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ルイス・フロイス天道記〜Historia de Japon  作者: アサシン
領地経営から始める戦国攻略
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新婚生活は大忙しですが、何か?

天正2年1月2日 フロイス屋敷


 新年会が終わった次の日の朝だ。俺はいつも通りの時間に目覚める。


 冬の朝はとても寒いが、腕の中にえもいえぬ柔らかさと人肌の温もりを感じる。


 昨日も市殿と子作りに励んだからな。


 新年会で、藤吉郎殿に言われた言葉。お下品ではあったけど、間違っていない。新婚生活は大忙しですが、何か?



 そんな幸せな生活の中でも、考えなければならないことがある。


 昨日、一家団欒の中でちらっと考えたことだ。――明智光秀殿の攻略法をみつけることである。


 俺も、戦国時代に来ていろいろなことを経験してきた。その中で、新たに分かってきたことも多い。



 例えば、法度について。


 俺が提案した法度は、史実において信長様が柴田勝家殿に対してあてた手紙である〝越前国掟条々〟の他に、武田信玄が交付した〝甲州法度次第〟や明智光秀が交付した〝明智光秀家中軍法〟なども参考にしている。


 問題はその〝明智光秀家中軍法〟。織田家中の明確な軍法が見つかっていないことから、明智光秀は法制面で織田信長の実力を上回っていたのではないか?とする研究があるようだが…。


(なぜ、一家臣が自分の軍団独自のルールを作るのか?)


 軍法を作るにしても、考えがあるのなら信長様に提案しろよ。


 俺は法度をつくるにしても、独自ルールにせずに織田家中全体のものとして提案したぞ?


 しかも、信長様が自らの手でつけ加えるべき条項は省く配慮までした。


 信長様を差し置いて、自分の軍団の…いや、信長様から預かった軍団の独自ルールを作るとは、越権行為とみなされても仕方ないのではなかろうか??



 次に城作りについて。


 入れ替わる前の本来のルイス・フロイスは後に信長様が建てた安土城を見て、〝日本で建てられたものの中でもっとも壮麗…その塔は気品があり豪華で我々の塔を凌ぐ〟と称した。


 では天下第二の城はどれか?


 これもルイス・フロイスの記述によるものだが…〝明智光秀の作った坂本城は壮大かつ華麗な城で安土城に次ぐもの〟とのこと。


 だが…城を安土城に次ぐもの称されるほど立派にする意味はなんだ?


 たしかに信長様は、俺と光秀殿に安土城の両翼となる城を築けとお命じになられた。史実においては、光秀殿と秀吉殿にだが…。


 俺は、防衛力や耐震性や耐火性に優れた堅固な城を築こうとは考えたけど、華美な城を築こうとはまったく考えなかった。


 天下布武の印章を掲げられている信長様なら華美な城を作って権威を誇示する必要性があるかもしれない。


 しかし、天下に野心が全くない俺としては華美で立派な城を築くことなど、単なる金の無駄使いとしか思えないのである。



 そういえば光秀殿は二条城完成式典の時も、信長様に断りもなく式典を華美にしすぎて怒られていたな…。


 権威を華美に飾ることにこだわりでもあるのか?しかも、自分の主君たる信長様を軽んじているし。


 これまでのことをまとめてみると…主君から預かった軍団のルールを勝手に作る。城は必要以上に立派に作る。


 式典の接待役を命じられたら、主君に相談もせず勝手に式典を必要以上に華美にする。かといってもう一方の主君である将軍に忠誠を尽くすかと言えば、将軍追放のときに幕臣を織田方や自分の家臣にひきこんでその功績で城持ちに出世する。



(その働きは信長様的には助かったのかもしれないが…なんだかなぁ)



 挙げ句の果てには、同僚から勝手に家臣を奪って、それを信長様に咎められても無視をする…か。


 見えてくるのは…信長様軽視の姿勢と、自分の実力を周囲に見せつけたいという自己顕示欲。あるいは信長様にとってかわって、自分が天下を握りたいという野心か?



(なるほど。明智光秀とはこういう男か。…これは…ちょっと、お灸をすえておいた方が良さそうかな?)


 同僚に対してお灸を据えるというのも、気が進まないのだが…


 そんなことを考えていると……


「んっんー」


 市殿が俺の腕の中でみじろぎをした。


 どうやら起きるようだ。


♠️


「おはようございます。どうされました?難しいお顔をされていますね?」


 市殿は間近で俺の顔をみつめながら、そう言った。


(かわいいな。もう)


 俺はそう思いながら、真面目に答える。


「いや、ちょっと考えごとをしてて」



「なにか、ございましたか??」


「うん。明智十兵衛殿のことなんだけどね。稲葉一鉄殿の家臣を勝手に引き抜こうとして、訴えられそうになってて…。困ったお人だなーって」



「それは、一悶着起きそうですね。……なるほど…四面楚歌、でごさいますか?」


 市殿は、俺の目を覗きこんでそう言った。


 ていうか、事あるごとにそれを言うの、やめてもらいたい。まぁ、複雑な心境なのはわかっているが。



「……。今回はそれを仄めかすかもしれない。知人や同僚にそんなことをしたくないのだけれど。しかも仄めかしただけでわかってくれるかどうか…」


 俺は市殿に本音を話す。市殿の目には俺が困り果てているのが、ありありと分かるだろう。



 市殿は心配そうに俺の頬に手をそっと当てた。


 市殿の手は少し冷たくて心地いい。


 俺より体温は低めかな?


「それで、難しいお顔をされていたのですね。申し訳ございませぬ。もう、四面楚歌のことは申しませぬ」


 市殿は申し訳無さそうにそう言った。


「いや、話を聞いてくれるだけで俺も楽になれるし。これからも忌憚のない意見を言ってほしい」


 俺はそういって、顔に当てられていた手を握って背中に回し、市殿を抱きしめる。



「そうですか?では、楓炉の家のために申し上げなければならないこともあります。しかし…今はもう少しこうしててもいいですかっ?」


 そう言って、市殿は俺に抱きつく力を強めた。


 何か不安なことでもあるのだろうか?



「家のことか…。とても気になるけれど…。俺も今は、何も考えずにこうしていたい。外は寒いし…ね」



「ええ。しばらくこうしてお互いを温めあって、起きたら茶々や初、江たちと朝ごはんにしましょう。それから殿が十兵衛殿のところに行かれる準備をお手伝いいたします。話は…殿がお帰りになってからですね。今日は十兵衛殿のところへお泊まりになられるでしょうし…明日の夜にでも…だから無事に帰ってきてくださいねっ」 


「うん」


 この間も2人はずっと抱き合ったままだ。



 抱き合っているうちにだんだん人肌の温もりも感じられるようになってきて、心地よくなってきた。




 今は、この心地よさに身を任せて、二度寝を楽しみたい。


 起き抜けに考えごとをしていて、ばっちり覚醒していたはずの心身が眠りの淵に落ちていく。


 感じるのは、絶対的な安心感。信長様が子持ちの後妻ばかりを身近におくのも、この安心感ゆえかもしれない。


(思えば、金ヶ崎の戦いから小谷城開城まで神経を擦り切らしそうな状態が続いたからなぁ)


 そんなことを考えながら、2人は仲良く二度寝を楽しんだのだった。


 高杉晋作の詩じゃないが〝三千世界の烏を殺しヌシと朝寝をしていたい〟ちょっと違うか?


 起きたら、まず、朝ご飯。それから十兵衛殿のところへ行く準備をしないと。市殿の話も気になるところだけど。


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