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ルイス・フロイス天道記〜Historia de Japon  作者: アサシン
過労死からの転生
1/77

あなたは豊臣秀吉ですか?〜いいえ違います

この話は歴史逆行ファンタジーですが、ルイスフロイスの〝日本史〟や〝信長公記〟や現代における信長研究の成果なども綿密に調べて書いていく所存です。ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます


 天正20年4月13日(西暦1592年5月24日)



 おれは肥前国松浦郡にある名護屋城の天守に立ち、眼下を眺めていた。


 眼下には15隻の新式大型軍艦。数千隻に及ぶ、大中小の旧式船。


 …こう書くと歴史に詳しい人が読んだならばある人物、ある戦いを思い浮かべるかもしれない。


 ―――豊臣秀吉。

 そして、朝鮮出兵。


 答えは否。断じて否である。


 おれは太閤豊臣秀吉ではない。


 さらに、これから攻め入るのは朝鮮ではないし、その宗主国たる明でもない。敵は、時代を揺るがすもっと大きな存在だ。


 側に控えている者たちは俺の双眸が先を見据えて青く光っているように見えるだろう。髪や髭は茶色く、身につけるは漆黒の宣教師服。


 海風の中、おれは呟く。



「やっとおれの使命を果たす時がきた」と


 そして、これまでの苦難をしみじみと思い返すのだった。



♠️

 令和2年4月中頃


 カタカタカタカタ…。草木も眠る丑三つ時というか…まだ深夜の2時だが、無粋な音がおれの部屋に響き渡っている。今流行りの在宅ワークってやつだ。


 おれはゲーム会社に勤めるプログラマー。在籍歴の長さから、ゲーム開発の班長を任されているものだ。

 今作っているのは、知る人ぞ知る人気ゲーム〝信長の◯◯〟の最新作。



 この仕事では良くあることだが、急な仕様変更やシナリオ追加が納入期日を圧迫しまくっている。


 制作メンバーは過酷な労働を強いられ、ここ一週間ろくに寝ておるまい。1人また、1人と倒れていってる報告を受けているし、シナリオライターに至っては逃亡したらしく消息不明。


 さらに変な新型病原ウイルスが流行って、在宅ワークを強いられているというのが現状である。


 とはいえ、このゲームを待ち望んでいるであろうファンは裏切れない。だから、班長たるこのおれは8日連続の徹夜作業を敢行しているのだ。


 まあ、貫徹という訳ではなく仮眠を毎日3時間程度はとっているがそんなので疲れは取れない。徹夜と一緒だ。



「ふぁーあ」

 


 俺は欠伸と伸びをしながらふと思う。



(戦国時代は超絶ブラック。目指せ立身出世。果たせ下克上!!)

 このゲームのうたい文句である。



「戦国時代は超絶ブラック?ブラックってのは、俺の今の仕事だよ。戦国時代は1発逆転を狙えるいい時代だったんじゃねぇのか?今の世の中、立身出世するのも下克上も容易じゃない。あー、生まれるなら戦国時代に生まれたかった。」


 自分でも何を言ってるかわからない。かなりポンコツな現実逃避だと思う。シナリオライターが逃亡した穴を自信満々に引き継ぐていどには、戦国時代の知識に自信があるが…。



(いかんいかん。何を言ってるんだか?俺は)


 どうも疲れすぎているようだ。



 こういう時は、あれだ。先見の明のある俺の部下たちが残していってくれたもの。


 かの金ヶ崎の戦いにおいて、決死のしんがりを申し出た秀吉にせめてもの手向けとして仲間達がおいていった鉄砲や火薬、弾丸といったもののごときもの…眠気覚しドリンクやそれに類するサプリメントを飲む時だろう。



 徹夜がデフォのこの仕事。部下達がおいていった代物達はパッケージからして毒々しい。サプリメントは結構飲んだけど、ドリンクの方はこれまで飲むのをためらっていた。


 が、仕方ない。


 俺が手に取ったのは、黒地に白で〝激眠◯◯〜限界のその先へ〟と書かれた代物。

  



(限界のその先ってなんだ?)

 そう思いつつ、ふたを開けてグビグビ飲む。


 ゴクッゴクッ。ゴックン。



 最初に来たのはコーヒーの味。


 後から舌がピリッとする。


 そして、コーヒーの味とピリピリ感が喉に絡みつく。


 コーヒー味の飲み物が激しいピリピリ感を舌と喉に与えるという強烈な違和感。



 それら全てが一体となって



(まっずっっ…)




「ウッ」


 トイレへダッシュ。



「ウッエッー」


 吐いた。


「ゲー……ウェッ…ゲー」


 吐いても吐いても吐き気は治らない。むしろ増強している。


(誰だこんなものを俺に渡したやつは…。いや、俺の体調に合わなかっただけか?)


 …そんなことを考えた、刹那―――



「うっっ」

 俺は胸部を刃物で抉られたような鋭い痛みを覚えてうずくまる。



 その痛みは時間を追うごとに収まるどころか酷くなっていき…


 痛みのあまりに意識が遠のいていく。


 …急性カフェイン中毒…からの…心筋梗塞?そんな病名が俺の脳裡を掠める。



(救急車を呼ばないと…)




 だが…だ…めだ。スマホは部屋に置いてきた。…戻れな…い。


 こうして俺は〝限界のその先〟とは死であることを思い知ったのだった。


この話が気になって続きが読みたいという方は是非ともご支援ください。

ブックマークや評価の点数をいただけると大変励みになります。また、ご意見、ご感想もお待ちしております


✴︎ちなみに主人公が心筋梗塞を起こしたのは、ドリンクが不味かったからではありません。いや、まずく感じたのは体がドリンクの成分を受け付けなかったからかもしれませんが…。

主人公は普段から不規則で無茶な生活を続けていて、気づかないうちに心疾患を患っていました。その上に、眠気覚しのサプリメントと強いというより毒毒しいレベルの眠気覚しドリンクを重ね飲みしたことにより急性カフェイン中毒を起こしたことが、重篤な心筋梗塞を起こす引き金となった訳です。実際に死亡例がありますので、不規則な生活やカフェインのとりすぎにはご注意下さい。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 入口だけど、面白そうな予感。
[良い点] 冒頭部に訴求力があると思います。 何やら気になりました。 そして〝信長の◯◯〟は皆、一度くらいやったことがあると思います!!
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