である因幡は、丹波同様に幕臣が多く、国人領主が割拠していて、人心も複雑で攻略が難しい地。丹波同様、幕臣のことに詳しい十兵衛殿が適任です」




「さすがは瑠偉殿。宣教師として諸国をめぐっただけあって、この国の地理風俗にも詳しいですな。して、法度のご相談とは?」



「弾正忠様や評定衆達と法度を取りまとめているのはご存知かと存じますが、だいたいまとまりました。法度を交付する前に法度のことにも詳しそうな十兵衛殿にも目を通してもらって、ご意見をうかがってみたくなりまして。これがその法度でござる」


 そう言っておれは法度をわたす。これには俺の草案に信長様がだいぶ手を加えている。


 まぁ、純粋に意見を聞きにきたわけじゃないけど、話のとっかかりとしてはこんな物だろう。



「それはどうも。拝見いたします」

 


 しばらくだまって法度の草案に目を通していた十兵衛殿が目を通し終わったのか、口を開いた。


「大方、内容は結構なようでござるが…」


「が?なんでしょう」



「いくつか、これが後世にまで残ると考えると、どうなのかと考えられる文章がございますな」



 この法度が後世にまでのこると考えると、どうなのかと考えられる文章があるだって?うわっ、嫌な言い回し。


 後世にどう残るかって言えば、十兵衛殿の裏切りは戦国時代最大の謎だよ。


 誰だ?明智光秀家中軍法の最後に〝瓦礫のようにうもれていた自分に大軍をお預けくだされた主君のためにきちんと軍を統制しないと申し訳が立たない〟みたいなことを書いたのは。


 そして、それを書いた一年後に謀反をおこしたのは。


 法度にかかわっている俺の目からはそんな軍法を作ること自体が越権行為にしか見えなくなってしまったが。



「どのへんがでしょう?」


「たとえば、最後の一文。要約すると、〝何事も信長(様)に相談せよ。だからといって、内心、これはどうかと思うことを表面だけ取り繕って従うことをしてはならない。意見があるならちゃんと言うこと〟ここまでは良いでしょう。しかしながら…〝寝る時も、信長(様)に足を向けて寝ないくらいの心持ちでいれば武運も長久し、心安くいられるだろう〟という一文はいります??寝る時の足を向ける方向にまで気を配らなければならぬのでござるか??弾正忠様はそういうお人だと後世の人からみなされるおそれがあると存ずるが…」


 …。


 あからさまに信長様が自ら付け加えたとわかる一文によくつっこみを入れれたな。これ、信長様の前でも言うんだろうな。うん。十兵衛殿なら言いそう。




「それは、弾正忠様自らが付け加えられた文なのですが…。それがしはそれを読んだとき、クスッと笑ってしまいそうになりました。弾正忠様一流の諧謔(かいぎゃく)というものでしょう。」



「いいえ。こんなことを書くべきではございませんな」



「では、弾正忠様本人にそうおっしゃられればいいと思います。後世の人にどう見られるか考えて、そんな文は法度に載せるべきではないと。弾正忠様本人が〝これはどうなのかと思うことがあれば、遠慮せず言え。〟と書いておられるのですから」



「ふむ。それは…」  



「言えぬのですか?それは意外。絶対、言うと思ったのですが…。まぁいいです。それがしが相談したいのは、そこではなくてですね。それがしが提案した部分に関してなのですよ。喧嘩両成敗のところについて。早速、この項目を適用すべきかどうか迷う案件が出てきまして。問題が表面化すると、それがしにも意見を求められそうなのですよ。どう意見を言ったものか、ほとほと困り抜いておりまして」



「そのような案件がございまするのか…。どのようなものか、うかがいましょう」


「はい。それがしの与力である、稲葉一鉄殿の家臣を一鉄殿の断りもなく引き抜こうとしている人がいると耳にしたのでござる。早晩、一鉄殿本人が弾正忠様にそのことを訴えそうなのでございますよ。まだ、弾正忠様のお耳にこのことは届いていないようなのですが…どうしたものでしょうね?」


「その件でござるか…。どうやって瑠偉殿のお耳に届いたものやら…。当家を内偵でもしておられるのか?」


 十兵衛殿は俺を咎めるようにそう言った。



「これは、心外。ただ、朝輝教の教主などをしていると勝手にその手の話が耳に入ってくるだけの話」


 いや、十兵衛殿だけでなく藤吉郎殿や佐久間殿・林殿や徳川殿、武田勝頼殿らへんは式神をつけて常に見張っているけどね。


「そのおっしゃりようからすると、もしや…わが家臣が瑠偉殿のお耳にそのことを伝えたわけでござるか…」



「ま、そんなところです。一鉄殿はそれがしの寄子だし、帰蝶様からは十兵衛殿のことをよろしくと頼まれているし、金ヶ崎の戦いでは十兵衛殿に救援していただいた恩もあります。この件は問題が表面化する前に出来るだけ穏便に済ましたいと考えて相談しに参ったのですが、どうされます?」


 俺はこの問題を解決する一番穏便なやり方を十兵衛殿本人の口からいわせようと、そう問いかけるのだった。


「どうしろというのです?」


 十兵衛殿は怒ったようにそう言った。怒ったというか…殺気にちかいものも感じられるような…。


 てか、俺、十兵衛殿が殺気をはなたないといけないようなこと言った??生きて帰れるかな、俺?


 市殿に、話があるから無事に帰ってきてくださいねっ。と言われているのだけど。

アルファポリスとカクヨムに改稿して載せます。アルファポリスさんとカクヨムさんに載せる方が軌道にのったら、こちらも改稿します。


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